テキストアドベンチャーゲーム「深夜のラーメン」【レビュー】
著者:ちゃんたく
今回ご紹介するゲームは、2024年7月24日にSteamで発売されたテキストアドベンチャーゲーム「深夜のラーメン」です。
プレイヤーは、深夜のみ営業するラーメン屋の見習いスタッフ「ほむら」として、ラーメン屋に訪れるお客さんの悩みを聞き、交流していきます。
「Coffee Talk」や「VA-11 Hall-A」から着想を得て制作されており、知っている方はそれらのゲームをイメージすると分かりやすいかと思います。
屋台には毎晩、様々なお客さんがやってきます。基本的にはお客さんの話を聞いてストーリーを進行していくテキストベースのゲームですが、その途中で入る注文を捌いていく必要があります。
注文が入ると、いよいよラーメン作りがスタート。お客さんの注文にあわせて、具材をトッピングしたり麵を茹でる時間を調節したりと、操作はシンプルながらも中々本格的です。
ラーメン作りに制限時間はなく、レシピはいつでも確認可能なので、自分のペースでゆっくり作業できます。
慣れてくると、麵を茹でながら他の作業をして効率よく調理したり、レシピを見ないで作れるようになったりして、主人公と同じ視点で少しずつ上達した気分が味わえます。
さて、本作のゲーム性はこのラーメン作りにあるのですが、実は本作を語る上で外せないのは、このゲームが取り扱う「テーマ」です。
先述の通り、ラーメンを作りながらお客さんの悩みを聞いていくのですが、実は彼らが抱えている悩みには「死」や「別れ」といったきわめて重いテーマが多く含まれています。
本作は、とある重大な要素がわりと序盤の方で明かされるのですが、物語性を重視したゲーム性であるためここでは伏せておきます。
なぜ深夜だけの屋台なのか、なぜ主人公は見習いをやっているのか、なぜお客さんはこの店にやってくるのか等、いろんな謎が説明されないまま話が進んでいくため、最初は少し戸惑うかもしれません。
また、お客さんから不思議な会話が飛んできたり、違和感を覚える会話が出てくるかもしれません。それでも、安心してプレイし続けてほしいのです。
彼らは様々な重い悩みを抱えています。しかしプレイヤーが彼らの物語に深く介入することはありません。選択によって、彼らの結末が変わることもありません。
だからこそ、本作はプレイヤーがどのような心持ちで彼らの物語と向き合い、受け止めるかが重要なのです。
お客さんや店主、さらには主人公「ほむら」を含む全ての登場人物たちの決断、物語の結末をぜひその目に焼き付けてください。
このゲームのテーマが理解できた時、彼らのことがたまらなく愛おしくなり、時に胸が締め付けられ、琴線に触れることでしょう。
最後に、本作を遊ぶ上で気を付けなければならない点がひとつ。それは、プレイすると無性にラーメンが食べたくなること。特に深夜に遊ぶ際は十分注意しましょう。