【フィンランドゲーム会社探訪記】おもちゃ箱をひっくり返したようなLudo Craft社のオフィスに潜入!
著者:小野 憲史
フィンランドの中北部にある都市、オウル。今回の旅行では地元のゲーム会社や教育施設も訪問することができました。
まず訪れたのが社員数18名の中堅企業、LUDOCRAFT。
放射冷却で晴天にもかかわらずマイナス20度という厳しい気候の中、寒々とした外見からは想像もできないほど、ゲーム愛にあふれる社風が伝わってきました。
防寒対策でしっかりと施錠された入り口を通ると、そこはゲームとお菓子と玩具に満ちあふれた別世界。
ロビーには大きなテーブルの上に作りかけのジグソーパズルが置かれていました。
みんなで作りながら会議を行ったりするそうです。
手をちょこちょこ動かしていると、良いアイディアが出やすいのだとか。
壁には大量のビンテージゲームコレクション。
アラフォーには懐かしい『ダンジョンズ&ドラゴンズ』『ルーンクエスト』の英語版ルールブックも!
キャンディーとアイスバーは食べ放題。
ただし真冬だったので、アイスバーの在庫は少なめでした。
社員の大半は徒歩または自転車で通勤し、平均通勤時間は20分程度とのこと。
冬期は真面目に凍死しかねないので、オフィス内が充実しているのは合理的ともいえます。
オフィスのいたるところにゲーム機、DVD、ボードゲーム、そしてレゴが飾られています。
土曜日はボードゲーム大会が開催されることも。
もちろん遊んでばかりいるわけではありません。
ちゃんとゲームも開発されています。
ホワイトボードに進捗管理用の付箋が大量にはられているのも、日本と同じです。ただし一人あたりの作業スペースは段違いに広く、この点はうらやましいですね。
そして同社の大きな特徴が、社内にサウンドスタジオが完備されていること。フィンランドでもこの規模でサウンドを内製しているのは珍しいそうです。
趣味でバンドをやっているメンバーもいるとのこと。
ちなみに音楽ジャンルはヘビーメタルでした。
そんな同社を案内してくれたのは、グローバルセールス&ブランドマネージャーのAnne Ryynanenさん(左)と、QAのMartin Köngäs氏(右)。
2006年にオウル大学の卒業生6名が中心になって起業し、PCからモバイルゲーム、そしてデジタルスロットマシンと、さまざまな分野でゲームを開発してきました。
現在はUnityやHTML5での開発に注力しているそうです。
同社の最近のヒットタイトルは『SAAGA』。ヴァイキングがテーマのデジタルスロットマシンです。
日本のパチスロとの違いは、3リールではなくて5リールであること。目押しができないこと。そして現金をかけて遊べることです。
国営公社Veikkaus からの受注開発で、国民的な娯楽となっているデジタルスロットマシン。
「収益の一部が福祉に活用されるため、みな寄付の一種だと思って遊んでいる」と、健全なイメージが保たれている点が印象的でした。
自分も遊んでみましたが、大型液晶ディスプレイでど派手なエフェクトが表示され、文字通りテレビゲームといったところ。
15分で20ユーロが溶けたところで損切りしました。
こちらはオウルミュージアムからの依頼で制作された、ゲーム感覚のインスタレーション『RAKKU』。ゲームはICT産業における工場の組立ラインを操作して、新しい製品を作り上げていくというもの。
中央のパネルを上下左右に動かしながら、3人で協力して遊ぶうちに、自然とオウル市のICT産業について学ぶことができるようになっています。
ミュージアムに足を運びましたが、残念ながら展示が終了しており、遊ぶことが出来ませんでした。
しかし、こういったプロダクトをゲーム会社が手がけている点が興味深いですね。
そして現在開発中のタイトルが、PC向けのリアルタイム・タクティカルシューター『Crimson Squd』。
プレイヤーは3名1組からなる特殊部隊を操作して、建物に立てこもるテロリストを排除していきます。
ゲームは事前プロット方式で、マウスで各々のキャラクターの移動位置と向きを指定した後に、スペースキーで一斉移動。敵を発見すると、自動的に射撃などを行ってくれます。
一方、索敵を怠ると思わぬ方角から攻撃され、仲間を失うことも。
2018年のGDCでデモ出展するため、鋭意開発中とのことでした。
スタジオ見学のハイライトが、社内に作られたサウナ室。多くの企業にサウナ室があり、社内コミュニケーションに一役買っているのだとか。
自分もぜひ再訪して、入ってみたいと思わせるものでした。
ちなみに同社が入っている建物は、もともとお酒の蒸留所だったものを改装したとのこと。
「業態は違っても、クラフトマンシップは同じ」だとするAnnaさんの説明に、深く納得させられました。