【APGS2017】【レポート】幕張で「アジア太平洋ゲームサミット」が開催 日本のゲームデベロッパーの世界展開とVRの将来性 日台連携の可能性を探る

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 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

モバイルゲームの隆盛、VRの台頭、そしてe-スポーツの認知拡大など、日本のゲーム市場は常に変化を続けています。

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今年の東京ゲームショウでは昨年に続きVRブースが多くの人を集めてはいたものの、「VR元年」が声高に叫ばれた昨年と比べると展示されているコンテンツの新規性は若干弱かったように思います。
Switchがブームを起こし、モバイルゲームの勢いが若干の陰りを見せるなど、日本のゲーム市場は今年もまた変遷期にあると言って良いでしょう。

そのようなゲーム市場において、日本のゲームメーカーの海外進出の機運はますます高まってきていると感じます。

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「アジア太平洋ゲームサミット(APGS)」は2017年9月21日、東京ゲームショウの会期に合わせて、台北市コンピュータ協会が主催し、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の後援の下、アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉にて開催されました。

APGS2017では、日本と台湾の企業連携による世界進出についてのパネルディスカッションやVRの持つ将来性についての成功事例紹介などが行われました。

急成長する中国市場を視野に入れたとき、中国語圏でかつ日本と文化的親和性が高い台湾市場は、極めて重要な市場と言えます。

この記事ではAPGSでの講演やパネルディスカッションの概要をお届けいたします。

重要性が増すアプリゲームの海外展開

まず最初に、AppAnnieの村上氏より、日本のアプリゲーム市場の特徴についての講演がありました。

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AppAnnieの統計によると、スマートフォンで最も長い時間アプリゲームを遊ぶのは韓国で、その次が日本。日本のアプリゲームの収益性はアメリカよりも高く、現在もなお年20%程度伸びているそうです。

それだけ日本のアプリゲーム市場は魅力的な市場と言える一方、収益の高いトップ10のアプリゲームの収益がアプリ・ゲーム全体収益の約4割を占めるなど、日本のアプリゲーム市場は寡占が進んでいる状態とも言えます。
しかし全く参入の余地が無いかというとそういうわけではなく、例えば今年の8月にはFate/GOが収益でモンストを抜いて1位になるなど、まだまだ新規参入しての逆転も可能な市場です。

とは言え、日本のアプリゲーム市場は海外のゲームタイトルにとっては参入障壁が高い市場であることは間違いがありません。海外のタイトルが日本市場で成功を収めるには、ローカライズ、カルチャライズを綿密にする必要がある、と村上氏は語ります。

近年の傾向では、中国産のアプリゲームが多くの国で収益を上げつつあり日本市場でも収益を増やしてきているそうです。
日本のアプリゲームが売上の7割以上を日本市場から得ていることを考えると、積極的に海外展開を進める中国産アプリゲームとのマーケティング戦略の差は明確です。

今までは日本のアプリゲーム市場の大きさと参入障壁の高さとに守られてきた日本のアプリゲームですが、海外勢が徐々に日本市場に浸透してくる中、今後は海外へいかに進出していくかが生き残りの鍵となるかもしれません。

ではその海外展開を考えたときに、日本のメーカーと台湾の企業とはどのような関係を持つことができるのでしょうか。

市場としての台湾の魅力と台湾企業の特徴

次のセッションでは、「日台ゲーム産業提携の未来、アジア太平洋から世界へ 」と題して、株式会社台湾コーエーテクモ取締役副社長の劉政和氏、株式会社WeGames Japan代表取締役社長の陳敏秀氏、X-LEGEND ENTERTAINMENT JAPAN株式会社 取締役社長の陳建文氏、の3名の日台提携経験者と、モデレーターとして台北国際ゲームショウ事務局CEOの呉文栄氏の4名によるパネルディスカッションが行われました。

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日本のゲームメーカーが台湾企業と提携するメリット

台湾コーエーテクモの劉政和氏は、日本のゲームメーカーが台湾企業と提携するメリットについて、以下のように説明しました。

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日本企業は海外を考慮するときに地勢的な点から台湾を選ぶことが多いと思いますが、台湾は文化面についても日本文化を受け入れやすい土壌があります。その為、例えば言語についても日本とのやり取りに優れた人材がい多いのです。
日本は企業文化が特殊で 海外での企業間のコミュニケションがうまくいかないということが多いと思いますが、台湾ではうまくいくでしょう。

例えば日本ではゲーム開発において人的なコストが高まっているという問題があります。海外進出はコストを下げる1つの方法ですが、進出する国を選び間違えるとコストが上がってしまうということもあります。台湾はコストに関しても、ゲームに関して情熱を持っている点でもよいパートナーになるでしょう。

また、台湾は東南アジアに近く、中国語を使っているという点でもメリットがあります。
日本のものを台湾を通してローカライズすることで他の東南アジア地域に広げることができるでしょう。

台湾企業と提携する際の注意点

日本ゲームメーカーが台湾企業と提携する際の注意点について、X-LEGEND ENTERTAINMENT JAPAN陳建文氏は次のように語りました。

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まずは両国の文化の違いに注目すべきです。
台湾と日本の文化は確かに近いものがありますが、それでも確かに違いはあります。

例えば私たちは台湾で採用面談を行いました。
多くの台湾人は会社に対してどれくらい休暇が取れるかということを質問しますが、日本人にとっては採用面接時にこの質問を会社にするのは難しいでしょう。
このように労働において日台間では違いが存在します。

他にも例えば台湾人は有給を積極的に取ります。
日本人は仕事のために休暇を取りますよね。
日本のやり方は、予算、人員などを最後の状態まで緻密に計算します。そのために柔軟に休暇を取るような考え方があまりありません。
台湾の場合は最初に方向性を詰めて、細部は柔軟に詰めていくやり方です。
どちらが優れているということではなくて、これは単にやり方が違うということです。

日台間では多くの問題もありますが、事業を発展させたいという思いを双方が持っているはずです。
どちら側が主導していくかをまず決めるべきでしょう。
日本と台湾とは総合的には理解し合っているので、困難も乗り越えやすいと思います。

台湾市場と東南アジアのその他の市場の特徴ついて

日本と台湾とでは習慣の違いもあり、それぞれの国に合わせたマーケティング戦略が必要、とWeGames Japanの陳敏秀氏。

【APGS2017】【レポート】幕張で「アジア太平洋ゲームサミット」が開催 日本のゲームデベロッパーの世界展開とVRの将来性 日台連携の可能性を探る例えば台湾はバイクで通勤するので通勤中にゲームをしません。ここは日本とは違いますね。
台湾は金曜日にプレイヤーが増える傾向にあります。日本人は飲みに行くと思いますが。台湾の人はプレッシャーが増えるとゲームをするような傾向もあります。だから金曜日はお酒を飲んで発散するのではなく、ゲームを楽しむわけです。
このようなユーザーの行動の違いは、例えば金曜日に施策を打つかどうかの判断に関わります。

その他の国では、今年の1月タイに進出しましたが、カード型のゲームを出したところかなり良い数字が出ています。人気ランキングのトップ10に入り続けています。

他にはベトナムですが、ベトナムは歴史について比較的高い理解度があり、その観点から成功したゲームタイトルもあります。※歴史をテーマとしたゲームの成功例がある、ということと思われる。

マレーシアに関しては他の国と比べると違う成功パターンだと感じます。

東南アジア市場の他の国でも現地の企業と組むことが重要だが、労働環境の違いに注意すべきです。
給与がいつ出されるか、休みはいつか、祝日は?ということを非常に気にする国もあります。

また東南アジアはハードウェアの要件が良くありませんので、そこも注意すべきでしょう。

進化を続けるVRにも期待

APGS2017ではVRについてのセッションも開催されました。
VR元年が謳われた昨年と比較すると若干落ち着きが見られる本年のVR界隈ですが、ゲームファンのVRへの期待値は依然高く、東京ゲームショウでもVRコンテンツのブースには長蛇の列ができていました。

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VRセッションでは冒頭にHTCの西川氏が同社のVRガジェット「Vive」を例に、VRの発展について講演しました。
講演の中で西川氏は、匂いや触感を感じることができるサードパーティーのデバイスや、温度を感じることができるデバイスを紹介。フェイスクッションやベストに振動デバイスを用いることで、例えばFPSゲームでは撃たれた箇所を体感できるなど、その機能性の高さを語りました。

またHTCはVR関連のスタートアップを対象としたインキュベーションプログラムも紹介。VRプラットフォーマーとしてのHRCがインキュベーターとしての役割を担うことで、VRのさらなる発展を予感させられました。

続いてJPW(台湾)CEOの董俊良氏が、VR市場全体の見通しについて、次のように語りました。

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2016年がVRの初年度だと思われていました。
チャレンジングな試みがたくさんありましたが、やはりチャレンジだったと思われてしまっています。まだ実験的な段階だと思われているのです。実際にVRはエコシステムの構築に苦労しています。
しかし良い兆候もあります。VRの市場規模、投資額の予想は増えると予想されています。数字からも多くの投資が行われていることが分かります。

ビジネスの状況としては現在はVRのリテール(小売)ビジネスは厳しいように思われます。しかしVRは経験しないと良さが分からないのですが、90%の人はまだVRを経験していません。

過去10年を振り返り、そして未来の10年を考えると我々はVR市場は大丈夫だと考えてます。

多くの議論が活発に行われたAPGS2017

このようにAPGS2017ではゲームの国際展開とVR市場について、濃密なセッションが開催されました。
日本ゲーム業界から見た台湾市場の重要性、そしてVRの将来性、その双方を再認識させられる場となりました。

台湾では来年1月25日から台北国際ゲームショウ2018が開催予定。40万人以上が訪れる台北国際ゲームショウは台湾のゲーム市場や現地企業を知る良い機会になると思います。

http://tgs.tca.org.tw/indie_application_e.php

既にブース出展の受付が開始されていますので、興味のある事業者様は是非出典をご検討されてはどうでしょうか。

新たな発展が求められる日本のゲーム市場、その第一の進出先候補として、これからも台湾市場に注目したいと思います。

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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