初めての海外ゲームショウChina Joyを通して感じたこと
著者:SQOOL.NET編集部
この記事はSQOOLの加藤とともにChinaJoyに参加した専門学校生に書いてもらった、ChinaJoy体験記です。
人生で初めてのChinaJoyで感じたものが活き活きと書かれていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
今回はじめて中国市場を見て感じたことはまず、広い意味での「中国コンテンツ」の隆盛だ。世界を席巻している有名コンテンツはもちろん中国でも人気だが、それにインスピレーションを受けた類似コンテンツが多く見られた。中にはそれを上手くローカライズして、中国発のゲームであると疑わないほど全く雰囲気の違ったコンテンツになっているものもあった。
それ以外にも、「中国文化」を押し出したゲームが多々見受けられた。このことから、業界全体が自国で作られたエンタメを重視し、今後もそういった傾向が続くのではないかと強く感じた。一昔前は日本を筆頭に海外のIPやコンテンツを受容するにとどまるイメージだったが、昨今では受容したものに中国色を反映させ上書きするか、そもそも頼らずに自国のIPを作り出していくことを目指しているのだろう。
世界的に人気がある日本のIPを中国に輸出しても、必ずしもそれが流行るわけではなくなり、中国市場での成功は一筋縄ではいかなくなったのではないだろうか。
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しかし同時に、日本のIPやコンテンツの人気が未だ根強くあることも実感することができた。中でも比較的古いIPはその人気を不動のものにしていて、多くのファンが常にブースを埋めている印象だった。一定のファンが見込めるというのは海外において非常に重要であり、何をするにも目途が立ちやすい。会場内で見かけるIPはやはり昔からある知名度の高いものが大半だった。
その上で私が驚いたのは、「ちょっと前に流行った」日本IPが少なからず見受けられたことである。七年以上も前に日本でテレビ放映されたコンテンツや、つい最近日本でのサービスが終了したソーシャルゲームが、決して小さくない規模の展示スペースを設けていた。日本と海外の放映がほぼタイムラグなしに行われる現状で、この時間差には違和感を覚え、そこに中国という国の難しさや、まだまだ日本の新規IPが入り込む余地を見出した。
また、ゲームの内容に関わる部分以外での気づきも多々あった。中国市場を語る上で、GoogleやLINEなどの一部コンテンツが利用できない状況は念頭に置かなければならない。しかしながら、ファイアーウォールに代表される諸々の規制が厳しいからと言って、市場が窮屈なものになっている訳ではない。その規制下で諸外国とは全く違ったプラットフォームが発達し、今や中国のゲーム市場は世界一の規模に成長している。
比べて日本の市場はコンシューマーとスマホソーシャルゲームの二強になっており、プラットフォームありきの考え方に囚われていると感じた。どちらのプラットフォームも勢いが伸び悩む今こそ、中国的な開拓精神には学ぶところが多いのではないだろうか。
また、BtoBブースや現地企業とのミーティングを通して感じたことの一つとして、「スピード感の違い」が挙げられる。現地では名刺交換の代わりに、中国で主要なチャットツール「we chat」のIDを交換するのが一般的である。初対面ながら、そこまで踏み込んで話をできる機会が得られるというのには驚いた。しかしゲームというトレンドやテクノロジーに依存する流動性の高いコンテンツを扱う以上、スピード感は重視しなければならないし、段階を踏む形式的なやり方は非効率的だ。
日本でもFacebookやMessengerを利用することは多いが、身内だけでの利用にとどまっている印象で、まだまだ砕けた前衛的なやり方であると認識されているように思う。スピーディーかつ、意思の伝達を図りやすいツールを対外的にも利用していくことは、ぜひとも取り入れていきたい商習慣であると感じた。
以上がChinaJoyのBtoCとBtoBのブースを回って得た、学生の立場だから言える率直な感想である。総括としては、日本と中国、両国の根本にある嗜好や文化的背景にそこまでの差はなく、市場としての親和性は非常に高いのではないかと感じた。ただ先ほども述べた通り、日本のコンテンツを持ち込めば歓迎されるという時代は終わり、中国が世界を席巻していくという強気の方向性はしばらく変わらないと思われる。
中国市場に参入してビジネスチャンスを得るというよりは、大規模な成長・発展から学べるところは学び、IPに頼らない、日本の強みを活かしたゲーム作りに注力していくことが望ましいのではないだろうか。