滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語「World for Two」

 ゲームレビュー 
  公開日時 

 著者:篭谷千穂 

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」「World for Two」は、大洪水によって滅亡してしまった世界で、最後の人間となってしまった老博士と、彼が作ったアンドロイドが協力し生命を復活させようとするシミュレーションゲームです。

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ご覧の通り、細密で美しいドット絵のグラフィックが特徴で、さらにBGM、ストーリー、システム、全てにおいて開発者のこだわりとセンスが光る良作です。

しかも広告もなければ課金要素もない完全無料タイトルとなっているので、それらに邪魔されることなくどっぷりとこの世界観に浸ることができます。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」冒頭、主人公であるアンドロイドが「生命創造装置」から生まれます。博士曰く、「再び生命を興そうと考えたが、一人では難しいのでアンドロイドを作った」とのこと。

生まれたばかりのアンドロイドは博士の言うことに疑問を持つことなく、彼の生命の復活計画を手伝うようになりますが、どうやら博士は隠し事をしている様子。その秘密は一体何なのか?それはゲームを進めることで徐々に明らかになります。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語「World for Two」まずアンドロイドは博士から生命復活のエネルギー源となる「自然エネルギー」を集めてくるよう指示されますが、研究室の外に広がる沼地には、自然エネルギーどころかまともな植物すら見当たりません。あるのは崩れた人工物の名残と立ち枯れた木、有毒物質を吐き出すシダ植物のみ。そんな中、壊れて機能が停止している装置のようなものを見つけました。これは何かのアイテムを加えることで再起動できそうです。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」そこで一旦研究室に戻り、設備を使ってアイテム「星の火」を作りました。これを外の設備にセットすると…

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」やった!壊れた装置が再起動して時間経過により自然エネルギーを生成するようになりました。これをたくさん集めることで、研究室で生命のDNAを作り掛け合わせることができるようになります。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」自然エネルギーが集まったら、それを素材に研究室の「DNA生成装置」で「原始生命体のDNA」を2つ作り、「生命創造装置」で掛け合わせます。すると一番最初の生物「アメーバ」が誕生!いよいよここから生物の本格的な復活が始まります。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」生物を誕生させると自動的にそれぞれの生息エリアに送られるのですが、なぜか水中に住むでもなく地面を歩くでもなく、空中をふよふよと浮いています。まあこれはこれで幻想的で面白いですけどね。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」生物からはさらに固有のDNAを採集できます。その際、DNA配列を組み合わせるちょっとした絵合わせパズル的なミニゲームが用意されていますが、色の組み合わせを覚えれば難しいものではなく、失敗しても特にペナルティはありません。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」これでアメーバ固有のDNAを採取できました!なお、同じ生物の固有DNA同士を掛け合わせると再びその生物が誕生し、固有DNAと研究室の「DNA生成装置」で作ったDNAを掛け合わせると一段階進化した新たな生物が誕生します。こうしたDNAの「組み合わせパターン」を考えるのが本作の醍醐味でしょう。効率的にゲームを進めるなら、メモを取りながらプレイするとよいかもしれません。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」ここで気を付けなければならないのは、生物から固有DNAを採取する場合、3回採取した時点でその生物が死んで消えてしまうこと。そのためDNAの「在庫」も念頭に置きつつ掛け合わせをしなければなりません。

アンドロイドは最初こそ生物の「死」を理解することができませんでしたが、何度も自分の手で生物を死に至らしめているうちに徐々にその意味を理解していき、哲学的な言葉を呟くようになります。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」こうしてアメーバをベースに新しい生物を誕生させつつ…

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語「World for Two」集めた自然エネルギーで研究室の装置自体をアップグレードし、掛け合わせ用のDNAのバリエーションも増やしていきます。DNAの掛け合わせパターンに関するヒントは特にゲーム中では示されませんが、生物の進化は実際の進化の過程をある程度なぞっており、単細胞から多細胞へ、軟体動物から脊椎動物へ、虫、魚類、両生類、爬虫類、ほ乳類、鳥類と徐々に進化していきます。なんかこう、学生時代の理科の授業を思い出してしまいますね。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」生物を一定種類誕生させるごとにアンドロイドの活動範囲も広がり、そのエリアに従いさらに多種多様な生物を誕生させられるようになり、少しずつ世界が賑やかになっていきます。またこの世界には時間経過の概念があり、外に出る度に異なった景色を見せてくれます。特に明け方と夕暮れ時の色合いが美しい!本当に細部にまでこだわりを感じます。

滅びた世界でアンドロイドが生命を紡ぐ物語---「World for Two」多くの生物を誕生させ、博士の役に立つことに喜びすら感じるようになったアンドロイドでしたが、砂丘エリアで閉ざされた扉を開けてしまい、そこで世界が滅亡する直前に何があったのかを知ってしまいます。これは博士と何か繋がりがあるのか?博士の隠し事は何なのか?それは実際にプレイして確かめてみてください。

本作は主人公のアンドロイドを攻撃する敵もいなければ、窮地に陥る危機や制限時間もなく、美しいドット絵と静かなBGMを心行くまで楽しみながら、コツコツとトライ&エラーを繰り返すシミュレーションゲームです。

随所に世界観を表現する仕掛けも施されており、それを発見してあれこれ考察するのも一興でしょう。クリアした時、タイトルの「World for Two」がどんな意味だったのかを考えると、一本の短編映画を観たかのような満足感を感じることができます。

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著者:篭谷千穂
Techブログメディア「vsmedia」を個人運営していたり、英字新聞「The Japan Times」にガジェットとアプリのコラムを書いているライター。
他にも特殊メイクや特殊造型、アクセサリー製作、仮面作家としても活動しています。