使えない奴は引退!「ウォーキング・デッド」の公式スマホゲーム「The Walking Dead: No Man’s Land」がシビアだが面白い!
著者:篭谷千穂
今年6月、人気ソンビドラマシリーズ「ウォーキング・デッド(The Walking Dead)」の公式スマートフォン向けゲーム「The Walking Dead: No Man’s Land」が遂に日本でもリリースされました。
実はこのゲーム、フィンランド・ヘルシンキに拠点を置くモバイルゲームディベロッパーのNext Gamesが開発を手掛け、既に2015年にグローバル版をリリースしていたのですが、日本だけ実に3年もの間「おま国(お前の国には売ってやんねーよ!の略。特定の国・地域でのみゲームがリリースされないことを意味する)」されていたんですよね。
ここ数年フィンランドのモバイルゲーム会社が日本市場へのリリースだけを遅らせる、またはしないという傾向が続いています。
数か月遅れならまだ良い方で、本作のように年単位で遅れることがほとんど。やはりアングリーバードが世界で唯一天下を獲れなかった市場ということで「特殊過ぎる」と思われているのでしょうか。
で、「The Walking Dead: No Man’s Land」ですが…
ちゃんとテキストが日本語に翻訳されてる!洋ゲーにありがちな「フォントがダサい」感じもない!
本作はドラマの登場人物達をフィールド上に配置してウォーカー(この作品におけるゾンビのこと)を撃退するターン制のストラテジーRPGです。
ストーリーはもちろん原作ドラマに準拠しており、ストーリーモードにもドラマでおなじみのキャラクターが多数登場、彼らをプレイアブルキャラクターとして使えます。
キャラクターにはそれぞれ特性があり、彼らを訓練してレベルを上げたり、良い武器や防具を装備させて能力を高めたりと育成をしながら、フィールド上で上手く特性を生かしてウォーカーを倒していくという内容。
ストーリーが進むにつれてウォーカーもどんどん強くなり、さらに敵対勢力の人間と戦うステージも登場するようになります。
基本的にバトルは誰がどのウォーカーを攻撃するかを指定してターンごとに攻撃を加えるというスタイルです。最初のうちはシンプルに「前にいる奴に攻撃する」だけでそれなりに進めますが、ステージが進むごとに
なかなか倒れないしぶといデブ
倒れる瞬間に汁をまき散らしてダメージを食らわせる腐れっぷりが激しい奴
元兵士で頑丈な装備を着ている奴
最初から火だるまで攻撃すると引火する奴
など個性豊かなウォーカーが登場し、ちゃんと攻撃を加える順番や味方チーム個々の特性を考え戦術を組み立てなければクリアできなくなります。
こうしてフィールド上にいるウォーカーを全員倒して一人も欠けることなくゴールすればクリア!
バトルが終わったら拠点のキャンプに戻るのですが、これはRPGなので拠点育成の要素もしっかり盛り込まれています。
拠点となるキャンプを整備して様々な施設を建設し、そこから新たな資源を得たり、生存者をトレーニングしたり、武器や防具をアップグレードしたり、収容可能人数を増やしたりします。ここら辺は同じくフィンランド・ヘルシンキに拠点を置くゲームデベロッパー「SUPER SELL」のクラクラやクラロワのノウハウが生かされているとか。
以前フィンランドのモバイルゲーム関係者が
「フィンランドではノウハウを隠したりパクったパクらないでケンカしたりしない。ノウハウは教え合ってみんなで共有する」
と言っていたので、そうしたエコシステムが上手く機能しているのでしょうね。
こうしてストーリーを進める→バトルする→キャンプを整備する…がゲームの一連の流れです。レベルが上がるとキャンプの面積自体を広くすることができ、さらに多くの施設を建設できるようになります。
序盤のバトルの目的は生存者の探索と救出で、チャプターをクリアし終えるごとに新しいキャラクターが増えてキャンプの顔ぶれとストーリーの登場人物が賑やかになっていきます。
キャラクターが増えたら、手が空いている奴をどんどんトレーニング施設にブチ込んでレベルを上げていきます。何気にただウォーカーと戦うだけでなく、育成をしっかりやらないと途中でドン詰まりになるゲームバランスになっており、「ゾンビアポカリプスの中を生き延びる」という原作ドラマの設定に忠実です。そう、戦ってばかりで生産的なことを何もやらないといつか飢え死にしてしまうんですよね…
なお、ガチャもしっかり用意されていますが、貨幣経済が崩壊したゾンビアポカリプスの中で金はどうするのか?と思ったらなんとゲーム内通貨は「無線」。無線機を集めて生存者に呼びかけるという形式で新しいキャラクターをGETするんですね。考えたなー!
ちなみに有料課金で買えるゲーム内通貨は「純金のインゴッド」で、これを使ってゲーム内の便利機能をアンロックしたり、各種アイテムを購入することができます。貨幣経済が崩壊したら価値のあるものは「金」そのものになるというのもリアルな設定です。
ところで、このガチャシステムとキャンプ収容可能人数についてちょっと気になることがあります。
ステージを進めたりガチャを回したりすることでどんどん手持ちのキャラクターが増えていくのはいいのですが、それを続けると、いつかキャンプ収容可能人数の枠がいっぱいになり、かつ「今いるキャラクターよりもレアなキャラクターが出現する」という現象が発生します。
当然星2つは星1つよりも攻撃力と体力が上だしトレーニングすればもっとレベルが上がります。
…となると、それまでキャンプにいたレア度の低いキャラクターをどうにかしてレア度の高いキャラクターが入れる枠を増やさなければなりません。本作でのそれは…
リタイア(引退)
一体何をリタイアするのでしょうか?人間を?それとも人生を?そしてリタイアさせた後に入手できる強化アイテムも謎です。もしかして装備を全部剥いで丸腰のままウォーカーがうようよしているキャンプの外に放り出すとか?…
いやいや!そんな残酷なことはしないでしょう!きっと「リタイア」とは「バトルに出撃するのをやめた」という意味で、きっとリタイアしたキャラクターはキャンプの中で畑の世話をしたり武器・防具の整備をしたりなど後方支援的な仕事をしているのでしょう。というかそうあって欲しい。
…と、深読みすると怖い部分もありますが、総じてクオリティが高く、原作ドラマを欠かさずチェックしているファンもまだ未見の人も、双方が楽しめるであろうタイトルです。
それにしても「ウォーキング・デッド」は日本でも人気のドラマなのに、なぜグローバルリリースから3年も経過してのリリースになったのか本当に謎です。もしいつかNext Gamesの中の人に会える機会があったら聞いてみたいです。
公式サイト
https://nextgames.helpshift.com/a/the-walking-dead-no-man-s-land/