中国ゲーム市場は死んだのか?規制強化に揺れる中国ゲーム市場と13億人のポテンシャル

 ビジネス 
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 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

中国は不景気の真っ只中だ。これにはもう疑う余地がなく、なかなか公式の数字は中国政府から出てきませんが、それでも数字は徐々に弱くなってきています。

筆者の周辺の中国ゲーム関係者も口を揃えて「不景気」だと言います。

中国ゲーム市場に関して言えば、もともと中国でゲームをリリースするには政府が発行する「版号」が原則必要で、そこにリーチするハードルは低くありませんでした。そこにきて、インターネット規制の強化が走り、さらに不景気になり、ということで、中国ゲーム市場はかなり厳しい状況といえます。

中国ゲーム市場は死んだのか?規制強化に揺れる中国ゲーム市場と13億人のポテンシャル

実際に筆者の知っている小規模なゲームスタジオでも閉鎖に追い込まれたところもあり、中国国内だけで売上を上げていたパブリッシャーなども苦戦を強いられています。TikTokを運営するByteDanceもゲーム事業からは異実情撤退してしまいました。

さて、では中国ゲーム市場は終わっているのかといわれると、そうではありません。13億人を擁し、世界2位の経済大国である中国はその全てがいきなり沈下するということはなく、ゲーム市場においてもある程度の成長を見せているジャンルがあります。

1つはNintendo Switch市場です。Tencentが手掛けることで2019年に実現した公式のNintendo Switchの中国販売は、その後順調に売上を拡大し、Switch市場を形成しつつあります。

中国ゲーム市場は死んだのか?規制強化に揺れる中国ゲーム市場と13億人のポテンシャル

中国版のSwitchは、上述の版号というライセンスを取得したゲームのみが遊べるように中国市場に改造されています。そのため遊べるソフトの本数が少なく、中国ゲーマーは香港経由で輸入したり、日本に来てSwitcを買っていくなどしていたようです。
しかし、徐々に中国正規版のSwitchでも遊べるタイトルが増え、本体も普及してきているようです。

もともと中国でゲームを遊ぶのであれば、違法にコピーされた海賊版を買うのが一般的で、そのためゲームの価格は日本と比べて非常に低いのが一般的でした。日本で7千円〜8千円するようなタイトルも、中国ゲーマーの感覚では千円以下ということも珍しくありません。
しかしこれも徐々に改善されており、中国ゲーマーも最近は日本と同じくらいの価格のゲームを購入するようになってきました。
Steamユーザーの増加とあわせて、Swtichユーザーの増加は中国ゲーム市場にとって明るいニュースです。

もう1つ中国で伸びているゲーム市場を紹介しましょう。
それはHTML5ゲーム市場です。
日本や世界ではすでに数年前にトレンドが終わった感のあるHTML5ゲーム市場ですが、中国ではまだまだ伸びています。
TikTokやWeChatの中で手軽に遊べるゲームとして登場した中国式HTML5ゲームですが、独自の発展を遂げ、HTML5ゲームとは思えないほどのリッチなゲームが増えてきました。

中国ゲーム市場は死んだのか?規制強化に揺れる中国ゲーム市場と13億人のポテンシャル

圧倒的なユーザー数を誇るTikTokやWeChat内のゲームは、人気になれば稼働ユーザーが数億人にもなり、莫大な利益を上げるゲームも存在します。
筆者が聞いたところ、1ヶ月に数百億円の純利益、という話も出てきました。その信憑性は分かりませんが、中国HTML5ゲーム市場のポテンシャルが非常に高いことは間違いありません。

このトレンドは一過性のものである可能性も高いのですが、しかし、一部の開発者やパブリッシャーにとってはありがたい市場であることもまた事実です。

一時期の急成長の時期から、さまざまな要因で苦境に立つ中国ゲーム市場ですが、まだまだ活路を残していると感じます。
急激に数を減らした中小規模のゲーム開発スタジオですが、WePlayというインディーゲームイベントが大人気であるように、優良なインディーゲームスタジオはしっかりと生き残っています。

日本からの展開先としてはリスクの大きい中国ゲーム市場ですが、今後の動向次第では良いタイミングがまた来るかもしれません。

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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