中国のApp Storeで版号が必須化?実態と影響について解説

 中国 
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 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

中国の各メディアやSNSで、AppStoreでアプリゲームをリリースする際に版号(中国政府が発行するライセンス)が必須になった、と一斉に報じられた。

中国のApp Storeで版号が必須化?実態と影響について解説

https://twitter.com/kakeityan/status/1231982726405738502?s=20

Appleは従来より現地法に準拠することを開発者に求めているが、今回の規定の変更では、特に中国について明確なライセンス名(版号)、ゲームの種類、そして期限が追加されている。

これにより具体的にどのような影響が考えられるのかを簡単に説明したい。ちなみに該当部分は日本語だと、

中国のApp Storeで版号が必須化?実態と影響について解説

「中国の法律では、ゲームに関して、中国の国家新聞出版社広電総局の承認番号を得ることが要求されています。これに従い、中国本土で配信することを意図した有料ゲームまたはApp内課金があるゲームについては、2020年6月30日までにAppleにこの番号を通知してください。ゲームの承認番号及び日付を以下に入力してください」

となる。

AppStoreが中国本土の法律に準拠、中国側のルールの変更ではない

実はこの件は「Appleが中国本土の法律に沿うようにアプリ開発者向けの規約を変更した」というもので、中国の既存の法律が変更になったわけではない。

元々中国本土でアプリゲームをリリースするには「版号」と呼ばれるライセンスが必要だった。
※版号=国家新聞出版社広電総局の承認番号、つまり、中国本土でのゲームを含めた出版物への認可番号のこと

今まではAppStoreの機能上、版号が無くてもリリースしようと思えば実はできていたが、7月以降はAppStoreでもこれが厳密に運用されるようになる、ということである。
従って、有料ゲームまたはApp内課金があるゲームで元々版号を取得しているタイトルはそのままで問題ない。有料ゲームまたはApp内課金があるゲームにも関わらず版号を取得せずにリリースしていたiOSアプリは、版号の取得が必要になる、ということだ。

過去にはApp内課金があるゲームなのに版号無しでリリースされ、中国本土で大きな収益を上げたゲームも実際にある。今までは「運が悪ければ当局に見つかりBANされるかも」という程度のリスクであったが(それでも十分に大きなリスクだが)、今後はそのようなことがAppStoreにおいてはそもそもできないということになりそうだ。

ただ、7月以降も版号無しで有料ゲームまたはApp内課金があるゲームが中国本土でリリースされ続けた場合どうなるのか、版号無しでリリースする機能が存続するのかなくなるのか、などは今のところ不明。

「少なくとも今より緩くなることはなさそうだ」
というのが中国ゲーム関係者大方の見解だ。

無料のiOSアプリゲームはどうなるのか

では無料でダウンロードでき、アプリ内課金もないゲームはどうなるのか。主にカジュアルゲームと呼ばれるジャンルで、広告だけで収益を得るアプリゲームも中国本土で人気を得ている。

これについては今回のAppleの規定変更では言及されておらず、引き続きグレーゾーンと思われる。おそらくは当面版号なしでもリリースできてしまうと予想される。(※iOSの場合であってAndroidはまた話が別)

そもそも中国の法律に照らせば、無料のアプリも本来は版号を含む複数のライセンスがなければ中国本土ではリリースできない。中国パブリッシャーは、無料ダウンロードかつApp内課金が無いアプリゲームについては「テストバージョン」という形を取ることで、版号無しでのリリースを行っていた。これは、本リリースではないテストリリースで、かつ無料で、App内課金がなければ、版号が必要というルールがない、という抜け道を利用したものだ。

今回は対象が「有料ゲームまたはApp内課金があるゲーム」に限られており、つまり「無料でApp内課金が無いゲーム」については、版号無しでリリースする手法が今後も使えるということになる。

ただ、中国の各パブリッシャーは今回のAppleの動きは中国政府の要求を受けたものと解釈しており、「テストバージョン」の抜け道にも近い将来規制が及ぶ可能性が高いと見ている。
既にいくつかの大手中国パブリッシャーは、課金の無いカジュアルゲームについても版号の申請を始めたと言っている。

中国Android市場への影響は?

今回の規定の変更はAppStoreのものであり、従って中国のAndroid市場への直接的な影響は無い。

中国にはGooglePlay Storeが無く、Androidは現地中国企業によるアプリストアが乱立している状況だ。Androidストアは全て現地中国企業運営である。それらのAndroidアプリストアにアプリを掲載するには原則として、「有料ゲームまたはApp内課金があるゲーム」については版号が必須で、その意味ではAppStoreよりも厳密な運用がされていたと言える。

しかし「無料でApp内課金がないゲーム」については「テストバージョン」とすることで版号無しでリリースする手法がAndroidストアでも使えており、今後これは同じく規制がかかる可能性がある。

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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