アメリカの”マザー・ロード”「ルート66」を駆け抜けろ! スタイリッシュでクラシックなレースゲーム「Great Race」
著者:篭谷千穂
「Great Race」は、「ルート66」を舞台に、道沿いにある各町でクラシックカーに乗りクレイジーなレースを繰り広げるゲームです。
「ルート66」は、かつてはアメリカの大動脈的な重要な道路で、8つの州と300以上の町を通過し”マザーロード”(母なる道)と呼ばれていました。
1960年代のモータリゼーション時代にはアメリカ南西部の経済発展の原動力となり、ファストフードのフランチャイズ展開や、車で来てそのまま泊まれるモーテルといったアメリカの大衆文化が生まれたのもここ。1985年に高速道路が開通し一気に衰退してしまいましたが、古き良きアメリカを愛する人々が今もその景観と歴史を守り、後世に伝えています。近年の話題だと、ピクサー映画「カーズ」の第一作目の舞台にもなりました。
本作は、そんな「ルート66」をモチーフとしており、BGMもカントリー&ブルースで実にアメリカンな雰囲気のゲームです。
アメリカンなゲームですが、しかし開発したのはフィンランドのインディゲームディベロッパーのPart Time Monkey。以前のレビュー記事で『フィンランドのインディーゲームディベロッパーは、「ローポリ、でもそれがスタイリッシュ」というグラフィックの「カーアクション」もののゲームをたくさん開発する傾向にある』と書きましたが、本作もそのパターンなのでした。
スタート地点はもちろんイリノイ州シカゴ。ここから順番に道沿いの町々を巡り、終点のサンタモニカを目指します。
最初に乗れるマシンはこれ。指定の町まで到達して動画広告を視聴することで徐々に新しいマシンが解放されていきます。いずれのマシンも挙動が異なるので、ある程度開放されたらいろいろ乗り換えて自分のプレイに合うものを選択するとよいでしょう。
こちらが基本的なゲーム画面。ローポリゴンでシンプルながら雰囲気の良いグラフィックで、一見牧歌的な世界観のように見えますが、コース上には様々なトラップが仕掛けられているのでのんびりはできません。
最初のうちはジャンプ台で大ジャンプをキメたり、路上に配置されている古タイヤやゴミを避ける程度ですが…
ステージを進むごとに、明らかにクラッシュさせようとする障害物(廃車など)が配置されたりとトラップが増えていきます。あと町を移動するとゲーム内の時間が変化し、それに伴い空の景色も変化するのが美しい!
ゴールが近づくにつれライバル車も増えプレイヤーの行く手を阻んできます。
ライバル車や障害物に衝突するとマシンは黒煙を噴き上げ、走行も安定感を失いますが、大破するまではなんとか走れるので行けるところまで行きます。
ゴールまでもってくれ!
黒煙を噴き上げつつもジャンプ!
なんとかゴール!ゴールまでたどりつくと、その町ごとに異なる良い感じのクリア画像が記録され、各種SNSに投稿・共有することができます。
動画広告を視聴して新たにキャデラックを開放!名前はゴールドのボディにふさわしい「EL DORADO(黄金郷)」です。
ゴールドのキャデラックで星空の下を走るのもなかなか良いものですが、長い車体だと後方が不安定でやたらとケツを振ることが分かりました。見た目はカッコいいんですけどね…
遂に衝突してクラッシュ!さすがにボディとシャーシが分離するくらい壊れるとドライバーも外に投げ出されてゲームオーバーになってしまいます。
その際、なぜか事故った瞬間のスクリーンショットをSNSに共有できる機能も備わっています。ここで動画広告を視聴すれば、ゲームオーバーになった地点からまたリスタートすることが可能。本作は課金要素が全くなく、とにかく動画広告を視聴することでどうにかなるタイトルなんですよね。
次はフォルクスワーゲンのワゴンをGET!実在する名車が次から次へと登場するのでクラシックカーファンも楽しめるタイトルでしょう。
まあどんな名車もゲームを始めたらボコボコになって黒煙を吐くようになりますけどね。
最初のうちは昼間、夕方、夜の3パターンしかなかった背景も、ステージを進んでいくごとに曇り空などバリエーションが増え、町ごとに異なる景色を楽しめるようになります。
すっきりしたグラフィックに古き良き時代のアメリカののどかな地方都市の風景、そして実在する名車たち…シンプルな中に”粋”を感じられるタイトルです。車が好きな人だけでなくアートワークが秀逸な「雰囲気ゲー」が好きな人も楽しめるでしょう。