遊びではないゲーム「シリアスゲーム」の日本での成長に期待、その課題と将来性
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
シリアスゲームという言葉を聞いたことはありますでしょうか。海外ではアプライドゲームとも呼ばれるこのゲームジャンルは日本ではまだほとんど認知されていません。
シリアスゲームとは、エンターテインメント以外に学習や社会問題の解決などを目的とするゲームを指します。
分かりやすい例を上げると、例えば英単語を覚えるゲームはシリアスゲームということができます。
その他には、例えば車椅子での移動を擬似体験するVRゲームや、痴呆防止のための脳トレ系ゲームなどが上げられます。
シリアスゲーム先進国のオランダには「Mayor Game」という、市長が市政能力を訓練するためのゲームが有りオランダ全国の市長342人が現在も利用しているそうです。
さて、このように、ゲームをエンターテインメント以外にも生かしていこうというのがシリアスゲームですが、日本ではまだまだこれから。様々な可能性を持つシリアスゲームが日本でも大きく育てば、と願ってやみませんが、日本でシリアスゲームを普及させるためには乗り越えなければならない課題がいくつかあります。
1つはゲームに対する社会的な認識です。
日本ではゲームと言うとほぼ100%エンターテインメントに限定されてきました。もちろん海外でもゲームはエンターテインメントがメインですが、日本の場合は例えば「ゲームをすると学校の成績が悪くなる」など、拒絶反応と言ってもよい程の極端な認識がいまだにあります。
これまでもエドテック、ゲーミフィケーションなど、様々な言葉でゲームと学習の融合が図られてきましたが、まだまだ前述のゲームは勉強を阻害するという認識もあり、普及していないというのが現状です。
「日本はゲームも教育も一流なのに何故融合しないのか」と海外から不思議がられるほどにその融合は進んでいません。
更に、シリアスゲーム自体の収益性の問題もあります。
シリアスゲームはエンターテインメントゲームと比べると、収益性が低い傾向があります。先進国のオランダにおいても
「シリアスゲームとエンターテインメントゲームとを比べたときに、ユーザーが主体的にシリアスゲームを選ぶシーンはあまりない」
と、開発者自身が語る通り、事業として成立させるには、どこでどうやって儲けるのかが大きな問題になります。
この問題の解決手法の1つはスポンサー獲得です。現にヨーロッパを始めとした海外のシリアスゲーム開発では、クライアントを獲得して資金を得ることでシリアスゲームの開発を継続している例が見られます。
日本でもこの手法は成り立つように思われます。教育や医療などの会社にクライアントになってもらうことで、シリアスゲームを開発する、というのは成立しそうな気がします。
ただ、そのためには前述の社会的認知が進む必要があります。今はまだ難しいのではないかと思います。そうなるまでには時間がかかるでしょう。それまでの間はエンターテインメントゲームと同じように、シリアスゲームそのものの収益性を上げるのが良いのではないかと筆者は考えますが、いずれにしても不断の努力が求められます。
その他にも、シリアスゲームの開発費が安くないこと、出来上がるゲームの品質問題など課題は山積みです。しかし日本はゲーム開発が得意な国、ゲームが好きな国です。任天堂があり、SNOYがあり、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーを生んだ国です。
歯車が一旦噛み合えば、シリアスゲームが日本で大きく発展する可能性はあると筆者は考えています。
エンターテインメントゲームで培ってきた、プレイヤーを楽しませるノウハウ、ゲームを継続してもらうノウハウ、成長を体感させるノウハウ、ユーザー間でのコミュニケーションを円滑にするノウハウ、それらは学習や社会問題解決のためのシリアスゲームにも応用できるでしょう。
まだ研究室を少し出た段階の日本のシリアスゲームですが、筆者はこれからの発展に大いに期待しています。