ゲーム温故知新!第2回「DUNGEON KEEPER(ダンジョンキーパー)」
著者:東
名作再び!現代風にリニューアルされて新たな楽しみを提供!
プレイヤーは神となり、しもべたちを従えて新天地を切り開いていく・・・今でこそこのようないわゆる天地創造タイプのシミュレーションゲームも珍しくはなくなりました。
この天地創造の要素は、特にファンタジー系の箱庭ゲームでは共通する主要なシステムとして備わっていますが、
そのような「いまでは常識」ともなったゲームシステムのオリジナルが「ポピュラス」というゲームです。
「ポピュラス」は1989年にパソコンゲームとしてリリースされた海外産のタイトル。
そのゲーム性については先にも軽く触れましたように、プレイヤーは神の視点から、人々に対して施設建設や戦闘などさまざまな司令を下して地上の制覇を目指します。
このゲーム性が当時はかなり斬新な面白さとして多くのゲーマーを虜にし、たちまちのうちに世界的な大ヒットを記録。
その画期的なアイディアは今日までいろいろなゲームにおいて息づくこととなったのです。
この「ポピュラス」を開発したのはピーター・モリニューというゲームクリエイター。
最近ではその後継作となるスマホゲーム「Godus」のリリースでも話題を呼びましたので、ピーター・モリニューをご存じの方もいるのではないでしょうか?
「Godus」のゲーム画像
これまでにも数々のユニークなゲームを世に送り出してきたピーター・モリニューですが、今回ここで紹介する「ダンジョンキーパー」もそんな氏が手掛けたタイトルの一つ。
「ダンジョンキーパー」もまた「ポピュラス」と同様にプレイヤーが神の視点からアレコレと指示を下していきます。
このタイプはピーター・モリニュー氏お得意のゲームシステムで、
これまでにも経営者の視点から施設を開発していく「テーマシリーズ」、
壮大な世界を統治するのが目的の「ブラック&ホワイト」、
人々を洗脳していく「Syndicate」、
などなど多くのタイトルをリリースしていますが、その中でもまさしく真骨頂と断言できるのが「ダンジョンキーパー」なのです。
プレイヤーは悪の親玉となり正義そしてライバルの悪を駆逐!
「ダンジョンキーパー」が巷あふれる天地創造ゲームの中でも特別に燦然と輝く大きな魅力を放っているのは、「プレイヤーは悪の親玉として善を叩きのめす」ということにあるでしょう。
ファンタジー系のゲームというと「世界を脅かす悪を倒すために立ち上がる」という勧善懲悪な内容のものが大部分を占めているものが多いのですが、「ダンジョンキーパー」はまるでそれらゲームの右にならえをあざ笑うかのように真逆。
それも単に目新しさ狙いで斜に構えただけではなく、説得力のある世界観の上にどっしりと立脚する「悪の美学」を貫いていることに素晴らしさがあるのです。
例えばゲームシステムの中の一つでこのようなものがあります。
しもべたちは目を離すとすぐにサボりたがりますので管理しなければならないのですが、従来ゲームにもあるように財産を与えることでやる気を奮発する方法だけではなく、
なんと!暴力の力技でもって無理矢理に従わせるというやり方もあるのです。
具体的にはプレイヤーの操作カーソルは手なのですが、これは指示を出すだけではなくビンタをすることもでき、煙草をくゆらせてまったりとサボっているしもべをぶっ叩いて発破をかけることも可能です。
さらには拷問部屋なる施設もあり、これは本来の目的は捕らえた善玉に苦痛を与えて服従させるためのものなのですが、驚くことにはこの拷問部屋にはしもべにも使うことも可能。
その目的はしもべに拷問を仕掛けることで他のしもべにも恐怖心を与えて必死になって働かせるというもの(笑)
筆者はこの事実を知ったときには目からウロコでした。
しかも単に破天荒や奇をてらったというのではなく、「恐怖による支配」という悪の魔王ならではのやり方というちゃんとした(というのも変ですが)理由も伴っているのですから、思わず「なるほど!」と膝を叩いてしまいました。
「ダンジョンキーパー」にはこんな事を皮切りに、実に多くのユニークなゲーム性が備わっており、それまでに体験したことのない「魔王気分を味わえる」という斬新な手応えでもって多くのゲーマーを魅了したのです。
さて前置きが長くなりましたがここからが本題です。
この「ダンジョンキーパー」の正式後継作がスマホ版としてリリースされていますので紹介いたしましょう。
これぞ正式後継作!十数年の時を経て登場!
「ダンジョンキーパー」の続編は長らく噂されては立ち消えということを繰り返して十数年という月日が流れつつも、なぜかこのタイミングでスマホ版としてリリースされました。
それもリリースされたのは2014年です。
憶測ではありますが「ダンジョンキーパー」が発売される運びとなったのは、世界的大ヒットを記録したスマホゲーム「クラッシュオブクラン」の存在は無視することはできないでしょう。
「クラッシュオブクラン」はご存知のように指導者となって富国強兵を目指す戦略ゲームですが、このゲームシステムと「ダンジョンキーパー」はかなり類似性が高いだけに融合したらおもしろくなるのでは?というのは自明の理というもの。
事実スマホ版として登場した「ダンジョンキーパー」は想像通りに「クラクラライク」なシステムを取り込んだ新しいゲームとして生まれ変わったのです。
とはいえやることは元祖「ダンジョンキーパー」と同様に、
しもべたちを従えて堅牢なダンジョンを築き上げつつライバルの敵地に乗り込んで滅ぼしていく、
という内容ですので、往年のファンにとっても違和感なくプレイすることができるはずです。
スマホゲームがもたらす制約もあってか世界観は幾分マイルドなテイストになっているものの、悪として猛威を振るうという楽しさは健在。
一癖も二癖もあるしもべたちを手中に収めながら悪の中の悪を目指してください。
「悪」と「悪事」は違います!ここは間違わないように!
社会を震撼させるような凶悪事件が起きたときに被告人がゲームなどを趣味としていると「ゲームの悪影響」を言及するコメンテーターなどがいますが、そういう視点からすると「ダンジョンキーパー」などはもってのほかということになるでしょう。
しかし「ダンジョンキーパー」の魅力について誤解しないで頂きたいこととしてあるのが「悪と悪事は違う」ということです。
どういうことかといいますと「ダンジョンキーパー」で表現している「悪」とは「悪事」などではなく「悪者としての格好良さ」にあるということです。
マンガや映画などを見ると分かりやすいかもしれませんが、「かっこいい悪者」というものが存在します。
例えば映画「バットマン」のライバルとして登場する「ジョーカー」。
主役の「バットマン」を食いかねないぐらいの個性的なキャラクターから「ジョーカー」を主役に添えたスピンオフ作品が作られるほど、その「悪としての魅力」を感じることができます。
日本においてもそのような例ももちろん珍しくはなく「ハカイダー」「デスラー総統」「ウルトラ怪獣」「ゴジラ」「ジョジョの奇妙な冒険のディオ」「餓狼伝説のギース」「ストリートファイターのベガ」などなど、ダークサイドにありながらも主役もしくは主役レベルの人気を博すキャラクターというのは数多く存在するのです。
これらのキャラクターから「悪」を感じても「悪事」に惹かれる人はほとんどいないのではないでしょうか。
「ダンジョンキーパー」についてもそれと同じで、「悪の美学」を楽しむのが目的であって「悪事」は所詮手段に過ぎません。
「ダンジョンキーパー」を通してそんな「従来のゲームにはない魅力」に触れていただければと思います。