中国ゲーム関係者から見る日本ゲーム市場とは?アジアゲーム市場バランスの変化の兆し
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
中国の勢いは凄い、まだ衰えてはいないですよ。
こんな説明をする機会が増えてきました。
こちらは「世界経済のネタ帳」というサイトから引用している中国と日本のGDPの推移です。
中国経済の話をすると、日本が中国にGDPで抜かれたからといって数兆円とか、せいぜい10兆円くらいでしょ?と思っている方が多いのですが、実態は中国のGDPは日本の3倍に迫る勢いです。その差は実に約1千兆円。
ChinaJoy2018の開催が迫ってきました。ChinaJoyとは、上海で開催されるアジア最大規模のゲームの展示会で、今年は8月3日〜8月6日に開催されます。
SQOOLは今年もChinaJoyにメディアパートナーとして参加予定で、目下インタビューやビジネスミーティングのセッティングを実施中です。この時期に中国ゲーム市場関係者とのやりとりが増えるのが毎年の恒例になってきました。
やりとりをしていて感じるのは、中国ゲーム関係者の自信です。我々は前に進んでいる、そしてそのスピードは世界トップクラスだという自負が言葉の端々に現れています。
その一方で、彼らが口にするのは日本のゲームに対するリスペクトです。
「我々は日本から学んできた」
「日本のゲームは今でも優れている」
この言葉には多少のリップサービスが含まれているとはいえ、概ね彼らの真意でしょう。現在トップを走っているという自負が、日本を褒める余裕に繋がっているという側面もあります。
かつては日本語と日本独特の商文化によって日本のゲームメーカーは海外メーカーの侵入から守られてきましたが、最近はスマートフォンアプリゲームのアズールレーンや陰陽師に代表されるように多くの中国ゲームが日本に入って来ておりファンにも支持されるようになりました。もはや中国産であることは日本市場においてそれほどのハンデではなくなりました。
日本のコンテンツもIP(キャラクターなどの知的財産)という形で中国へ多く進出していますが、ここにきてどうも中国からの流入の方が多くなっているようです。
「日本ゲーム市場は成長が鈍化しているとはいえ、それでも世界的に見て大きな市場である」
というのが、中国ゲーム関係者から見た日本への評価だろうと思います。しかしここにきて更に状況が変化する兆しを感じます。
最近中国のゲーム系企業2社の日本担当者と話す機会を得ましたが、彼ら曰く、
「日本人の優秀なマネージャーを雇うのに必要な予算は、中国の給与相場からすると高いと感じる」
「例えばアメリカから日本を見れば安く優秀な人材を雇えるだろう。しかし中国から日本を見るとそうではない」
「日本市場の停滞を見ると、投資としての資金を本社から多く引き出すのは難しい状況だ」
「投資としては例えば東南アジアの方が魅力的で回収できる可能性も高いと本社は判断している」
日本のゲーム産業は尊敬しているが、市場として見ると停滞した保守的な市場。投資の場としてはどうか。そのように判断する中国ゲーム企業も出て来ているということです。
もちろんこれは大きな中国の一部分に過ぎません。しかし世界のゲーム市場の次のトレンドは確実に来つつあると感じます。
サウナジョイと揶揄されるほどの熱気の中で開催されるChinaJoy。今年は日本からの参加者は例年より多くなりそうです。いよいよ世界に出ようとする日本のゲーム開発者にとって、中国の熱狂はどのように映るのでしょうか。