ロック魂を見せつけろ!リズムとアクションが融合したアドベンチャーゲーム「No Straight Roads」
著者:ちゃんたく
「音楽を聴き、リズムに合わせて敵と戦うアクションゲーム」
そう聞いただけでは、どんなゲームか想像するのは少し難しいかもしれません。しかし、思わずそう説明したくなる軽快なゲームが誕生しました。
※2021年12月24日:SQOOL GAME AWARD 2021 WINTERエントリーのため、再掲しています。
今回紹介するのは、リズムゲームの要素と3Dアクションの要素が融合した新作アドベンチャーゲーム「No Straight Roads」です。
物語の舞台は、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)以外の音楽を認めない帝国「NSR」が支配するビニールシティ。
プレイヤーは、2人組インディーズロックバンド「バンク・ベッド・ジャンクション」のメイデイとズークを操作し、この街で廃れてしまったロックを返り咲かせるため、音楽で戦っていくというストーリーです。
魅力的なキャラクター性を持つ2人組「バンク・ベッド・ジャンクション」
まずこのゲームを語る上で外せないのは、プレイヤーが操作することになる2人組ロックバンド「バンク・ベッド・ジャンクション」です。
どんな状況でもポジティブでイケイケなメイデイと、クールに一歩引いてメイデイを支えるズーク。対照的な性格の2人ですが、その相性は抜群です。
強大な敵に真っ向から立ち向かい、街にロックを取り戻すため様々な会場をハイジャック。たった2人で音楽革命を成し遂げようとする彼女たちは率直に格好よく、まさにロックに溢れています。
ストーリーに深みを持たせるには、キャラクターの魅力が必要不可欠です。開幕から主人公たちに好感が持てるので感情移入もしやすく、すぐストーリーに馴染むことができました。
リズムゲームが苦手でも遊べるアクションゲームだが、惜しい点も
「No Straight Roads」では、敵の攻撃技と楽曲が連動しており、楽曲を聴いてリズムと合わせる事で有利に立ち回る事ができます。
例えば、最初の敵となる「DJサブアトミック・スーパーノヴァ」戦。ノヴァは惑星で主人公たちを攻撃してきますが、それもリズムに合わせて攻撃しています。つまり、リズムを見極めれば敵の攻撃を回避しやすくなります。
ただ、プレイしていて少々気になったのは、アクションとリズムのバランスです。
リズムゲームは「リズムに乗れた時の爽快感」が何よりも重要ですが、実はリズムに乗れなくても戦えるので、リズムゲームとしての爽快感はあまりありません。
かといって純粋なアクションゲームとして遊ぶと、こちらと敵の攻撃方法が単調なので、何度もプレイしていると味気なく感じます。
スキルの習得に周回が必要な仕様なので、何度も周回したくなるような面白さや爽快感がもっと欲しかったところです。
ただそれでも戦闘自体は歯ごたえがあり、1人プレイだと初見はかなり苦戦するでしょう。非常に面白いアイデアなのは間違いないので、曲を楽しみながら遊ぶアクションゲームとしては十分楽しめます。
画面、カメラ操作の不便さは明確な課題点
バトルパートではカメラを自由に動かせない箇所が多く、奥行きや距離感が掴みにくいです。そのせいでバトルに集中できず、死角から攻撃されることもあり理不尽さを感じます。
画面関係のストレスは、ゲームの楽しさに大きな悪影響を及ぼします。音楽を聴いて戦うのであれば、「音楽を聴いてる場合じゃない」という状況を生み出してしまうのは残念なポイントです。カメラ操作が出来ないなら、それでも戦いやすい画面設定にしてほしいと感じました。
戦闘演出やデザインの仕上がりが素晴らしいだけに、このような細部でストレスが溜まってしまうのは非常に勿体無かったです。
ハイクオリティな楽曲と気合の入ったローカライズ
音楽をコンセプトにしているゲームであれば、楽曲の水準は重要です。楽曲が良くなければ世界観やストーリーの説得力が途端に失われ、一気に陳腐なものになってしまいます。
しかし、「No Straight Roads」にその心配はいりません。クラシックやラップ、さらには最近流行りのバーチャルアイドルまで専用の楽曲が用意されていますが、どれもハイクオリティで文句の付け所がありません。
さらには楽曲を聴かせる演出も優れており、同じ楽曲でも相手が優勢な時はEDM調、こちらが優勢になるとロック調に変化します。
これはお互いの音楽をぶつけ合う様を見事に表現しており、このゲームが「音楽の戦い」であることに改めて気付かせてくれます。
また、日本向けのローカライズにも力が入っています。日本語のフルボイスはもちろん、メイデイの声は佐倉綾音さん、ズークの声は福山潤さんが担当しており、声優の豪華さに目を見張ります。さらに一部の楽曲ボーカルは日本語verも収録されており、その本気度が伺えます。
「No Straight Roads」は、リズムとアクションの融合を目指した意欲作
総評として、「No Straight Roads」は惜しい点がいろいろとありますが、リズムとアクション両方を楽しめるように作られた良作です。
キャラクター達の面白い掛け合い、作りこまれた世界観、ハイクオリティな楽曲、音楽をリスペクトした演出が随所に垣間見えるので、「大事な部分を丁寧に仕上げたゲーム」であると言えるでしょう。
ローカライズのレベルも高く、「日本でもこのゲームを楽しんでもらいたい」という思いが強く感じられる作品です。やや人を選ぶゲーム性ですが、音楽が好きな方はぜひプレイしてほしい作品となっています。