ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

 ゲームレビュー 
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 著者:シェループ 

ニンテンドー3DS用ダウンロードソフトとして2014年に発売され、個性的なアクションと世界観などで好評を博した「蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト」。2016年には続編「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪(ソウ)」も発売され、2022年には第3作目となる「蒼き雷霆ガンヴォルト鎖環(ギブス)」が予定されている。

そんなガンヴォルトから派生したスピンオフ作品「白き鋼鉄のX(イクス) THE OUT OF GUNVOLT」もまた、2022年の1月に続編「白き鋼鉄のX2」が発売予定だ。ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

前作「白き鋼鉄のX THE OUT OF GUNVOLT」は2019年にNintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PC(Steam)向けに発売。初代「蒼き雷霆ガンヴォルト」にて主人公「ガンヴォルト」の前に敵として立ちはだかり、続く「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」ではプレイヤーキャラクターのひとりに昇格した少年「アキュラ」を主人公に据えた作品である。

このたびの続編発表を機に、改めて前作「白き鋼鉄のX THE OUT OF GUNVOLT」はどんなゲームだったのかの振り返りも兼ねたレビュー記事を(Nintendo Switch版を元に)今更ながら執筆したく思う。

「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」の要素のひとつを独立させたスピンオフ作品

「白き鋼鉄のX THE OUT OF GUNVOLT」はステージクリア方式で進行する横スクロールアクションゲームだ。プレイヤーは主人公のアキュラを操作し、様々なミッション(ステージ)の攻略に挑んでいく。

各ミッションのクリア条件はシンプルに最後に待ち受けるボスを倒すこと。そのために行く手を阻む敵を撃退し、危険な罠を潜り抜けつつ、突き進んでいくのが基本的な遊び方となる。また、ミッションはオープニングなどの一部を除いて、任意で選ぶ形式。このため、好きな順序で攻略していけるようになっている。

プレイヤーが操作するアキュラは、「フォトンレーザー」なる一瞬で敵に着弾する遠距離(ショット)攻撃と、「ブリッツダッシュ」なる高速移動を特色とするキャラクターだ。一連のアクションは「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」の時のアキュラを踏襲していて、遊んだ経験のある人ならばすぐ馴染めるものになっている。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

今回が初めてという人も、基本操作の確認と練習を兼ねたオープニングミッションが用意されているのでご安心を。ただ、自在に動かすには少し慣れが必要。それを物語るのが高速移動アクションの「ブリッツダッシュ」、「ロックオン」に「カゲロウ」といった特徴的なシステムの数々だ。

「ブリッツダッシュ」はLボタンを1回押すと横方向へと高速で移動するというアクション。主に敵の突発的な攻撃、飛び掛かりなどを回避する時に活躍してくれる。

これだけなら回避用のアクションだが、このダッシュ状態で敵に体当たりすると、ぶつかった対象が「ロックオン」される。この状態でショット攻撃を行うと、発射される全ての弾がロックオンされた敵に集中砲火されるようになる。同時に攻撃力も上昇。非ロックオン時よりも大きなダメージを与えられ、素早く倒せるようになるのだ。要は攻撃補助の役割も兼ねているのである。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

また「ブリッツダッシュ」は地上に限らず、空中でも上下7方向へと自在に発動できる。ただし、空中でのダッシュ時には画面左下の「ブリッツ」のゲージを消費。3回までしか発動できない。(※後述する「カスタマイズ」で増やすことが可能)

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

しかし、空中ダッシュの状態で敵に体当たりできれば「ブリッツ」が1回復し、さらに1回ダッシュ可能になる。要は飛びながら連続して敵に体当たりしていけば、ほぼ延々と宙を舞えるのである。少々コツが必要とされれば、慣れればまさに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」を体現する大胆な立ち回りが楽しめる。

さらに「ブリッツ」のゲージが少しでも溜まっている際、敵の攻撃が被弾すると「カゲロウ」が発動。いわゆる緊急回避技で、本来ならダメージを受けるはずの攻撃を完全に無効化させてしまうという驚くべきものである。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

しかも、このゲージはコントロールスティック、もしくは十字キーの下を2回連続で押すと満タンまで一瞬で回復。つまり、該当する操作を連打し続ければ、ほぼ無敵状態。ただし、下を連打し続けるという操作から、その場から動くことはできなくなるデメリットを負う。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

そして、裏を返せばブリッツが空っぽなら普通にダメージを受ける。それに中にはカゲロウが発動せず、ダメージを受ける敵の技も存在するため、どんな状況でも無敵という訳でもない。便利なことは便利だが、時には回避も必要。そんなアクションゲームのキャラクターを動かすことを損ねない工夫も凝らした、ユニークな技に仕上げられている。

このほかにも空中ダッシュ後の落下時に発動する「ホバー」、敵を倒していく度に溜まっていきスコア(得点)として換算される「クードス」、ボスを倒すと得られる「EX(エクス)ウェポン」などの特徴的なシステムがある。いずれも「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」から引き継がれたものである。しかしながら、「ホバー」は発動時間に制限があった「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」と違って本作は無制限であるなど、若干の変更も行われている。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

システム面にも「蒼き雷霆 ガンヴォルト」、「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」に存在した装備品作成、その素材に当たるアイテムの回収、クエストといった要素は撤廃。お金を貯めて、新たな能力の解禁や強化を図る「カスタマイズ」という簡素なシステムに改められている。さらにミッション中にもキャラクターたちのフルボイス会話が挿入される演出「ライブノベル」も廃止。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

ゲーム全体を見れば「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」のアキュラパートを独立させたも同然の本作。だが、中身は本編以上にゲームシステムを大きく整理した作りで、「蒼き雷霆 ガンヴォルト」シリーズよりも(多少癖はあれど)アクションゲームとしての取っつきやすさが増している。言うならば、引き算を実施したスピンオフ作品に仕上がっているのだ。

ゲームシステムの整理により、より純粋さが増したハイスピードアクション

その引き算を行ったことで生まれた魅力は2つ。
ひとつに純粋なアクションゲームとして楽しめること。

アクションゲームなのに何を申すかという感じだが、前述で触れた通りに本編の「蒼き雷霆 ガンヴォルト」にはRPGを彷彿とさせる要素がいくつか実装されていた。それが本作では全て廃止。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

その結果、どうなったか?純粋にアクションゲームだけに集中して遊べるようになったという訳だ。素材を集めなくていいし、そのために一度クリアしたミッションを再訪する必要はない。ひたすらにミッションを攻略し、様々なアクションを駆使して敵を倒し、最後のボスの部屋を目指して突き進む!まさに純粋なアクションゲームに徹しているのである。

これにより、本作のやり込み要素であるスコアアタックはより熱く、極め甲斐のあるものに進化している。要素自体は本編ガンヴォルトから引き継がれたものだが、複雑なボーナス要素が整理されていて、単純にステージを突き進み、敵を倒し、素早くボスを倒してクリアする、ハイスピードアクションを満喫しながら楽しめる作りになっている。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

また、敵を倒すたびに溜まるポイント「クードス」が高スコアのカギを握る点は本編ガンヴォルトと変わりなく、3回被弾(※設定で1回、無限に変更可能)による値のリセットを防ぐため、慎重かつ丁寧に回避する立ち回りを心掛ける緊張感のある展開が楽しめる。いずれも己の腕前が結果を左右する、アクションゲームの真髄を磨き込んだ設計で、ジャンル好きならば心底たまらない極める面白さを満喫できること間違いなしだ。

そして、整理のおかげで「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」の時も健在だったハイスピードアクションがより洗練された。厳密には純粋にその気持ちよさを味わえるようになった。特にそれに貢献しているのがステージ(ミッション)構造の刷新。以前と異なり広く、開放的な地形が増えたため、「ブリッツダッシュ」の縦横無尽に動き回れる楽しさを存分に味わえるようになっている。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

敵や仕掛けの配置もアクションの魅力を活かすため、数を出し過ぎず、かといってアキュラを阻む障害としての役割を損ねずという緻密なバランスでまとめられている。敵については画面内に登場する数も少なく、対処しやすいのも秀逸。おかげで個々の特徴も覚えやすいので、再プレイ時にはその経験と記憶を活かした立ち回りが試せる。そうしてプレイを積み重ねるにつれ、どんどん動きがスタイリッシュになっていくという上達が目に見えて現れるのも面白く、やり込む楽しさを引き立ててくれる。

そこにボスから得られる「EXウェポン」による攻撃も加えれば、大胆な力押しも可能と、工夫次第で難易度を制御できるのも面白い。この「EXウェポン」はボスにも有効で、相性によって致命的な一撃を加えながらの速攻撃破も可能。これに迅速なステージ進行も加われば爽快感もマシマシ。まさに究極と表しても過言ではないハイスピードアクションの姿を目撃することになるだろう。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

こうした2つの魅力により、本作は本編ガンヴォルトとは異なる魅力が詰まった作品にまとまっている。スピンオフ作品なりの”切り離し感”があるのも事実だが、純粋すぎるほどにアクションゲームを描き、楽しませる作りは本作ならでは。素材集めなど、余計な要素は要らないから、ただ純粋にアクションゲームを遊びたい人なら、本作の率直な作りは確実に心に突き刺さるはずだ。

もちろんガンヴォルトシリーズを知る人にも推せるが、人によっては本編以上にお気に召すかもしれない。
実のところ、筆者はそのひとりだったりする。

もしかしたら本編以上にお気に召すかもしれない、やり込み甲斐抜群の良作

難易度も良心的。終盤には若干、操作技術が試される場面もあるが、「カスタマイズ」によるパワーアップの解禁、「カゲロウ」の活用、そしてミスした際にランダムでパワーアップ状態でその場復活を実現させる「電子の歌姫(サイバーディーヴァ)」の救済機能があるため、理不尽さはない。残機の概念もなく、ミス後にも何度もリトライが可能。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

ストーリーもガンヴォルト未経験者でも楽しめる独立した内容。ただ、どちらかというとシリーズの経験があるとより楽しめる。詳細は伏せるが、一番最初の「蒼き雷霆ガンヴォルト」だけでもプレイしておくことはお薦めしておきたい。理由は最後までプレイすれば思い知らされるだろう。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

ちなみにネタバレになってしまうが、重要な情報なのであえて。ガンヴォルトにはエンディング分岐の要素があったが、本作にはない。これもまた、純粋にアクションゲームとして楽しめるという魅力を引き立てている。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

操作性、グラフィック、音楽の完成度も高い。ただ、ボリュームは純粋なアクションゲームに徹した反動で、エンディングに要する時間が短縮(大よそ2~3時間ほど)。

また、画面全体のレイアウトが前方に寄っていて、少し圧迫感がある。Nintendo Switchの携帯モードでは丁度よいのだが、テレビだとその点がより際立つ。できればNintendo SwitchのTVモードプレイ時、PlayStation 4、Xbox One、PC版の3種は大画面を活かしたやや広いレイアウトにしていただきたかったところだ。ゲームプレイに支障が出るほどの難点ではないのがせめてもの救いだが。

他に簡略化の反動で強化パターンが味気なくなったカスタマイズ、個々のパワーアップに必要なお金の高さ、音量設定機能の非搭載(曲、効果音、ボイス共に調節不可)も惜しい。ライブノベル廃止に伴い、本編ガンヴォルトシリーズでは何かと印象に残りやすかったボスのインパクトが薄れた点も経験者なら賛否が分かれる部分だ。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

ただ、そうしたなりに一部のボスには異様な個性付けが図られている。恐らく”所長”は嫌になるほど印象に残るはずである。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

若干粗もあるが、スピンオフ作品としては盤石の出来で、ガンヴォルトとは一味違う、純粋すぎるアクションゲームに完成されている。スピード感が相応のため、アクションゲームが不慣れな人には薦めにくいが、それ以外の人ならば迷わずチャレンジし、極めて欲しい力作である。来たる続編に備えて今から始めるのも遅くはない。
純粋にアクションゲームを遊んで極め通す面白さと、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」立ち回りを存分に味わってみよう。

ゲームシステムの整理によって、純粋にアクションゲームして楽しめる魅力が底上げされた「白き鋼鉄のX(イクス)」

件の続編も、この1作目の魅力を引き継ぎつつ、ちょっとした裏切りも含めた進化に期待したい。

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著者:シェループ
新旧様々なゲームに手を伸ばしては、積みゲーを増やし続けるひよっこライター。アクションゲーム全般(特にロックマンシリーズとメトロイドシリーズ)と戦略シミュレーションが大好物。
Twitter:@shelloop