【Unite 2019レポート】Nintendo Switchのインディーゲーム7タイトルに見る工夫
著者:シェループ
9月25、26日の2日間に渡り、グランドニッコー東京で開催されたゲーム開発エンジン「Unity」のカンファレンスイベント「Unite Tokyo 2019」。
Uniteには任天堂も参加しており、「Unity for Nintendo Switch」を使用したタイトル、他のプラットフォームからNintendo Switchへ移植する際に工夫を凝らしたタイトルをブースにてプレイできました。
実際に遊ぶことのできたゲーム全7タイトルについて簡単にご紹介します。
※一部、非Unity製タイトルも含まれます。
参考出展7タイトルの簡単な紹介
アニマス
「ダークソウル」のコアプレイヤーが集う開発会社「TENBirds」制作によるダークファンタジーアクションRPG。原作はスマートフォン、タブレット向けアプリ。Nintendo Switch版は合同会社トローゼがパブリッシングを担当。2018年12月6日より配信中。
グーの惑星
ネバネバの生物「グー」を操作し、多彩なミッションに挑んでいく物理アクションパズル。「Tomorrow Corporation(2D Boy)」が制作。元はWiiウェア用タイトルとして任天堂より配信されました(2019年現在販売終了)。
Nintendo Switch版は2017年5月25日より、フライハイワークスから配信中。
ゴロゴア(Gorogoa)
個人開発者ジェイソン・ロバーツ氏制作によるパズルゲーム。手描きのイラストとそこで繰り広げられるアニメーションと共に描かれる、独自のストーリー表現が特徴。2017年12月21日より配信中。
Wargroove
ファンタジー版「ファミコンウォーズ」とも称される戦略シミュレーションゲーム。イギリス・ロンドンに拠点を置くゲーム開発会社「Chucklefish Games」が制作。2019年2月8日より配信中。
Enter the Gungeon(エンター・ザ・ガンジョン)
究極の秘宝「過去を始末する銃」を手に入れるため、ヒーロー達が「ガンジョン」へと挑む、インディーゲームスタジオ「Dodge Roll」のローグライク・アクションシューティングゲーム。2017年12月21日より配信中。
キャプテン スターワン
ヒーロー「キャプテンONE」になって謎の生命体「エネミー」と戦い、宇宙の平和を守るアクション&放置ゲーム。国内のインディーゲーム開発チーム「Marumittu」が制作。Nintendo Switch版は「エスカドラ」が開発。2019年2月7日より配信中。
Slay the Spire
デッキ構築にローグライクの要素を織り交ぜたカードバトルゲーム。2017年11月15日に「Steam」で早期アクセス版配信の後、2019年1月24日に製品版アップデートを遂げた。Nintendo Switch版は2019年6月6日より配信中。
それぞれのタイトルから見る、移植に当たっての工夫
全7タイトルの中でも、特にアピールされていたのが「アニマス」でした。
数ある少人数開発タイトルの中でも特にグラフィック周りのクオリティが高く、それでいてNintendo Switchへの移植に伴ってパワーアップが施された箇所が多数あることが理由とのことです。
ブースにて案内を務められていた任天堂の方によれば、Unityを用いて制作された少人数開発タイトルは、2Dのドット絵を基調とした作品が大半を占めやすく、その中でも「アニマス」は異彩を放っていることから、フォーカスする形になったようです。
また、「アニマス」はスマートフォン、タブレット向けのゲームアプリとして誕生した作品。それをNintendo Switchへの移植によって進化した箇所があるのもアピールした理由の一つになっているとのこと。
具体的にはグラフィック、サウンドの部分で、オリジナル版以上に豪華、且つ派手なものを追求できたようです。
他に操作面でもNintendo Switch特有のHD振動が加わって、重装備の強敵との戦闘時、重みを直接感じ取れるようになったのも見所になっています。
ただ、HD振動は9月20日に発売された新モデル「Nintendo Switch Lite」には非搭載ですので、通常の本体限定のものになります。
しかし、操作感にダイレクトな手応えを付け加えられるのは、他のハードにはないNintendo Switch特有の強みなので、ぜひ注目していただければと話されていました。
「アニマス」以外の6タイトルも、Nintendo Switchで発売することで、どのような特徴を加えられるか、そしてアレンジすればいいのかという一つの回答を示したラインナップになっていました。作品別に紹介しますと、
ゴロゴア(Gorogoa)
タッチスクリーンとコントローラ操作への両サポート。
携帯モードでプレイする際には画面を直接タッチする形で、コントローラ(Joy-con、PROコントローラ)の場合は左スティックとボタンで操作すると言った異なるスタイルを用意し、独自のプレイ感と利便性を表現した一例となります。
グーの惑星
Joy-conのポインティングデバイスを活用した一例です。先の通り、元はWiiウェア用ソフトとして作られたゲームで、Wiiリモコン一本で動かす操作を売りとしていました。そのようなゲームをNintendo Switchへと移植する場合、どのようなアレンジができ、操作感を再現できるのかという一つの実現例にもなっています。
任天堂の方いわく、Wiiは大ヒットしたゲーム機なので、そちらで生まれたリモコンを活かした様々な良作をNintendo Switchで出すに当たっての参考になればと、展望を語られていました。任天堂からも「罪と罰 宇宙の後継者」、「斬撃のREGINLEIV」と言った傑作があるだけに、少し期待してしまいます。
Enter the Gungeon
Joy-con内臓のジャイロセンサーを活用した一例です。本作は「おすそわけプレイ」による二人協力プレイに対応していますが、右スティックで照準を動かして狙いを付ける操作ができなくなってしまいます。それに対し、こちらの取った策がジャイロセンサーへの対応でした。
ゲームによって操作面に制約が課される面もある「おすそわけプレイ」ですが、実装された機能を活用すれば、特徴的な操作スタイルを作り出せる。非常に興味深い活用事例と言えそうです。
キャプテン スターワン
こちらもアニマス、ゴロゴア同様に元はスマートフォン、タブレット向けアプリを原作とするタイトルですが、画面構成が縦になっています。Nintendo Switchに移植するとなれば、横画面へと大きくアレンジしなくてはなりません。
そんな画面構成を丸々変更し、原作とそん色ない快適さとインターフェースの見栄えを実現した一例となっています。また、横へと変更することで、どのような表現が可能になるのか、そう言った部分でも見るべき部分を持った作品になっています。
Slay the Spire
PCタイトルをNintendo Switchへと移植するに当たり、画面構成とインターフェース周りをどう再調整するか……という課題を提示した一例です。
特に携帯モードでカードバトル画面の調整が一つの参考例になっているとのことでした。ただ、基本的にデザインがPC版とほぼ変わりないため、調整としては非常に精微なレベルで行われたものであるようです。
Wargroove
TVモード、携帯モードごとの表示にフォーカスした一例となります。ゲーム本編に携帯モード用のオプションが搭載されており、画面サイズに適した拡大表示で遊ぶことができます。(※TVモード時は遠景表示で固定となります)
Nintendo Switch本体をドッグから着脱する際にも、件のオプションが反映されるようになっています。PCやスマートフォン向けに作られた2Dの戦略シミュレーション、シミュレーションRPGを移植した際に得られるメリットがよく分かります。
ダウンロード専売のシミュレーション系タイトルは他にも複数ありますが、任天堂の方いわく、Nintendo SwitchのTVモードと携帯モード、双方の特徴を最も活かした例とのこと。ちなみにプレイヤーターン開始時にも振動が発生するなど、コントローラ面でもハードの特徴を活かした例になっています。
Nintendo Switch特有の要素をプラスして、より魅力的な作品に
参考出展された7タイトルは、いずれもNintendo Switchというハード特有のアレンジを行い、新たな付加価値を備えたことがよく現れたものばかりでした。
筆者は「Enter the Gungeon」と「Wargroove」の二本を所持しており、プレイ経験もあります。後者の携帯モード対応オプションは確かに見事で、Nintendo Switchの強みを活かした工夫だと初めてプレイした時、感じました。
特に9月20日に発売されて間もない新モデル「Nintendo Switch Lite」を踏まえると、「Wargroove」の行った工夫は今後、発売されるゲームにおいて重要になってくるのかもしれません。
2017年の発売当初より、Unityをサポートしていたことから、同エンジンで制作されたNintendo Switch用ゲームはインディー、メジャーを問わず、かなりの数に及びます。また、近年は一週間の内にリリースされるゲーム……具体的にはダウンロード専売の作品の数が大幅に増え、その中でどのような工夫を施し、存在感を出せるかが大事になりつつあるように見えます。
今後、Nintendo Switchでのゲーム販売を考えているインディーディベロッパー、個人開発者の方々は、今回の展示で遊べた7つのタイトルを参考に、このハードならではの魅力、強みについて考えてみるのも一興かもしれません。
いちユーザーの身としましても、新作の数が大きく増えた中、どれほど個性を出した作品が出てくるようになるのか、期待したいところです。
ちなみに余談ながら、Nintendo Switchのホーム画面でゲームを選択し、「+ボタン」を押すと表示されるオプションメニュー。
ここで「ソフト情報」⇒「知的財産の表記」を確認しますと、そのゲームがUnity製であるか否かを知れます。(※筆者は初耳で、任天堂の方より教えていただきました)意外なタイトルがUnityで作られているという、ちょっとした発見がありますので、興味があればぜひ、お試しあれ。