「政治的主張」「ルーツ」「アイデンティティ」E3で見つけた奇天烈なインディーゲームたち

 ゲーム関連イベント現地取材 
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6月16日(金)までアメリカのロサンゼルスで開催されていた世界最大級のゲームの祭典「E3」。様々なゲームのブースが出展されましたが、そんな中で異彩を放っていたのがインディーゲームの意欲作が集まる「Indiecade」コーナーです。

「インディーゲーム」とは主に個人や数人の小さな会社が開発したゲームのことで、日本で遊べるアプリゲームの中にもインディーゲームがたくさんあります。そう言われるとちょっと親近感が沸きますよね。

この記事では様々なゲームが集まる「E3」の会場の中でも特にインディーゲームの様子について皆様にお届けします。変わったゲームがたくさん登場しますから必見ですよ!

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インディーじゃないと無理なゲームたち!

日本でも京都で「BitSummit」というイベントが開催されるなど徐々に市民権を得てきたインディーゲーム。しかし、本場アメリカのインディーゲームはひと味もふた味も違います。

こんな最先端のVRゲームと一緒に・・・

こんな巨大なコントローラーによる8ビットスタイルゲーム(しかもモノクロ!)が大まじめに展示されていたりします。
そんな中で「実にインディーらしいゲーム、というかインディーじゃないと絶対無理!」というゲームが展示されていたので、ここからはそんな「インディーじゃないと絶対無理」なゲームたちをあえてご紹介しましょう!

差別イクナイ! 『The Cat In The Hijab』

最初に紹介するのはヒジャブ(イスラム圏で女性が頭に被るベール)を被ったネコが地下鉄で差別的発言を受ける『The Cat in The Hijab』。
2017年にインターネット上で開催された、公権力に対してゲームの力でメッセージを発信するゲームジャム「Resist Jam」で制作されたゲームです。

ゲームシステムは選択肢によるアドベンチャーゲームで、3名のNPCが登場します。自分だけでなくLGBTのネコに対しても暴言が吐かれる点がミソ。

自分だけでなく他人に向けられた差別に対してもどう対応するか。アメリカの今を考えさせられる内容です。

国教の壁、建設反対! 『Borders』

続いてのゲームは不法入国者が主人公のアクションゲーム『BOARDERS』。

プレイヤーは国境警備隊の監視をかいくぐり、幾多の白骨で舗装された砂漠を国境に向かって進んでいきます。
移動するたびに体の水分が減っていく点がミソで、道中にある水アイテムを入手していかなくてはいけません。

本作の最大のポイントは制作者の父親がメキシコからの不法移民だったこと。
つまり、これは息子による父親の追体験装置でもあるのです。トランプ政権下でシャレにならなくなっています

ホラーゲームに戦争の影『返校』

先の2作はアメリカのインディーによるゲームでしたが、本作『返校』は台湾タイトル。

舞台は1960年代の台湾で、少女が学校からの脱出をめざすホラーアドベンチャーです。
戦後、約20年が経過した軍事政権下の台湾で、そこかしこに「先の大戦」とその後の政治的混乱が見え隠れする点がミソ。漢字がバーッと画面上に表示されるだけで怖いという、ホラーゲームの新たな演出を垣間見せています。植民地下で建設された学校が舞台という、日本人だからこそ遊んでみたいゲームになっています。

文化としてのゲームを体験できるE3

こんな風に政治的主張や自分たちのルーツ・アイデンティティを絞りたての生醤油のように出してくるゲームが、AAAゲーム(大型のゲームタイトル)と同じ空間で出展されているのがE3の奥深いところ。それはまたアメリカのゲーム文化の懐の深さだと言えるでしょう。

E3は今年から一般公開され、チケットは3日間通しで250ドル。15000枚のチケットがすぐに完売したと聞きます。来年度も一般公開が行われるかは不明ですが、こうした奇天烈なインディーゲームに出会うために、旅の計画を立てるのも乙かもしれません。

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著者:小野憲史(オノケンジ)
ゲームジャーナリスト。NPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長。
「ゲーム批評」(マイクロマガジン社)編集長などを経て現職。
ウェブニュース媒体を中心に取材記事などを寄稿しており、E3・GDCなど海外取材も多数経験。「小野憲史のゲーム時評」(まんたんウェブ)などのコラム連載や、教育機関などでの授業・講演もこなす。東京ネットウェイブ非常勤講師。
主な著書・編著に「ゲームクリエイターが知る97のこと(2)」(オライリージャパン)などがある。
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