インフレゲーム×性格診断 アプリがプレイヤーの精神分析を行うタップ&放置ゲーム「Alter Ego(オルタエゴ)」
著者:篭谷千穂
「Alter Ego」は、画面をタップすることでゲーム内ポイント「ego(エゴ)」を貯め、それを使用しガイドキャラクターの「エス」と会話をしながら様々な精神分析テストを行い、その結果から自分自身を探究するタップ&放置ゲームです。
本作の開発を担当した方は実際に心理学を学んでいたとのことで、各分析テストの結果により、プレイヤーは自分を客観的に見つめ直すことができます。
ゲームのストーリーは、画面をタップしながら進む「心の迷宮」と、ガイドキャラクター「エス」の部屋を行き来することで進行していきます。
ゲーム自体は、画面をタップすることでポイントが貯まり、それで各機能をアップグレードすることで1タップあたりの獲得ポイント数がどんどん増えていき、やがて天文学的な数値へと”インフレ”を起こしていくシンプルなタップ&放置ゲームの形式です。
ゲームを開始すると、まず「心の迷宮」の主である「エゴ王」が語りかけてきて…
「心の迷宮」を進みながら次々と浮かび上がる内省的なセリフをタップしてegoを貯めていきます。
ある程度egoが貯まると、次はそれを使って「本」を購入できるようになります。最初に買えるのは太宰治の「人間失格」。本を購入するとそれ以後のegoの獲得量が増え、さらに「心の迷宮」の中に「恥の多い生涯を送って来ました」など、購入した本の文章も登場するようになります。
こうして本を買ってegoの獲得量をどんどん上げていき、またegoを貯めて新しい本を買い…というのがこのゲームの主な流れです。本を一度買うと、それ以降はアプリを起動していない間も自動的にegoが少しずつ貯まっていきます。これ自体は至って普通のクッキークリッカー系のインフレ放置ゲームの流れですが、本作は「エス」との会話(精神分析テスト)を重ねることによって彼女とのストーリーも進行していきます。
用意されている本は、太宰治の「人間失格」の他に、
「デミアン」(ヘルマン・ヘッセ著)
「山月記」(中島敦著)
「変身」(フランツ・カフカ著)
「狭き門」(アンドレ・ジッド著)
「はつ恋」(イワン・ツルゲーネフ著)
「草木塔」(種田山頭火著)
「坑夫」(夏目漱石著)
など。
一見バラバラなラインナップのように見えて、全て実存主義的なテーマを扱った作品となっています。
「エス」の精神分析テストは多岐にわたり、単なる質問形式の選択式の質問だけでなく、プレイヤーが自由に複数の単語を選択する自由連想形式の診断や、示された絵にストーリーを加えていくイメージ診断など様々なものが用意されており、何度やっても飽きることがありません。
そしてテストを重ねていくごとに、徐々に「エス」と「エゴ王」の関係や「エス」自体の性格も明らかになっていきます。
こうして次々と本を買い集め…
貯めたegoを使って「エス」との会話を重ね、自分の性格の分析を続けます。
ゲーム自体はシンプルなのに、自分の性格の分析と共にストーリーも楽しめ、さらに国内外の文豪の名著も振り返ることができるという、実にてんこ盛りな内容のゲームです。こうしたゲームはどうしても単調になりがちですが、定期的にテストの結果を見ることができるので、達成感とともに自分自身を振り返ることができ、さらに「もっと先に進みたい!」と思わせてくれます。
ちなみにストーリー(精神分析)の第一章は動画広告の視聴で何度もやり直すことができますが、二章以降はやり直しがきかなくなるので、進める最は慎重にして下さい。