【ゲーム系プレスリリースの基礎】ゲームメディアに掲載されるためのポイントを徹底解説!
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
プレスリリースを出したいけど、どういうことを書けば良いのかがわからない。どこに送ればいいのか、費用はかかるのか、効果はあるのかがわからない、という個人や小規模のゲーム開発者さんは多いと思います。
日本のゲーム市場攻略を考えた時、プレスリリースは必須の手法の一つですが、小規模事業者にとってはとっつきにくいのも事実です。
この記事では、プレスリリースを受け取るゲームメディア編集側の立場から、主に小規模なゲーム開発者と、日本市にゲームをリリースする海外パブリッシャーの方々向けに「(日本の)プレスリリースの初歩」を解説いたします。
ゲーム業界関係の方の役に立つ動画を発信しています
色々相談できるディスコードサーバーもあります!
そもそもプレスリリースって何?
そもそもプレスリリースとは何でしょうか?
プレスリリースとは、メディア(=報道機関)に向けて事業者が自身の活動について情報を提供、発表するものです。ニュースリリースとも言います。
メディアは受け取ったプレスリリースの中かから、ニュース性があり、読者または視聴者が興味を持ちそうなものをピックアップして、ウェブメディアであれば主にニュース記事として掲載します。日本のゲーム関連のニュースで重要な掲載先は、ゲーム系のウェブメディアですので、一旦ここに掲載されることを重視しましょう。
プレスリリースはニュース記事になるだけではなく、メディアからの取材に繋がる可能性もあります。
例えばテレビ番組などで、ある会社の変わった福利厚生制度を取材したものなどをたまに目にすると思います。このような取材企画の発端がプレスリリースであることは少なくありません。広告として取材を申し込むには大きな予算が必要ですが、メディアから声をかけて取材してもらう分には通常は無料です。オイシイですよね。
新しいゲームのリリース、バージョンアップ、イベント出展などはもちろん、例えば新入社員歓迎イベントの実施や役員の人事情報などもプレスリリースとして発信できます。中小のゲーム開発事業者でも、例えば法人化や開発拠点の移転などはプレスリリースの対象になります。
SQOOLがかつて発信したプレスリリースには「取締役が引っ越しました」というものもあります。
(株)SQOOL 取締役のフィンランド移住~ユバスキュラ大学にて国際ビジネスと起業家精神を学習~ | 株式会社SQOOL | プレスリリース配信代行サービス『ドリームニュース』
このプレスリリースは非常に好評で、問い合わせも多くいただきました。
このように事業者の活動に関する事実は、かなりの範囲でプレスリリースとして発信できます。ゲーム関連の事業者であれば色々と楽しい活動があるのではないでしょうか。
プレスリリースはマーケティング手法の中では比較的コストパフォーマンスに優れています。個人や中小のインディーゲーム開発者の皆様にも、積極的な利用をオススメします。
ゲームの場合、プレスリリースを打つ最大のチャンスは「リリース時」
プレスリリースはいつ発信すべきでしょうか。それはニュースになるエピソードが発生したときです。
ゲームをPRする最大のチャンスは「新規リリース時」です。ゲームの新規リリースは、そのゲームにとって最初のニュースであり、そして最大のニュースです。大いに活用すべきです。
メディアが記事掲載をする理由の1つは、ニュース性です。ニュース性のある情報はユーザーも知りたいと思いますし、メディアとしても掲載する切り口がたくさんあり掲載がしやすいおいしいネタです。ゲーム開発事業者は、ゲームの新規リリース時には絶対にPR活動をすべきです。プレスリリースを出すのも新規リリース時が最良のタイミングです。
リリース時以外であれば、「バージョンアップ」「ゲーム内イベント実施」「値引きキャンペーン」「ストアにフィーチャーされた!」「イベントに出展する」「何かの賞をとった」などもプレスリリースを打つチャンスです。
プレスリリースを出す方法
では実際にプレスリリースを出すにはどうすれば良いのでしょうか。
方法は大きく2つあります。
1つは、報道機関にメールなどで直接プレスリリースを送る方法と、もう1つはプレスリリース配信サービスを利用する方法です。それぞれ概要をご紹介します。
メディアに直接プレスリリースを送る方法
自分でプレスリリース原稿を用意し、写真素材などを添えてメールなどでメディアに送る方法です。
ウェブのゲームメディアであればメールで連絡を受け付けているところもありますので、そこに向けてメールを送ることになります。
ゲームのプレスリリース掲載申請を受け付けているメディアリスト
雑誌やラジオ、テレビ関連であれば郵便やFAXで受け付けているところもありますが、さすがに最近は減ってきたと思います。とりあえずメールで送れば大丈夫です。
費用がかかりませんので、一旦試してみたい、とか、経費をとにかくかけたくない方におすすめです。インディーの方はここからやってみるのが良いかもしれませんね。
プレスリリース配信サービスを使う方法
一般的にはこちらの方がオススメです。少しお金がかかりますが、プレスリリース配信サービスを利用する方法です。特に海外の事業者の皆様は、日本のメディアに直接伝手がないことが多いと思いますのでこちらの方法が良いと思います。
プレスリリース配信サービスを使用する最大のメリットは、サービス側が連携している様々なメディアに自動的にプレスリリース情報が流れることです。前述の自分でメディアにプレスリリースを送る方法と比べると、1つ1つメールを送らなくても良い分作業負荷が下がります。その上ある程度の掲載が約束されています。
プレスリリース配信サービスはいくつかありますが、その中から おすすめを2つご紹介します。
■PRTIMES
https://prtimes.jp/
大手も使っている非常に優秀なプレスリリース配信プラットフォームです。原則として法人専用です。
1回配信3万円。月額プランなどもあります。
法人化している方は、設立後24か月以内で一定の条件を満たせばこのサービスを月に1回無料で使うことができます。
https://prtimes.jp/startup_free/
対象の方は絶対に使うべきです。
■ドリームニュース
https://www.dreamnews.jp/
SQOOLがメインで使っているプレスリリース配信サービスです。(そう、メディアだって使うのです)
30日1万円でプレスリリース打ち放題という低価格が魅力です。拡散力もまずまずで、サポートもしっかりしています。
30日以内であれば追加料金なしでプレスリリースを何本でも発信することができますので、複数のタイトルのリリースを控えている場合や、リリース後すぐにイベントを実施する場合などに利用すると非常にコスパが良くなります。
原則として法人向けのサービスですが、法人に代理店になってもらうことで個人や任意団体でもプレスリリースを打つことができます。
プレスリリースがメディアに掲載されない?掲載されるための基礎知識
プレスリリースを実際に打ったことのある方の中には、「メディアが全く取り上げてくれなかった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
プレスリリースは毎日大量に発信されています。SQOOLのような中規模メディアでも平日は1日に100を超えるプレスリリースが飛んできます。(注:現在はプレスリリースの受付は停止しています)
大量のプレスリリースの中からメディアに選ばれるにはある程度基礎的なところを押さえておく必要があります。
ここからは、プレスリリースがメディアに取り上げられるための基礎知識について解説します。
ニュースになっているかどうか
プレスリリースの多くはニュースとしてメディアに掲載されます。したがってニュースになっているかどうかはとても大切です。
え、当たり前でしょ?と思う方もいると思いますが、筆者が毎日見るプレスリリースの中にはニュース性が無いものが多くあります。
例えば、
『〜〜というアプリゲームをリリースしています』
というプレスリリースがあったとして、調べてみると新規のリリースではなかった、ということがあります。ただ「こういうゲームがあります」というのはニュースではありません。
ニュースというのは「いつ」「だれが」「何をした(する)」という基本的な要素が必要です。とくに「いつ」は抜けがちです。日付のないニュースってありませんよね?
『株式会社〜〜は、X月X日、アプリゲーム〜〜〜をリリースしました』
『株式会社〜〜は、X月X日、アプリゲーム〜〜〜を今夏にリリースすることを本日X月X日に発表しました』
などとなっているべきです。
正しい情報を正しい日本語で
情報が正しい、というのはプレスリリースにとって絶対に必要なことです。日付、会社名、事業者名、その他内容に誤りがないかをよく確認しましょう。稀に明らかに誤りがあったり記述が矛盾するプレスリリースを受け取ることがありますが、当然そのようなものは掲載されません。
日本語が正しいことも重要です。誤字脱字や文法の間違いがないかよく確認しましょう。この辺りが全くできていないプレスリリースもよく見ます。読んでも何が書かれているのかよくわからないものもあります。
このようなプレスリリースを改変して修正してまで掲載するメディアはおそらく少数派です。
なるべく新鮮なエピソードを
プレスリリースは鮮度が命です。ゲームのリリースであれば、リリース当日にプレスリリースを打つのが良いでしょう。
稀に1ヶ月以上も前のゲームリリースについてのプレスリリースを受け取ることがありますが、少なくともニュースとしての掲載は難しいでしょう。
『昨月に〜〜ってゲームがリリースされていました』
というニュースはあまり興味を持たれませんよね?
エピソードの鮮度は大切です。エピソードの発生から日が経つに連れ、メディアが取り上げる確率は下がっていくと考えましょう。
タイトルを工夫する
タイトルはとても大事です。
メディアには毎日大量のプレスリリースが届きます。中身を全部チェックすることはできません。メディアの担当者にプレスリリースのメールを開いてもらうこと自体が、実は結構難しいことなのです。
プレスリリースをメールで受ける場合、メディアの担当者はメールのタイトルを一覧画面でざざーっと見ます。その中から良さそうなものを開いて見て、さらにその中で掲載できそうなものを選んでようやく掲載の準備に入ります。
従って、メディアに届くプレスリリースメールのタイトルはとても大事です。超大事です。タイトルは超大事。
直接メールを送信する場合はメールタイトルを工夫しましょう。配信サービスを使う場合はプレスリリースのタイトルがそのままメールのタイトルになる場合が多いので、つまり魅力的なプレスリリースタイトルが必要です。
自分がこのタイトルのプレスリリースメールを受け取ったら開いてみたいと思うかをよくよく考えましょう。
中身がバッチリでもタイトルが魅力的でなければ開かれすらしないというのが現実です。ここは時間をかけてもよいところです。
補足として、プレスリリースタイトルが魅力的であることは、メールが開かれる確率を上げるばかりか、掲載の確率も上げ、更に掲載されたのちにユーザーに閲覧される確率も上げます。SNSでもシェアされやすくなります。タイトル、大事です。
PDFは避ける
配信サービスを使わずに直接メディアにメールでプレスリリースを送る際に、PDFでプレスリリースを送って来る事業者がありますが、これは悪手です。
筆者の場合はPDFになっている時点でほぼ掲載を見送ります。
理由は、記事化するのに手間がかかるからです。
プレスリリースの情報がPDFにしかない場合、ニュース記事の作成に入る前に、
1.PDFをWordなどに変換する(PDFではコピペしにくいため)
2.Wordから画像データを抽出する
3.Wordからテキストデータを抽出する
という手順が必要になります。
画像が複数あったり、テキストが細かくテキストボックスなどで分割されていたりすると手間はさらに増します。
よほどの大きなニュースでない限り、たくさん来るプレスリリースの中からわざわざ手間がかかるものを選ぶ必要はメディア側にはありません。
PDFだけで情報を送るのではなく、ワードも付けて送る、画像は別に添付する、などにするだけで掲載率は上がるでしょう。
筆者としては実はWordもあまり好きではありません。テキスト部分に書式データが付与されてしまってコピペがうまくいかなかったり、写真のサイズが小さく記事に掲載した時に見栄えが悪いケースなどがあるためです。
テキストはメールにベタ打ち、画像は添付ファイル、動画はYouTubeのリンク、が筆者の場合は最も助かります。
少なくともPDFだけに情報を記載して送るのは避けましょう。
内容は十分に、そして簡潔に
プレスリリースに記載されている内容が薄すぎるとニュース記事として成立しません。ゲームのリリースであれば、
『X月X日に〜〜〜をリリースしました』
だけではなく、どのようなゲームなのか、特徴はどんなところにあるのか、どのように遊んで欲しいのかなどの情報を添えましょう。ゲームファンがニュースとして見た時に、こういう情報があったら喜ぶだろうな、という目線で情報を加えるのが良いと思います。
逆に関係の無い情報が多すぎるのも良くありません。
ゲームリリースのニュースなのに、
Twitterキャンペーンやります!ログインボーナスがあります!イベントも出る予定です!出るイベントはこれとこれです!あ、他のタイトルも間も無く出ます!
というようなプレスリリースもよく見かけます。
色々とPRしたくなる気持ちはわかりますが、結局何のプレスリリースかがよくわからなくなり、メディアとしては内容を把握して不要な部分を削いでいく手間がかかるので、掲載は見送るか・・・、となる可能性があります。
1つのプレスリリースには1つのテーマが理想です。もし色々なニュースが同時に発生してそれらを全て同時期に発信したい場合は、テーマごとに複数のプレスリリースを打つのが良いでしょう。この場合、配信サービスを利用するのであれば期間限定で打ち放題のプランがお得です。
テーマを絞って簡潔に、必要な情報をしっかりと伝えることを心がけるのがまずはオススメです。
個人的な見解を述べると、情報が少なすぎるものはメディアとしてはどうしようもありませんが、若干多いくらいであれば編集で削れば良いので、テーマに沿った情報をそこそこリッチに盛り込む、くらいが良いのではないかと思います。
ウケ狙いは高等テクニック 最初は避けるのがおすすめ
面白いプレスリリースというのは非常に魅力的です。目を通して思わず笑ってしまう、とても上手なプレスリリースを見ることが稀にあります。
しかし、最初のうちはこのテクニックは避けるのがおすすめです。面白おかしいプレスリリースというのは高度なテクニックが、あるいは強いタレント性などが必要です。
ウケ狙いに走り過ぎて何を言っているのかよくわからないことになっているプレスリリースもよく見ます。
「うひょー」「wwww」「〜〜だぜ!」のような、砕きすぎた表現が多用されているのも良くありません。
発信しすぎに注意
プレスリリースの発信しすぎもよくありません。
例えばほぼ毎日何らかのイベントをやっているようなゲームで、毎日それについてのプレスリリースを送って来る事業者が稀にありますが、あまり細かすぎるとスパムボックス行きになってしまうので注意しましょう。
細かすぎる、ニュース性に乏しいプレスリリースを頻繁にメディアに送るのは悪手です。
プレスリリースは、ある程度ニュース性のあるテーマで、タイミングを見て発信するようにしましょう。
ただの宣伝にならないようにする
プレスリリースは広告ではありません。事業者の活動の事実をメディアに伝えるのが目的です。従って、「是非購入してください!」「奮ってご参加ください!」などの表現がメインの広告記事を作ってプレスリリースとするのはNGです。
『半額セールにつきこの機会に是非購入ください!』
という表現は、
『X月X日〜X月X日の期間限定で半セールを実施します』
とするのがベターです。
宣伝文句が満載のプレスリリースは、掲載する際にそれらの宣伝文句を編集で削除する必要があるため、掲載率に悪い影響を与えます。
配信サービスによっては審査でNGとすることもあります。
手間をかけずに良いニュースを掲載したい、というのがメディアの本音
身も蓋もない言い方をすればこういうことです。
ゲームメディアにはたくさんの掲載依頼が寄せられます。ニュースだけではなく、レビュー依頼、取材依頼などもやってきます。その中からなるべく多くの良い情報を掲載しようと思うと、より掲載の手間が少ない面白そうなプレスリリースを優先して選択することになります。
このプレスリリースを受け取って自分のブログやFacebookなどで紹介すると想定して、見た人がが喜んでくれそうかどうか、テキストや画像を流し込む作業が簡単にできそうかどうか、という視点でプレスリリースを作成すると、おそらく大きな外れはないと思います。
色々な要素があって大変だな、これを自分でやるのは無理だな、と思う方もいらっしゃると思います。そのような方には、プロのライターさんに手伝ってもらったり、配信プラットフォームのプレスリリース作成依頼などを利用するのがおすすめです。1回1万円~5万円程度かかりますが、何度かそうやってプレスリリースを発信するうちにノウハウを得られると思います。その後自分で原稿を作るのも良いですし、そのまま依頼を継続するのも良いでしょう。
中小事業者の方には、あまり大きな負荷や予算をかけてプレスリリースを打つことはおススメしません。しかし事業者が何か活動をするときには、少なくとも日本においてはプレスリリースを打つのは今のところ意味があります。
上記を参考に、なるべく効率的で、かつ安価なプレスリリース発信を試してみてください。
インフルエンサーへどう届けるか
さて、最後にプレスリリースを出す目的をもう一度考えてみましょう。
ゲームの知名度をあげて、購入、あるいはダウンロードしてもらうこと、だと思います。
ニュースがメディアに載るだけでは十分ではなく、その先を考える必要があります。
ゲーム系のニュースメディアはかつては大きな力を持っていましたが、現在ではTikTokやinstagramのインフルエンサーにそのポジションが移りつつあります。
専門的な解説や情報の信頼性の点などではまだまだニュースメディアの価値はありますが、広く一般に届けるという点ではすでにインフルエンサーの方に分があります。
プレスリリースも、メディアへの掲載を経て、インフルエンサーの目に留まるようにすることが大きな目的になってきました。
インフルエンサーに「このゲーム面白そうだな」と思ってもらい、動画やSNS投稿のネタにしてもらうことで、一般に認知させるという流れです。
つまり、プレスリリースは「インフルエンサーの目線」を意識して発信していく必要があります。
このようにプレスリリースのあり方も一定ではなく徐々に変化していきます。
プレスリリースに関する情報は定期的に更新、追加していく予定です。知りたい情報やご質問などありましたら、コメント欄や、お問い合わせページからお知らせください。