【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

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 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

TGDF、Taipei Game Developers Forumというゲームイベントをご存知でしょうか。

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

TGDFは台北で毎年夏に開催されるゲーム開発者のためのフォーラム。2012年に100人ほどのイベントとして初開催され、その後年々規模を拡大、今ではゲーム関連のフォーラムとしては台湾最大の規模のイベントに成長し、約1,000人ものゲーム関係者が国内外から集まるようになりました。

TGDFではゲーム業界の第一人者による様々な公演が実施され、少ないながらもブースも出展され、また関係者同士の交流を目的としたMIXパーティなども実施されています。規模の大小を問わずゲーム業界関係者が集まっていて、台湾でのゲーム業界交流の場として非常に良いものになっていると感じます。

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

TGDFを運営するTGDF委員会は、「資訊工業策進会(INSTITUTE FOR INFORMATION INDUSTRY)」や、「獨立遊戲開發者分享會(IGDSHARE)」、その他台湾内のいくつかのコミュニティが共同で組織しています。つまりTGDFは台湾ゲーム産業の様々な関係者の協力体制の元で運営されているのです。このような協力体制が、TGDF会場の雰囲気の良さを作り出しているのかもしれません。

SQOOLではTGDFの現場を取材すると同時に、TGDF委員会の、Thomas Fan氏(資訊工業策進会)、Grace Lin氏(資訊工業策進会)、Johnson Lin氏(獨立遊戲開發者分享會)、の3名へのインタビューを実施しました。

TGDFはどのような目的で運営され、そして彼らは台湾ゲーム市場、日本ゲーム市場をどのように捉えているのでしょうか。

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

ーーまずはじめにTGDFについて教えていただけますでしょうか。TGDFは主にどのような目的で開催されているのでしょうか。

Thomas Fan:「私たちは7年前の2012年にTGDFを開始しました。それまではこのように大きな規模のゲームデベロッパーの交流の場はありませんでした」

Thomas Fan:「TGDFの最も重要な目的は台湾のゲームデベロッパーが交流し、開発の経験やアイデアや想いを共有する場となることです。同時に海外の方も楽しく交流できる場になればと考えています」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

ーーTGDFは国内外ゲーム関係者の交流の場として運営されているということですね。海外からの参加状況はどうですか?

Johnson Lin:「最近は増えてきましたが、比率からするとまだ少ないですね。海外のゲーム関係者の参加もっと増やしたいと考えています」

ーー海外へのPRはどのように行なっているのでしょうか。

Grace Lin:「SQOOLさんのような海外メディアを通じてですね。もっともっと参加して欲しいのでよろしくお願いします(笑)」

ーーかしこまりました!TGDFには日本のゲームデベロッパーも参加可能ですよね。

Grace Lin:「はい、参加できます」

Johnson Lin:「日本からは、実は一昨年は新清士さん、去年は水口哲也さんに登壇していただいたんですよ」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

ーー台湾のゲーム市場について教えてください。日本ではモバイルゲームが主流ですが、台湾ではどうですか?

Johnson Lin:「台湾のゲーム開発は以前はPCがメインでした。2000年頃のMMOの普及を経て、2012年頃からモバイルゲームを開発するデベロッパーが増えてきています」

Johnson Lin:「今はモバイルの開発者が多いですね、日本と同じような状況だと思います。ただ台湾では大きな会社はモバイルゲームが多く、インディーデベロッパーはPCゲームを開発しているところが多くなっています」

ーーどうしてインディーデベロッパーはモバイルよりもPCゲームに向かうのでしょう?

Thomas Fan:「台湾ではモバイルゲームを開発すると大手がライバルになりますので、インディーデベロッパーにとっては対抗するのが難しいという事情があります。その為インディーデベロッパーはPCゲームを開発する傾向にあります」

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ーー次にeスポーツについて教えてください。台湾ではeスポーツはどのような状況ですか?

Thomas Fan:「台湾では政府がeスポーツをサポートしています。それもあってか、以前はゲームに対して良くないイメージがありましたが、最近は徐々にイメージが良くなってきています」

ーー日本でも若い人のゲームに対するイメージは良くなってきています。しかしその親世代はまだゲームは良くないものだという認識です。台湾では親世代の認識はどうですか?

全員:「日本と同じです(笑)」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

Thomas Fan:「台湾は20年ほど前までは、皆街中にあるゲームセンターで遊んでいました。その後ゲームセンターの運営に免許が必要になり、ゲームセンターが減少しました」

その結果、台湾でも日本と同じく若者はモバイルゲームが主流です。しかし台湾は日本と比べるとeスポーツが受け入れられているように感じられます。

ーー日本でもゲームセンターが減少して、モバイルゲームが主流になりました。モバイルゲームは対戦しないタイプのゲームが多いのですが、モバイルゲーム中心の若いゲームファンは、eスポーツに興味を持ちにくいという懸念はありませんか?

Thomas Fan:「最近台湾のゲーム開発者は、eスポーツ専用のモバイルゲームを開発しています。これが1つの解決策になるかも知れません。もう1つはTwitchやYouTubeなどのストリーミング放送ですね。ストリーミング配信でeスポーツの楽しさを伝えるのは有効です」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

Thomas Fan:「動画の視聴はスマートフォンよりもパソコンの方が多いですね。画面が大きいですから。台湾ではほとんどの若者がパソコンを持っています」

Grace Lin:「以前はeスポーツの動画を見るにはTwitchとYouTubeしかありませんでした。しかし今は台湾Yahooなどが開発したeスポーツ専用のストリーミングアプリがあります。そのため、eスポーツをモバイルで視聴する人も増えてきています」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

ーー次にVR、AR、MRのゲームについて教えてください。これらのゲームは台湾ではどのような状況でしょうか。

Thomas Fan:「ゲームということであれば、VRゲームの開発者はいます。ただ、ARの開発事業者はVRよりも少ないですね。ARゲームを開発しているのは1社か2社くらいです。MRはゲーム用途はほとんどありません。MRは病院での手術への応用などが開発のメインですね」

ーー日本と中国は去年今年とゲームショウへのVRゲームの出展が減っています。台湾のトレンドはどうでしょうか。

Thomas Fan:「台湾も基本的には日本と同じトレンドです。台湾のVRゲームは去年が最も開発会社が多かったと思いますが、今年は随分減りました。VRゲームを開発していた会社の多くは、PCゲームの開発に移行しています」

Johnson Lin:「VRゲームはまだ収益を得るのが難しい状況ですね」

台北はVIVELANDなどのロケーションベースVRが成功していることもあり、VRゲームの開発者は減っていないのではないかと考えていましたが、実際には減っているそうです。中小のデベロッパーにとってVIVELADNのゲームとして採用されるのは簡単ではないという事情があるようです。

ーー日本のゲーム市場は国際展開が1つの課題です。台湾のゲーム業界はうまくやっているように感じますが。

Johnson Lin:「台湾ゲーム業界にとっても国際展開は課題ですよ」

Thomas Fan:「一部の会社は海外展開できていますが、まだ十分ではありません」

Thomas Fan「日本のゲームは日本ゲームのスタイルが見えますが、台湾のゲームはスタイルがないというのも台湾の課題です」

ーーそれは面白い視点ですね。我々からすると日本のゲームは日本風過ぎて、ローカライズなどを考えると海外展開に有利ではない側面もあります。その点台湾のゲームに強いスタイルが無いというのは国際展開の際の強みにもなりませんか?

Johnson Lin:「そうとも言えませんね。台湾のゲームのスタイルがないのは認知の面で問題があると考えています。ブランディングが十分ではないということですね」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

ーー日本と台湾のゲーム業界の交流について伺います。日本のゲーム業界にどのようなことを期待していますか?

Johnson Lin:「もっと多くの方と交流したいですね。実は2012年にTGDFを初めて開催した時は、海外から招待したスピーカーは全て日本の方だったんですよ」

Johnson Lin:「私たちはずっとコンタクトを継続したいと思っています。最も大きなハードルは言葉の問題ですね」

実はインタビューに応じてくれた3名はいずれも英語が堪能、さらにJohnson Lin氏とGrace Lin氏は日本語も少し話せます。言葉の問題は主に日本側の問題。ゲーム業界のみならず日本人の語学力問題は何とかしなければ、と改めて感じます。

ーー来月は東京ゲームショウがありますね。台湾のブースはどれくらい出る予定ですか?

Grace Lin:「台湾のゲームデベロッパーは、やはり皆日本に興味を持っていますね。東京ゲームショウには台湾から20社ほど出展する予定です。ゲームデベロッパーの他、関連サービスを提供しているの会社のブースも出る予定です」

ーー20社は多いですね!

Grace Lin:「そうですね、去年より増えましたね。東京ゲームショウでは台湾のブースを案内しますので一緒に取材を頑張りましょう!(笑)」

【インタビュー】台湾のゲーム関係者が集まる一大イベント「TGDF」とは?運営者にTGDFについて、そして台湾と日本のゲーム業界について聞いてきた

TGDFを通じて感じたのは、台湾ゲーム業界のホスピタリティ、おもてなしの意識の高さと、日本ゲーム業界と積極的に関わりたいという姿勢でした。
日本のゲーム業界は、国内市場の飽和感と共に、海外展開の機運が高まっています。中華圏は同じアジアということもあり美的センスが近く、日本のゲームデベロッパーにとっては有力な市場の1つ。台湾は日本に近い中華圏としてその存在意義を増しつつあります。

台湾ゲーム業界、ちょっと気になるな、と思った方は、9月の東京ゲームショウで台湾ブースを覗いてみてはいかがでしょうか。そして来年1月の台北ゲームショウ、夏のTGDFに是非参加してみることをお勧めします。
近くて近い国台湾で、新たなゲームの在り方が見えるかもしれません。

TGDF2018公式サイト(英語)

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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