eスポーツの行方、日本と中国の違いとこれから
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
eスポーツとは、デジタル(エレクトロニック)ゲームで勝敗を競う競技およびその競技シーンを指す言葉ですが、言葉の認知はしっかり広まったと言っていいでしょう。
ゲームがスポーツ?というところに違和感を感じた方も多く、一時物議を醸しましたが、かくいう筆者も違和感を感じた一人ですが、最近はそこが疑問視されることは少なくなりました。
このように認知も広がり、国際オリンピック委員会(IOC)がオリンピックeスポーツシリーズ(OES)を設立したり、サウジアラビアで2025年に第1回オリンピックeスポーツ大会が開催される、など、eスポーツは国際的な広がりを見せています。
ではeスポーツ界隈が活況かというと少し状況は違うように感じます。
少なくとも日本では、まだまだメジャーな興業とは言えず、サブカルの一つという位置付けでしょう。しかし、関係者や関係団体による継続的な活動により、日本のeスポーツ界隈は小さな成長を継続しています。この状況は筆者は必ずしも悪いとは考えておらず、むしろトレンドに乗っていただけの状況から比べれば、じっくりと成長する土台を作りつつあるのではないかと思います。
一方で、さて、数年前活況を呈していた中国の状況はどうでしょうか。中国の親しい関係者何人かにヒアリングしてみたところ、随分と市場は市縮小し、認知も下がっているようです。
実際にChinaJoyなどの大きなイベントでもeスポーツ関連のブースや展示は減っています。
コロナ前のeスポーツが盛り上がっていた頃は、プロゲーマーは芸能人のような扱いで、数十億円の年収に達するプロゲーマーもいたようです。
テンセントは特にプロゲーマーのPRに力を入れていまして、専門のチームがまさに芸能事務所のようにプロゲーマーのブランディングを行っていました。
プロゲーマーの他にもeスポーツ専門のキャスターをマネジメントする会社が成長していたりと、関連産業は大いに賑わっていました。
しかし、何人かの中国の友人に聞いたところ、最近はeスポーツの人気は徐々に落ちていっているとのことです。これはなぜかと尋ねたところ「勝てなくなってきているから」ということです。
中国人は自国の選手が強いものが好きで、それはeスポーツでもなんでも良く、サッカーでも卓球でも、どんなものでもとにかく自国が勝つのであれば応援するし、そうでなければ関心を失う、ということです。
中国のプロゲーマーが弱くなったかというと実はそうではありません。
以前eスポーツがホットワードだった頃、中国では大富豪が個人の出資でeスポーツのチーム運営会社を立てたり、Twitchのようなストリーミングサービスを立ち上げたりしていました。しかし、eスポーツは興業だけでは十分な収益が得られません。明確なビジネスプランがなければ厳しく、これは中国だけではありませんが、トレンドに乗って立ち上がったさまざまなeスポーツ関連の企業やサービスはやがてその収益化の難しさに気づき次々と運営を終了していきます。
中国も同じで、大富豪が立ち上げた会社やサービスも終了していきました。かつては資金力に物を言わせ、主に韓国の有名選手などを引き抜いてチームに入れ、それで勝っていた中国チームも、資金の引き上げと共に海外選手も引き上げていき、それに伴って勝率が下がり、人気も下がっていっている、というのが現状です。
勝つのが好き、勝つから好き、という中国の国民性に照らせば、eスポーツが真に中国で人気になるのはもう少し先かもしれません。
さて少し戻って日本はどうでしょうか。
日本もかつてはLOL(リーグオブレジェンド)の日本チームの主要選手が韓国人ということもありました。今はさまざまな理由で日本人主体になっていますが、しかし日本のプロゲーマー、eスポーツチームは着実に世界でも実績を積みつつあります。もともとeスポーツという単語だできる前から、ストリートファイターでは競技としての大会があり、その意味で日本の含蓄は浅くありません。
興業的にどうか、収益性としてどうか、という問題は今も大きくあるものの、前述した通りゆっくりとゆっくりと成長しているのが日本のeスポーツ界隈ではないかと思います。
まだ小さなeスポーツの芽ですが、日本も中国も、そして世界中のさまざまな国や地域で、eスポーツの成長には可能せ雨があります。今後を楽しみに成長を見守りたいですね。