今年もやってくる中国最大のゲームの祭典「ChinaJoy」の今回の見どころは?
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
筆者にとって、夏といえば中国、上海。
それは毎年7月末から8月上旬にかけてChinaJoyが開催され、参加しているからです。
ChinaJoyは中国最大のゲームの展示会、というのはもうこのサイトで何度も記事にしてきました。私がChinaJoyに参加し始めてからもう10年経ちますが、この10年で日本からの参加もおきく増えました。
コロナ禍を経て、その後の中国ゲーム市場の不況感もありましたが、今尚ChinaJoyは日本のゲーム関係者にとって中後ゲーム市場の今を知る重要な場として存在しています。
中国ゲーム市場の黎明期を牽引したと言って良いChinaJoyですが、市場が成熟するにつれてその立ち位置の模索がここ数年続いているように感じます。
bilibiliやTikTokなどの大手エンターテイメント企業が独自にゲームイベントを開催するようになり、インディーゲーム関連ではWePlayが立ち上がりました。
オンラインの環境も充実し、中国においても今はいろいろな場から情報を入手できる時代になっています。
大手のメーカーや通信キャリア、IT企業が巨大なブースを並べるChinaJoyはその規模感だけでも今なお大きな価値を持っていますが、一昨年からインディーゲームのブースに力を入れるなど価値の多角化を進めています。
そして中国の大きな展示会の中でもグローバルな立ち回りを実施しており、海外のメディアとして私たちも本当に優遇されていると感じます。中国のイベントとして対外的に開かれたChinaJoyは、運営経験の蓄積もあり日本からも安心して参加できるイベントの一つです。
さて、筆者が今回注目しているのは、BtoCエリアではなくBtoBエリアです。
中国のゲーム市場自体は今は非常に厳しく、新たな動きとしてはWeChat GameなどのHTML5ゲーム市場くらいしかありません。HTML5ゲーム市場は一時的に大きな動きを見せていますが、歴史的に見ればこのようなミニゲーム市場の高揚感は短期的なものに終わることが多く、実際に中国のゲーム事業関係者も私と同意見です。
そのような状況の中でBtoBがどのようなトレンドになっているかは非常に興味があります。
TikTokが流行る前、ChinaJoyではスマホの前で踊るコンパニオンさんたちが見られました。
なんだろう?インスタグラムかな?と思ったのですが、その後TikTokが爆発的にヒットし、これか!と思ったことがありました。
このように中国発で何か起こる時、外国人の筆者はChinaJoyでその片鱗を見ることがよくあります。
テンセントやアリババのクラウドサーバー、eスポーツ選手の巨大看板、ブロックチェーンの大量の垂れ幕、など、何かの動きがChinaJoyで見られた時、その少し後に大きなトレンドが来ることがままあります。
インディーにも裾野を広げて、というChinaJoyの運営の言葉がありましたが、筆者としてはインディー以外にも今年は何かあるのではないかと思っています。
例えばAI。
開発速度、という点で中国は侮れません。
AIはゲーム産業とも相性が良く、なんらかの先鋭的なサービスが立ち上がりつつある可能性があります。
もう一つはSNS。現在はRedというinstagramのようなSNSが中国では人気ですが、南米初のKwaiも徐々に人気を獲得しているといいます。このようなSNSはECサービスやHTML5プラットフォームを持つことが多いのですが、このようなSNSの群雄割拠はWeChat Gameの一人勝ちに待ったをかけるかもしれません。
優秀なゲームスタジオを囲い込む動きはどうでしょうか。かつて中国では「ゲームであればなんでも投資がついた」ほどにゲーム産業は加熱していましたが、現状ではゲームに投資がつくのは稀というほどゲーム市場は冷えています。
しかし優秀なゲーム開発者は今なお多く、インディーと呼ばれる小規模なゲーム開発チームは、むしろ淘汰を経て平均的なレベルは上昇しています。世界に打って出れる優秀なタイトルを囲いたい、というパブリッシャーは今なお多く、それをどうするかという動きは今でも見られるのですが、まとまった動きになっていないというのが現状です。
もし、この不況感が払拭された後を見ている投資家がいれば、そろそろ動き出すかもしれません。ChinaJoyの期間中は多くのゲーム関係者が上海に集まります。国内外の投資家にとってChinaJoyは有力な物色の場になるでしょう。パーティーや会合は以前に比べてかなり少なくなりましたが今年はどうでしょうか。パーティーの増加が見られるようであれば数年後に中国市場はアツくなるのかもしれません。
今年はどんなChinaJoyが見られるでしょうか。
今年も上海から生の様子をみなさまにお届けしますので、楽しみにお待ちください。