【レポート】黒川塾59「eスポーツの展望とゲーム依存症を語る!」今後のJeSU側の登壇にも期待

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著者:岡安 学

今年で6年目を迎える黒川塾。主宰の黒川氏はもちろんのこと、タイムリーなテーマに即したゲストによって、ゲーム業界、エンターテイメント業界に一石を投じてきました。59回目となる今回のテーマは、ゲーム業界で今一番注目されているeスポーツの展望とゲーム依存についてです。

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ゲストは、さまざまな角度から法律やその解釈による現状のeスポーツ大会の危うさを訴えてきた木曽崇氏と、EVO Japanの運営にも関わり投資家としての目線でeスポーツを見据えている山本一郎氏です。

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黒川氏いわく、黒川塾では一方的な意見を展開することはなく、公平性をもって問題提起や解決手段を模索していくとのことです。そのため今回の黒川塾でも、JeSU(日本eスポーツ連合)から、JeSUのスポークスマン的な立場でさまざまな場所でJeSUやJeSUの活動を喧伝している浜村弘一氏に登壇してもらい、それぞれの意見を聞く会としての開催を目指していました。
ただ浜村弘一氏からは、現在はeスポーツのプレイヤーとの対話を重視しているため現状では黒川塾には登壇できないとの回答があり、JeSU側の参加者不在のままの開催となりました。

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テーマその1「eスポーツの展望」について

まず議論の中心となったのは、eスポーツの大会運営や選手のプロ化、風営法の問題でした。

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木曽崇氏は、この件について鍵となるのは「eスポーツ大会に興行性があるか」ということだと言い、次のように説明しました。

JeSUは、選手が大会で賞金を受けることについての景品表示法上の問題について、「選手にプロライセンスを与えて賞金を仕事の報酬とすることで、景品表示法に抵触しなくなる」としていました。
しかし実際には賞金を受け取ること自体には景品表示法上の問題はなく、受け取り側がプロライセンスを持っているかどうかよりもどんな大会であるのかが重要であり、大会に興行性があればプロアマ問わず賞金を得ても問題がないことがわかっています。

木曽氏は更に、JeSUのプロ認定のあり方についても次のように述べています。

以前プロゲーマーのももち選手がウェブ上で発信した内容に、チョコブランカ選手に言及したものがありました。
「チョコブランカ選手は世界ランカーになるほどの腕前は持ち合わせていないが、プロとして活躍しています。女性プレイヤーとして楽しくゲームタイトルをプロモーションする人物は、プロとして認定されないのか」
という問題提起です。
プロにはさまざまな形があり、JeSUのプロ認定は技術認定であるわけで、そこに実際にプロとして活動している人と認定プロライセンスとの間に軋轢が生まれてしまうのかもしれません。

ただ木曽氏は、JeSUが悪いとか解散して欲しいとか言っているわけではない、として次のように続けています。

JeSUはワールドワイドに活動して欲しいと考えています。百度(バイドゥ)や阿里巴巴(アリババ)などの中華系や、サムスン電子の韓国勢などは、世界で遊ばれているeスポーツタイトルがある中、日本には世界で遊べるタイトルがないことは問題だと思っています。
日本ではゲームを遊ぶ環境は、コンシューマ機が中心で、世界とはズレが生じています。PCゲームやモバイルゲームの方が、アフリカなどの地域でも普及しやすいでしょう。

一方で、ゲーム中の表現に関しても世界標準に合わせる必要がある、と山本一郎氏は語ります。
例えば平昌オリンピックの公認eスポーツ大会で採用されたタイトルは、『StarCraft II』などでした。流血シーンや性的な表現があるタイトルはオリンピックタイトルになるのは難しい、と山本氏。

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例えば山本氏は1月に開催されたEVO Japanという格闘ゲーム大会の運営に関わっていました。格闘ゲームというジャンルは必然的に暴力的表現が出てきますし、ゲーム内の女性キャラクターの衣装は必要以上に性的なものもあります。シーンによっては大会のスポンサーである企業が企業ロゴを出すのを嫌う、という現実があるわけです。
特に女性が倒れているところに企業ロゴが出るのはNGとなる場合がある、と山本氏は言います。

更にサッカーゲームの『FIFA』が国際的なeスポーツイベントに採用された場合、JeSUはKONAMIの扱いをどうするのかという問題もあります。『FIFA』は現状ではJリーグの扱いとなっていますが、JeSUがJリーグから取り上げる形になるのか、そもそもそんなことができるのかという問題が浮き上がります。

国内の文脈でゲーム大会を作ってしまうと、海外とのすり合わせが難しくなるので、タイトルを中心として認定をするのではなく、国内リーグや国内興行で固定するのが筋、というのが山本氏の見解。

木曽氏も、国内に常設リーグを作ることで、賞金ベースではなく年間契約で報酬を支払う方が良いと提案しています。
景品表示法や風営法、賭博罪など、eスポーツの賞金獲得については興行性がある大会では問題がないとはいえ、全ての点で問題無しとなったわけではありません。
例えば、賞金を仕事の報酬とするのであれば、1日のトーナメントに出場し優勝して獲得できる賞金額がどこまで認められるのかというのは不透明です。10万円は当然大丈夫だとして、100万円や200万円程度もアリだと考えられます。しかし1,000万円、1億円となると1日で得る報酬として妥当性は分からないというのが現状です。従ってプロ野球のように常設リーグを整え、チームが選手を雇い、賞金はその報酬とするのが現状ではベストではないか、というのが木曽氏の考えです。

また山本氏は、大会運営においても風営法が絡み開催が難しい土壌もあると明かします。
同じ会場で連続3日以上のeスポーツ大会は開催できないので、2dayトーナメントにするか、3日目から会場を別に移す必要があります。そういった面でも常設リーグの方が運営しやすいという訳です。

どの道現行法のまま運営するのは難しいので、現行法を改定する必要は出てきます。法律を完全に変えなくても解釈を変えたり、特区を作ったりすることで対応するのが良いかもしれません。

先述したとおり、賞金については一定の結論が出たわけですが、次に登場するのがeスポーツ施設の問題です。

大阪ではゲームバーが潰れている反面、大手企業がeスポーツ施設事業に参加し始めています。基本的にゲームバーとしての運営は現行法に抵触する可能性があるので、そこをまた突き詰めていかなくてはならないわけです。それでも現在運営しているところもあり、そこが逃げ口上として使っている言い訳が3つあるが、どれも理由としては無理筋で、それで通せるとは思えない、と木曽氏は語っています。

その言い訳とは、「ゲーム機を客から預かっている」「インターネットカフェである」「イベント施設で別の運営がゲームバーを展開している」の3つ。いずれも一見正当な理由として成り立ちそうですが、実際は「ゲーム機を預かっている」「インターネットカフェである」の2つは、店の形態をゲームバーと謳っている以上無理があるわけです。運営と施設の所有を分ける手法は、過去にはクラブ業界の常套手段ではありましたが、それも2010年に摘発を喰らってからは逃げ口上としては無理なものとなっており、ゲームバーであってもそれは同じとのこと。

そういった観点から考えると、JeSUがやるべきは、大会の開催期間の制限やeスポーツ施設運営に関する法整備に関してのロビイング活動なのではないかと木曽氏は指摘しています。ただその活動は収益が出にくいものであるため、協会としては行うのが難しいのではないかと同時に指摘がなされ、これも理解できる話です。
他にも大会開催時にメーカーに払う許諾料や、大会での配信権利や収益の行き先などについても、現状ではメーカーや大会ごとに違っており定まっていないという問題があります。そこをJeSUが旗振りをし擦り合わせをすることで、大会の開催もしやすくなるのではないか、という提言も木曽氏からなされました。

テーマその2「ゲーム依存症について」

前半が盛り上がっていささか時間が押してしまい、後半は駆け足のセッションとなりましたが、ゲームが抱える依存症の問題についてもアツい議論がなされました。

ゲーム依存症を語る上で切り離せないのが、ルートボックス問題。日本で言うところのガチャ問題です。日本だけでなく、世界各国でルートボックスは問題視されており、つい先日、ベルギーでは射幸心を煽ることを理由にルートボックスが禁止となりました。これまでRMT(リアル・マネー・トレード)に関わらなければ規制の範囲外となっていましたが、ベルギーの判例を元に、より厳しくなる可能性があるとのことです。オランダのダッチレギュレーションによるとRMTによるアイテムやIDの売買もできなくなるようで、これによりゲーム内の財産権が認められなくなる可能性もあるわけです。

これらは、単にルートボックスのギャンブル性の問題のようにも見えますが、ゲーム依存症との関係も浅くはないといいます。数々の依存症を提唱してきた久里浜医療センターの樋口氏によると、依存症とは長い間何かに依存する状態のことで、その2割が普通の生活に戻って来られなくなり生活に支障が出るそうです。

【レポート】黒川塾59「eスポーツの展望とゲーム依存症を語る!」今後のJeSU側の登壇にも期待

ゲーム依存症にはガチャを中心としたギャンブル依存と、オンラインゲームの人間関係を発端とする関係性依存の2つがあると木曽氏は語っています。
更に山本氏によると、現在日本にはギャンブル依存が7万人、関係性依存が2万人いると言われており、ギャンブル依存が増えているそうです。
ただこれらのゲーム依存症は、ゲーム特有の問題かと言うとそうではなくて、何かにハマって身を崩す人は何にせよ一定割合出てくるものだとも指摘しています。ハマる人はゲームでなくても、アイドルであったり、パチンコであったり、ハマる対象が変わるだけで、ハマりやすいというわけです。

しかし、そうだといっても依存によって身の破滅を引き起こしてしまう人がいるのも事実である以上、対策は必要なわけです。自浄作用があれば世間からの見方も変わってきますし、それがなければ、ゲームという大きなマスが批判の対象となりかねません。

ネトゲ依存からガチャ依存へと問題が移ってきた日本のゲーム界隈ですが、世界的な流れである過度なギャンブル性の抑制にどう舵をきっていくのかが課題と言えます。

JeSU側の黒川塾への登壇に期待したい

今回は奇しくもJeSU側の登壇者がおらず、ある意味一方通行的な論調となってしまいがちでしたが、結果としてはそれでもできるだけ公平性を保っての議論になっていたのではないでしょうか。JeSUを潰したいわけでも糾弾したいわけでもないのは、話を聞いていてよく分かりました。
黒川塾は怖いところではないので、木曽氏や山本氏とは反対の意見を持っている人は、是非とも参加して、eスポーツ発展のための討論を繰り広げて欲しいところです。

著者:岡安学(オカヤスマナブ)
デジタルライター/Allaboutデジカメガイド
ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランス・ライターに。攻略本の執筆は50冊以上。
現在は、デジタル機器を中心にWebや雑誌、Mookなどで活躍中。アニメ、マンガ、ゲームなどにメディア関係もこなす。近著に『IINGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。