【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

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  公開日時 

 著者:ちゃんたく 

インディーゲームの祭典「BitSummit」。日本や世界各地のインディーゲームデベロッパーが集まるイベントとしては日本国内最大級のイベントで、ゲームイベントとしては珍しい京都での開催でしたが、会場には多くのゲームファンが集まりました。

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大手のゲーム会社にはない尖ったゲームタイトルが多数展示されるていましたが、その中でも「ひとりぼっち惑星」など数々のヒット作を生み出している、ところにょり氏の新作ゲーム『おわかれのほし』を、プレイさせていただきましたのでご紹介します!

『おわかれのほし』は、機械の「したかったこと」を叶えて弔う、深いテーマのゲーム

【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

「おわかれのほし」は、”自分を人間だと思い込んでいる機械たち”の村で、ひとり生き残った子供の機械が死んだ村人の身体を借りて、ひとりひとりを弔い、きちんとおわかれをしていく、という趣旨のゲームです。

ところにょりさんの真骨頂である、終末感あふれる退廃的、虚無的な世界観は健在。シリーズ当初から継承されているこの唯一無二の雰囲気は、多くの人を魅了し続けています。

【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

「おわかれのほし」では、主人公は死んでしまった機械の遺体を借り、弔っていくことになります。

【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

死んでしまった彼らはそれぞれ、「明日したかったこと」があります。残った記憶を手掛かりにして、彼らの代わりに「したかったこと」を叶えてあげることで、彼らを「弔う」ことになります。

【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

したかった事を叶えて弔ってあげると、死んでしまった人のさらに深い記憶をたどることが出来ます。

彼らは何故それをしたかったのか。何を思っていたのか。どんなことがあったのか。彼らに残った思いや記憶、真相が明かされていきます。

【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

したかったことを叶えて弔ってあげると、彼らと「おわかれ」をすることが可能となります。このサイクルが、このゲームの流れになります。

このゲームでは「人間」ではなく「人間だと思い込んでいる機械」を弔いますが、彼らのやりたかった事、語られる内容は我々でも共感できる、実に”人間的”なものでした。
機械の遺体を自分で操作し、彼らの記憶を辿り、時間をかけて願いを叶えて弔うことで、知らず知らずのうちに感情移入するようになり、「おわかれ」をする時には思わず胸にくるものがありました。

この感情は、ゲームを通してただ「機械とお別れをするだけ」では到底得られないものであり、まさに「亡くなった人間との別れ」のようなものだと感じました。

開発者「ところにょり氏」インタビュー

プレイ後は思わず感傷に浸ってしまい、しばらく回復の時間を要してから、開発者のところにょり氏に「おわかれのほし」について少しお話を伺いました!

Q.「おわかれのほし」ならではの「こだわり」は何でしょうか?

ところにょり氏「今回は”PC向け”としても意識していて、大画面でもグラフィックが映えるようにしています。また、今まではオブジェクトのコマ送りなど、あえて悪い表現をすればごまかしを入れていましたが、今回はアニメーションにも挑戦しました」

Q.「おわかれのほし」の開発で苦労したところは何でしょうか?

ところにょり氏「今まで、例えばアイテム入手⇒進める⇒イベント発生⇒アイテム入手…といった、いわゆる”ゲームの文法”の経験がありませんでした。ある種、こういう意味での”ゲーム”を作っていなかったので、今回はゲームと向き合おうと考えました。難しかったですが、こういった要素を取り入れることにこだわりました」

Q.「おわかれのほし」で、ユーザーにどんなことを感じてほしい、こう思わせたい!という事はありますか?

ところにょり氏「テーマは”弔い”です。人それぞれ、大切な人が死んでしまった時に、こうやって弔ってあげたいとか、こうやって弔ってあげたかったとかがあるはずです。そういう事を考えたり、思い出していただければと思います」

ところにょり氏「人が死んだ時に、弔わない人はいません。だけど効率的、合理的な事を考えるなら、死んだ生き物にわざわざ何かしようとは思わないはずなんです。なのに人は、死んだ人間を弔います。何故そうするのか自分自身でも分からなかったので、そういったことを自分も理解したいと思いました」

まとめ

【レポート】ところにょり氏の最新作『おわかれのほし』を体験!テーマは「人は何故”弔う”のか」【BitSummit Volume 6】

「おわかれのほし」は、大画面でプレイしてみると、確かに非常に手の込んだドット絵で制作されており、世界観に大きな説得力を持たせるように非常に美しく繊細に描かれています。このドット絵だけでも、相当のこだわりと労力が注ぎ込まれているなと感じました。
もちろんグラフィック以外にも、音楽やSEなども高クオリティで、独創的な世界観に鮮やかな色付けをしています。

今作のテーマの「弔い」について、「弔い」という文化や概念は、最近の研究では人間以外の動物にも見られる可能性があるとされています。しかし、例えば花を捧げる、墓石を建てる、故人の写真を飾るなど、「弔い」にかける想いは、人間が一番顕著に表れていることは間違いありません。それは最近になっての話ではなく、古来から行われてきたものです。

子供の頃、お葬式に参列して「なんでこういう事をしているのだろう?」と、漠然と考えたことがある人は多いと思います。
「人は何故弔うのか」ということを改めて考えてみるのもいいかもしれません。

著者:ちゃんたく
eスポーツシーンを追い続けるゲームライターで、今は「ストリートファイター」界隈に夢中。生粋のラブライバーで、推しは星空凛、津島善子。
著者のTwitter著者のPIXIV