Unityが規約をアップデート、 Runtime Fee 撤回を反映し騒動に終止符か
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
Unityは2024年10月10日、Unityの規約を更新し、Runtime Fee の撤回を反映させました。
これで2023年9月12日のUnityの値上げ発表に端を発する一連の騒動は、一応の決着を見たことになります。
この規約改定により、Unityのサブスクリプション料金は8%〜25%ほど値上げされましたが、まずまず妥当な線に落ち着いたと思います。
さて、この件の根幹にはそもそもの問題として、Unityの経営不振があるわけですが、この値上げでUnityの経営が安定するかと言われるとかなり難しいのではないかと思います。
Unityはサービスとして、ゲームエンジンの提供と、広告ネットワークサービスを実施しており、収益の柱は後者の広告事業です。しかし、広告事業の競争は熾烈で、Google、Meta、AppLovin、など世界的な大企業が競合として名を連ねています。
Unityはゲームエンジンとして8割近くのシェアを持っており、その優位性を活かして自社の広告をゲームに組み込んでもらうという戦略をとっていますが、モバイル市場からPC、CSへの市場の移行や、競合他社の広告サービスの品質向上もあり、かなり苦戦しています。
品質という面ではGoogle、AppLovinなどに比べるとUnityは少し弱いというのが正直な見解で、ここで苦戦しているのもやむを得ない状況です。
そんな中、圧倒的なシェアを持つゲームエンジンの収益化に目をつけ、ゲームのDL数に応じた額を請求するというRuntime Feeの導入を検討した、というのは自然な流れでしょう。もし実現すれば莫大な売り上げになったと思います。
しかし、あまりにも唐突に、事前説明なく実施しようとしたことがUnityユーザーの反感を買い、結局Runtime Feeの導入は見送ることになりました。
その間、ゲーム開発者界隈では、Unityを信用して良いのか、他のゲームエンジンに移るべきなのではないかという議論が起こり、またUnity社の大規模リストラにより日本支社の主要なメンバーが軒並み退職するなどもあり、少なくとも日本においてUnityのブランドはそれなりに傷ついたと言えます。
今回のRuntime Fee撤回の発表でUnity社は、ゲーム開発の民主化に取り組んできたし今後も取り組んでいく、その一環での今回の決定であることを強調しました。
まさにそこが大事なポイントで、Unityはユーザーコミュニティーによって支えられてきており、そこを軽視してしまったのが今回の事態を招いたのではないかと思います。
Runtime Feeに関しても、手順を踏めば良い落とし所を見つけて導入できた可能性もあるのではと思いますが、いずれにしても今回はサブスクリプションの値上げというところに落ち着きました。
Unityのゲーム業界への貢献度は高く、特に無料でゲーム開発を始められることで誰でも、パソコンとやる気さえあればゲームを世界に出せるようになりました。
Unityはゲーム業界にとって必要な存在ですので、今後は信頼の回復と、よりよいサービスの展開、そして目指すゲーム開発の民主化を実現してほしいですね。