2Dパズルアクションゲーム「With My Past 私の過去とともに」【レビュー】
著者:ちゃんたく
今回ご紹介するゲームは、2024年5月7日にSteam向けに発売された2Dパズルアクションゲーム「With My Past 私の過去とともに」です。
本作の主人公は、どこにでもいるごく普通の少女。しかし、少女は過去に「間違った選択」をしてしまい、その後悔をずっと抱えて生きています。
「ナラティブパズルゲーム」と紹介されている通り、ステージを進めていくと、この少女の過去を追体験していくことができます。
本作の特徴は、プレイヤーが操作する少女とは別に、プレイヤーの動きとまったく同じ行動を数秒後に繰り返す「幻影の少女」が存在することです。
プレイヤーが右に行けば幻影の少女が同じようについてきて、ジャンプすれば同じ場所でジャンプもします。
この幻影の少女は、ステージ上のギミックに干渉することがあり、本作の謎解き要素の肝になります。
例えば、自分がスイッチを押すと、幻影の少女も数秒後にスイッチを押します。この時間差を利用することで、本来一人では押せないタイミングでスイッチを押すことができるわけです。
このように、自分の動きを調整しながら幻影の少女を上手く誘導し、ステージを進んでいく事になります。
ここまでであれば、「過去の自分を操る」というギミックを活かしたシンプルなパズルゲームに見えます。
もちろんこの謎解き要素も面白いのですが、特筆したいのは、彼女の心情がゲーム内の演出と上手く連動しており、とても丁寧に表現されているという点です。
時に彼女の心の声が文字として足場になったり、ステージ自体がガラスのように砕け散って暗黒の闇に落ちていったり、「過去と向き合おうとする彼女」の心理描写が、ステージのギミックや演出に見事に組み込まれています。
これらによって、ただパズルゲームをプレイしているだけでも、彼女が抱える過去の後悔がプレイヤーの心にダイレクトに伝わるようになっており、素晴らしい没入感を与えてくれます。
そして、「過去と向き合う」というテーマであるからこそ、プレイヤーと同じ行動を繰り返す幻影の少女に大きな意味が生まれてきます。
幻影の少女は、言い換えれば「過去の少女」とも表現できます。少女が辛い過去と向き合うことで、この幻影の少女は時にプレイヤーに牙を剥く敵にもなるのです。
つまり、数秒後に同じ行動をするというギミックが、一転して少女を常に追いかけてくる恐ろしい存在に変貌するのです。ここからの展開は、ぜひゲームをプレイして体験してみてください。
本作は、「過去とどう向き合えばいいのか」というテーマのもと、少女の声に耳を傾けて、丁寧に過去と向き合っていくゲームです。
メッセージ性の強いゲームであるため、プレイヤーによって本作の解釈は異なるでしょう。まったく感情移入できない人もいるでしょうし、逆に自分自身の過去を少女と重ねる人もいるでしょう。
どの解釈も等しく正しいものであり、その体験はプレイヤー唯一無二のものです。
「With My Past 私の過去とともに」を遊ぶ際は、自分の過去と向き合ってみるのもいいかもしれません。