【レポート】「黒川塾53」水口哲也 エンタテインメントの未来を語る「セガのゲームだけ画面の中から変な色が出ていた」
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
2017年9月14日、「水口哲也 エンタテインメントの未来を語る」と題して、黒川塾53が開催されました。
進行の黒川氏とゲストの水口氏とは、過去に同じセガで仕事をしたことがある関係。思い出話に花が咲きこの会は過去の話で時間切れとなってしまい、「未来を語る」までは行きつきませんでしたが、水口氏の過去の取り組みや様々なエピソードは非常に熱を帯びた興味深いものとなりました。
尚、次こそは未来を語るということで、水口氏登壇のパート2も予定されていますので楽しみに待ちましょう!
ゲームには興味が無かった!セガ入社の秘話
水口氏は学生時代にセガの360度体感ゲーム用筐体『R-360』を見て、
「こんなものを作ってしまう会社が存在するんだ」
「これは俺、行かないと」
と思い、羽田のセガ本社に突撃。
「どうしたら社員になれますか?」
と受付に尋ね、面接を受けるように言われたが、面倒くさいと思い知り合いにセガ関係者を紹介してもらい、
「ゲームじゃないんですよね。2Dのゲームじゃなくて、もうちょっと先にあるやつを作りたいんです。例えばバーチャルリアリティとか」
とプレゼン。
最終的には「まあいいか、お前みたいなヤツが一人くらいいても」という一言でセガに入社。
「セガのゲームだけ画面の中から変な色が出ていた。日本の会社っぽくないような」
と水口氏。
確かに、この感覚は言われてみればよく分かるという方は多いのではないでしょうか。
ゲーム業界は完全なベンチャーだった 全て自分達で何とかする
「ゲーム業界は完全なベンチャーで、当時僕らが20代、一番上が30代前半。20代が支えていた」
と水口氏。
先輩がいない、先生もいない、全て自分たちで何とかする漂流教室みたいな感じで、それが実は良かったそうです。
CGのデザイナーがどこにもおらずデザイナーをアメリカから「拉致ってきた」エピソードや、4台で1億円の機器購入の稟議を通したエピソードなど、在りし日のベンチャーの勢いを感じさせるエピソードが次々に飛び出しました。
更には1千万円の車を大破させた事件、日本のトヨタとイタリアのランチアを説き伏せた奇跡のタイアップ、100億円売り上げれば良いのかと思いセガラリーの開発に着手した話など、ここには書ききれない貴重なエピソードが満載でした。
「カツカツ」「キラーン!」と効果音がしたセガ時代の黒川氏
「水口さんは見た目もカッコイイでしょ?カッコイイのに実現するまで頑張る粘り強さがあって、ずるいんですよ」と黒川氏。
「いや、黒川さんこんなこと言っていますけど、黒川さんだってセガで相当粘り強い人でしたよ。風雲児ですよね、黒川さんは」と水口氏が返し、ここから黒川氏のエピソードに。
セガジャンを着ていたセガの開発の中に、黒川氏がスーツを着て颯爽と現れ、水口氏はこれは凄い人が来たと思ったそう。
黒川氏が様々な新しい潮流をセガにもたらし、
「俺たちはクリエイティブで世界に勝負していくぞ」
というスイッチが入り、社内が元気になったと水口氏は語ります。
地球の裏側で目にした家族
セガラリーを作った後、スペインのショッピングセンターに立ち寄った水口氏。
そこで5歳くらいの現地の子供がセガラリーのハンドルを握っているのを目にします。小さな子供には少し大きなセガラリーの筐体。
「子供の足が届かないから、横からお父さんがアクセルとブレーキを操作して、おじいちゃんがクラッチを操作してて」
「俺はこういうのを全く予期していなかったな、と思いました」
「羽田の狭い事務所で若造が10人くらいで作ったゲームを地球の裏側でこうやって遊んでくれていて、きっとこの家族は夜ご飯を食べながら、今日のゲームは面白かったね、という会話をしているんだと思うと、泣けてきて、この仕事は凄い仕事だと思えた」
そこからゲームを作ることにハマり始めた、と水口氏。
次回水口氏の登壇は11月の予定!
予定時間を大幅にオーバーし、それでも尚話が尽きなかった黒川塾53。ここに全てを書ききれないのが残念です。
エンタテインメントにどのように取り組んできたのか、何を大切にしどのような歴史を持ってどんな人たちがゲームを作ってきたのか、そんな空気を感じる本当に良い会でした。
是非多くの方に水口氏の話を聞いてほしいと思いますが、
「そういえば未来の話をする予定だったのに時間切れで過去の話しかできなかった!」
という事情により急遽水口氏登壇のパート2の開催が決定。
現在2017年11月中の開催で調整中とのことですので、皆様是非ご参加ください。ゲーム業界関係者のみならずゲームファンの方にも間違いなくおすすめの回になります。
SQOOLでは黒川塾についての情報を随時掲載して参ります。
公式の情報については、黒川氏のTwitter・黒川塾Facebookページ等をご覧ください。