【レポート】「デジゲー博2021」に出展されたインディーゲームの注目作をピックアップして紹介

 イベント取材 
  公開日時 

 著者:シェループ 

11月14日、東京・秋葉原UDXにて同人・インディーゲームオンリーの展示・即売会「デジゲー博2021」が開催されました。

【レポート】「デジゲー博2021」に出展されたインディーゲームの注目作をピックアップして紹介

昨年に引き続き、新型コロナウィルスの感染対策が取られる中での開催となった今年度。出展者数は121組と例年にも増して減り、一般入場証も当日窓口での販売を行わないなど、大きく制限をかけられた形での開催になりましたが、都内の感染者数が減少するなど、状況が落ち着きつつある背景もあって、当日には多くのゲームファンが来場。コロナ前が脳裏を過ぎる盛り上がりを見せていました。

そんな会場内に出展されたゲームの中で、気になったタイトル5本+αをピックアップして紹介します。紹介したタイトルの中には体験版を配信している作品もありますので、機会がありましたらお試しください。

イノウノカルテ

カウンセラーに扮したプレイヤーが、研究施設に収容された子供たちと面談し、彼らの持つ「異能」の詳細をまとめたプロファイルの完成を目指すアドベンチャーゲーム。出展された体験版では「Erica」という名の少女のカウンセリングをプレイできました。

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操作はマウス主体。基本的に部屋の中の本棚に並べられた絵本、机に置かれたクレヨンといった気になるものをクリックして調べ、それに対して子供がどんな反応を見せるかを確かめます。反応を見せた後には選択肢が表示され、そこで適切なものを選べば画面左上に表示されたハートマークの「信頼度」が上昇。逆に不適切な選択肢を選ぶと不信感を持たれてしまいます。信頼度が上昇する度に子供が心を許すようになり、少しずつその性格や趣味を知れるようになっていきます。これを制限時間60分の内に実施し、プロファイルをどこまで埋められるかというのがゲームのキモとなっています。

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なお、60分以内にプロファイルを埋められなければ失敗という訳ではなく、何度も面談を重ねながら埋めていく形となります。逆に失敗の要因はプレイヤーこと主人公が正気を失ってしまうこと。信頼度の下にある脳みそのアイコンが「正気度」を指していて、これが空になってしまうとゲームオーバーになります。正気度は子供の持つ異能を目にした時に減少するとのこと。ゆえに異能が発現しないよう、カウンセリング中には刺激を与えるような選択肢を選んだり、行動を実施しないことも求められてくるようです。

完成版は2022年にiOS、Android、PC向けに配信予定。「unityroom」では本作の体験版(ブラウザ版)も公開されていて、今回出展された「Erica」のカウンセリングがプレイできます。当日、会場に行けなかった方で、このゲームコンセプトと雰囲気に強い関心を抱きましたらぜひチェックしてみてください。

◇「イノウノカルテ」体験版:https://unityroom.com/games/inou_no_karte

スライドパズルで始めるダンジョン攻略

その名が表す通りの「スライドパズル」を題材にした、戦闘特化型のロールプレイングゲーム(RPG)。4×4の全16マスで構成されたフィールド上に置かれたパネルを同じ種類のものと重ね、攻撃、防御、回復などの行動を実行し、敵モンスターを倒しながらダンジョンの階層を登っていきます。

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「スライドパズル」と称していますが、パネル自体は1つずつ動かせません。基本的に上下左右の4方向いずれかにスライドすると、フィールド上のパネル全てがその方向へと一気に動く仕組みになっています。この動かした時に同じ種類のパネルが重なると、それに応じた行動が実行。「ソードパネル」であればモンスターへの攻撃が、「ヒールパネル」であればプレイヤーの体力が回復します。

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また、パネルにはアイコンの下に数値が刻まれており、重ねる度にその数値も増加。高ければ高くなるほど、パネルごとに得られる効果も大きなものになります。逆に言えば、重ねなければ何の行動も取れません。加えてスライドするたび、モンスターの攻撃を予告するアイコンが1つ現象。ゼロになると攻撃されます。さらにフィールド上にも新しいパネルが少しずつ追加されていきます。もし、フィールド上にパネルが溜まってしまい、上下左右に動かせなくなってしまえばゲームオーバー。もちろん、プレイヤーの体力が無くなってしまった場合も同じなので、状況に応じて防御や回復といった行動を取ることも重要です。そんなステータス管理とパズルを並行しながらプレイする形になりますので、結構大変。そして、相応に時間を忘れて熱中してしまう中毒性が際立つ作りになっています。

他にシステム面では強力な一撃を加える「スキル」、パネル効果の強化といったものも搭載。ゲーム本編は階層を登ることに終始する構成で、出展された体験版は50階まで遊べるようになっていました。完成版はそのような制限はなく、無限に遊べてしまう作りになるとのこと。また、プレイヤーキャラクターのクラス(職業)も変えられるようになり、それぞれ異なる戦術を駆使した戦闘も楽しめるようになる模様です。見た目の分かりやすさと取っつきやすさとは裏腹に、結構濃いゲームに化けそうな予感と期待を抱かせる作品。パズルゲーム、RPGのいずれかのジャンルが好きな人ならば注目のタイトルです。

VOXELORER BIRD(ボクセローラーバード)

ボクセルで描かれた鳥のキャラクターが主人公のステージクリア形式のパズルアクションゲーム。会場ではタブレットでタッチ操作で遊ぶバージョンと、マウス操作で遊ぶバージョンの2種類が出展されていました。筆者はタッチ操作で遊ぶバージョンの方をプレイ。

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基本的に障害物であるブロックを押して適切な位置へと動かし、ゴールへと繋がる道を確保しながら進めていきます。ステージ上の移動や、ブロックを押すといった動作は全て画面を直接タッチするだけで完結。具体的にはステージ上にはマス目が描かれていますので、そこを直接タッチすれば、その場へと鳥が自動的に移動してくれます。ブロックを押す時、例として右に動かしたい場合も、鳥を押す方向(この場合は左側)へと移動させて、あとはブロックをタッチするだけ。始めて間もない内に理解できる操作系になっています。

相応にパズルは手応え十分。ステージが進むと滑るブロック、壊れる足場などの仕掛けが登場し、その特徴を踏まえた動かし方と設置が試されてきます。間違った手順で進めると、詰みになってしまうことも。ただし、仮にそのようになっても数手前に戻せる「Undo」の機能が備わっていますので、ステージの最初からやり直す必要はなく、気軽に再チャレンジできる設計です。パズルの進捗がよくない時にも、主人公の鳥が「ちょっと変かも?」といった具合の台詞で語りかけてきたりと、試行錯誤の際の手がかりを伝えてくれる配慮も凝らされています鳥は他にも色々愉快な台詞を喋りますので、その様子を見ているだけでも退屈させません。

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出展された体験版で遊べたのは6つのステージ。それらをクリアした後にはデジゲー博向けの特別ステージが2つ解禁される仕掛けもありましたが、さすがに特別を謳うだけにかなりの難易度。腰を据えて挑むのが必須となりそうな感じでした。完成版にもこのステージが収録されるかは不明ですが、何らかの形で残していただいて、いつの日かリベンジできればと思うこの頃です。
完成版の配信日については未定ですが、年内にはiOS版のオープンテストの開催を予定しているとのこと。詳細及び続報は作者の方のTwitterでも発表されるようですので、興味のある方はチェックしてみてください。

神柄の雫(かみからのしずく)

突如、村に現れた鬼たち。彼らは村の宝を奪い去ってしまう。村一番の妖力を持った主人公の「リン」は、村長の命を受けて鬼に盗まれた宝の奪還に向かう。そんなオープニングと共に始まる謎解き要素のある横スクロールアクションゲーム。
2022年にNintendo Switch、Steamでの発売が予定されています。出展されたブースではゲームの試遊のほか、体験版の販売も行われていました。

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遊べたのは最初のボス戦まで。基本的には主人公でキツネの「リン」を動かし、広いマップを駆け巡ったり、敵との戦闘を行いながらストーリーを進めていきます。売りとしているのは変身システム。主人公のリンは様々な姿に化けるのを得意としていて、キツネから人間へと自身の姿を変えることができます。姿を変えれば、繰り出せるアクションも変化。人間であれば二段ジャンプ、剣による近接攻撃が可能になって、鬼たちと対等に渡り合えるようになります。また、今回の体験版では実装されていませんでしたが、敵である鬼にも姿を変えられる模様。これを活用し、相手を騙した上で進めるイベントも用意されているようです

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また、作中の舞台となるマップは広く、あちこちに個性豊かなキャラクターたちが登場。彼らとの会話をすることで、旅に役立つヒントを得たり、親交を深めるといったこともできるようです。中には交流の仕方次第で、その後のストーリー展開に大きな影響を及ぼすキャラクターもいる模様。そのことから、エンディングも複数用意されていると思われ、ボリューム的にも大きな内容になることが予感されます。

会場で販売されていた体験版の表紙を見る限り、変身できるキャラクターは他にも数人いるようですが、どのような能力を持ち、どんな場面で活躍してくれるのかは不明。最終的な人数も含め、完成版はどれほどの密度とやり応えを持つアクションゲームになるのか、今後の進捗が注目されるタイトルです。

Horizon、OU、新作百合ノベルゲーム(仮)

前述の「神柄の雫」が出展されていた4階には、株式会社room6が開発中の新作「Horizon」、そしてG-MODEとの共同で進めているアドベンチャーゲームの形をした”何か”を謳う新作「OU」のブースが設置されていました。
この内、体験できたのは「Horizon」。
「OU」は試遊版が出展されていなかったため、プレイできませんでしたが、作者の幸田御魚さんによるライブドローイングが実施。水性のボールペンで描かれた背景画の制作模様を見ることができました。ちなみにこの背景画は実際にゲーム本編で使われるもの。筆者がブースを訪れた時には1枚目が完成済みで、2枚目が制作途中の状況でした。

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ゲームが体験できなかったため、「Ou」についてはこれ以上のレポートはありませんが、Nintendo SwitchとSteamで2022年に発売予定。Steamは既にストアページも開設され、ゲームの紹介映像とスクリーンショットの一部を確かめられます。

どのようなゲームなのか、気になる方はご覧ください。Steamのアカウントを持っていましたら、ウィッシュリスト登録もご検討を。

◇「OU」Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1633430/OU/

「Horizon」は大よそのシステムから操作感まで、体験版を通して確かめることができました。ジャンルとしてはロールプレイングゲームとなっていますが、実際の中身は「マインクラフト」や「テラリア」などのゲームに象徴される、いわゆるサンドボックスゲーム。サバイバル要素あり、戦闘あり、素材を集めて装備品類を作るクラフトありと、様々な要素を盛り込んだ内容になっています。

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最大の特色はひとりの人間の一生を体験し、文明と歴史を作り上げていくという壮大なゲーム内目標。プレイヤーはある時、生を受けた人間に扮し、舞台となる世界を探索しながら素材を集め、害を成す敵を倒し、時に食事して栄養を取ったり、さらには睡眠を取りながら体力と生活の基盤を崩さないよう、一日を過ごしていきます。

もし、いずれかが崩れれば主人公の死へと繋がり、それまでの一生とやり遂げたことが総括されて一区切りを迎えます。そして、再び新たな命を宿した主人公が誕生。先人の遺したものを活かしつつ、再び一日を過ごしながら、人生を重ねていくことになります。このような人間ひとりの誕生とその終焉を繰り返していくのが本作の基本。まさに人間の一生というものをダイレクトに味わうスタイルの作りになっています。

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しかも、このような仕組みからゲームオーバーとエンディングの概念もありません。例え主人公が死んでしまっても、それまで舞台となる世界に対して行ったことは残り、次の人間に続きが託される形になります。なので、繰り返すにつれて自然が広がっていた土地に村が出来たり、別の人間が住み着くといったことも。さらにはその人間たちが勝手に争い始め、戦争に突入したりもするようで、まさに文明と歴史が積み重ねられていくことの諸行無常な流れをダイレクトに味わえるようになっています。
あまりにも壮大な作りをしているだけに、開発も相応に大変な模様。しかしながら、2022年にはNintendo Switch向けに出すことを予定しているようです。

ひょっとしたら、もの凄い時間泥棒なゲームになるかもしれない可能性を感じさせられる作品。前述で名の上げた著名なサンドボックスゲームが好きな方はもちろん、文明と歴史を作り上げていくコンセプトに惹かれる人なら要注目の新作です。

最後に余談ながら、本作『Horizon』のブース近くには謎の新作ノベルゲームの制作が始まっているとの告知もありました。

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こちらはSteamでPC向けに発売予定とのこと。ストーリーは百合要素の強い作風のものになるようです。開発は始まって間もない段階とのことで、当面は新たな情報もお預けとなりそうですが、どのような作品になるのか、続報とゲーム概略の発表を心待ちにしたいところです。

著者:シェループ
新旧様々なゲームに手を伸ばしては、積みゲーを増やし続けるひよっこライター。アクションゲーム全般(特にロックマンシリーズとメトロイドシリーズ)と戦略シミュレーションが大好物。
Twitter:@shelloop