【イベントレポート】インディゲームが熱い!中国上海のゲームイベント「WEPLAY GAME EXPO 2017」

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著者:小野 憲史

中国でインディゲームが急成長!

「中華ゲーム」でパッと思いつくものって、ありますか?
最近では『アズールレーン』を筆頭に、中国産のスマホゲームが続々と日本に上陸中です。

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30代以上のゲーマーであれば、PCのMMORPGを連想する人もいるかもしれませんね。

そんなふうに、ちょっと前まで中国ゲーム業界といえば、「PCオンラインゲーム」と「アイテム課金形式のスマホゲーム」が中心でした。

2015年の中国ゲーム市場は2兆5440億円で、その内PCゲームが1兆5600億円、スマホゲームが8250億円というのがその内訳。

参考記事
中国のゲーム業界の市場規模と内訳

しかしここ1~2年で急速に成長してきたジャンルがあります。
それが少人数・小資本で開発されるインディゲーム!

10月28日・29日に上海で開催されたゲームイベント「WEPLAY GAME EXPO 2017」(主催:中国独立遊戯連名/China Indie Game Alliance/CiGA)では、中国国内外から多数のインディゲームが多数出展され、新しいムーブメントを感じさせました。

米・台の講師を招いて行われたインディ向けゲーム開発者会議

まずはWEPLAYに先だって10月27日に開催されたゲーム開発者会議「CiGA Developers Conference」を取材。

驚かされたのは17名の講演者のうち、4割の7名が北米からのゲストだったこと。
インディゲーム先進国・地域にあたる北米の事例を学ぼうという中国側の姿勢が見受けられます。

台湾からの講演者も1名招待されていました。
登壇者は1950年代の台湾を舞台としたホラーアドベンチャーで、世界的なヒットを記録した『返校(Detention)』の開発元、RedCandleGamesのTiff Liu女史。

参考記事
【東京ゲームショウ2017レポート】世界を狙う台湾ゲームの品質!東京ゲームショウに出展した台湾ゲーム5タイトルを紹介
「返校」は「E3」でベストアドベンチャーゲームアワードを受賞し、東京ゲームショウにも出展

講演テーマも「中文ゲームの英語ローカライズ事例」で、自分たちのゲームをワールドワイドで発売したいという、主催者側の意欲が感じられました。

もっとも参加者は約300名と、開発者会議としてはこじんまりとしたもの。
にもかかわらず会場は熱気に溢れており、参加者の平均年齢が低いこともあって、インディゲームの大きな可能性を感じさせる会となりました。

家庭用・PC・さらにはアナログゲームまで!

翌日10月28日にはいよいよWEPLAYが開幕。

会場となったEVER BRIGHT CONVENTION & EXPO CENTERの3Fフロアは、おおよそ幕張メッセの1ホール分といったところ。
そこにイベントステージを中心に、数々のインディゲームブースや、家庭用ゲームやPCゲームの試遊ブース、はたまたアナログゲームの即売会&試遊スペースも設置され、多くの来場者で賑わいました。
位置づけとしては、中国版「PAX」といったところだったでしょうか。

中でも存在感を示していたのが、中国で2015年より正式発売が行われているPS4です。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントのパートナー企業で、PS4タイトルの中国販売を手がけるGamepochブースでは、『NBA2K18』『みんなでスペランカーZ』などのタイトルを試遊展示。

欧米パブリッシャー大手からはUBIがブースを構え、『アサシン クリード』シリーズなどのフィギュアを展示販売。

参考記事
社員数3,000人!世界最大規模のゲーム開発スタジオ・UBIモントリオール訪問記

正式発売前ながら、Nintendo Switchの試遊展示を行うブースもありました。

またこれらのタイトルに混じって大きな存在感を示していたのが、世界各国のインディゲームたち。

日本からも京都で行われるインディゲームの祭典「ビットサミット」や、北米を中心にインディゲームのプロモーション支援を行う「INDIE MEGA BOOTH」、さらにはポーランドから「INDIE GAME POKAND FOUNDATION」といった団体も参加し、来場者の注目を集めていました。

中国国内外から選りすぐりの53タイトルが出展

もっとも、本イベントの隠れた主役とも言えたのは、53タイトルにも及ぶ中国インディゲームの試遊コーナーだったでしょう。

いずれもアワードによって選出された選りすぐりのタイトルで、ゲームデザイン・アート・サウンド・モバイルなど、項目別にゲームを展示。

中国各地の大学などと協力して開催されたゲームジャムの優秀作品や、学生による優秀作品なども展示されていました。

中でも興味深かったのが、米ロサンゼルスで活動中の中国系学生ユニット、Pet Me Gamesによる開発中のタイトル『Whispers From The Strawdog』。

1940年代の日本占領下のアジアを舞台としたアドベンチャーゲームで、プレイヤーは憲兵の若者と囚人の女性を操作しながら、物語を進めていきます。
2人の姿が操り人形になっており、人形劇のようなスタイル点も意味深。
一人だけでなく、二人でも協力して遊べるストーリーゲームです。

タイトルを直訳すると「わらの犬からのささやき」となり、映画『Straw Dogs(わらの犬)』との関連性も気になります。

開発進捗度は20%程度とのことで発売は未定ですが、自分たちの歴史やアイデンティティをゲームで表現しようとする姿勢がうかがえました。

日本人クリエイターのゲスト参加に沸く会場

他に日本人ゲストのサイン会・握手会もありました。

『Bloodstained: Ritual of the Night』を開発中のIGAこと五十嵐孝司氏。
『ニーア オートマタ』などの代表作で知られるヨコオタロウ氏。
『サイレントヒル』シリーズの音楽制作などで知られる山岡晃氏です。

会場には数多くのファンが詰めかけ、人気ぶりを感じさせました。

これまでゲームに限らず、海賊版ソフトの横行で、正規のパッケージゲーム市場が困難だった中国。
PS4・Xbox Oneの発売が解禁された現在においても、ソフトの販売には当局の事前審査が必要で、市場の成長を妨げています。

こうした状況を変化させたのが、Steamによるゲームのダウンロード販売。家庭用ゲームのタイトル供給不足に飢えたユーザーが、Steamに流れたと推察されます。
実際、今や多くのゲーム開発者がSteamを通してゲームを販売し、中国のゲーマーもまた、Steamでゲームを購入して遊ぶことができます。

もっとも、中国でのSteam販売はグレーゾーンで、今後なんらかの規制が中国政府から入る可能性もあります。

しかし仮にそうした事態がおきたとしても、中国企業による何らかのデジタル流通配信サービスが置き換わり、インディゲーム市場自体は成長を続ける……。
そして中国から続々とクオリティの高いインディゲームが登場してくる。

そうした将来像を感じたイベントでした。

著者:小野憲史(オノケンジ)
ゲームジャーナリスト。NPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長。
「ゲーム批評」(マイクロマガジン社)編集長などを経て現職。
ウェブニュース媒体を中心に取材記事などを寄稿しており、E3・GDCなど海外取材も多数経験。「小野憲史のゲーム時評」(まんたんウェブ)などのコラム連載や、教育機関などでの授業・講演もこなす。東京ネットウェイブ非常勤講師。
主な著書・編著に「ゲームクリエイターが知る97のこと(2)」(オライリージャパン)などがある。
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