パズドラやモンストは「eスポーツ」には不要か?”ソシャゲ“のeスポーツへの役割について考える
著者:ちゃんたく
先日、日本での「eスポーツ」の普及と発展を目的とした「日本eスポーツ連合」が設立しました。
※2018年2月12日1:00、ガチャに関する表現の一部を修正しました。
eスポーツとはエレクトロニック・スポーツの略語で、ゲームを使用した競技のこと。
世界では「eスポーツ」の認知度や社会的位は高く、各地で賞金制の大会が開かれ、大きな盛り上がりを見せています。
しかし日本は高額賞金のeスポーツ大会が法的な理由から開催しにくい事情や、そもそも「ゲーム=悪いもの」という偏見や風潮などがあり、世界的なeスポーツ拡大の流れからは大きく遅れをとっている状況です。
そのような状況の中でも、“ウメハラ”や“ときど”をはじめとした日本人プロゲーマーが徐々に誕生し、彼らの力でゲーマーの間ではeスポーツの文化が浸透してきています。
そして先日、ついに「日本eスポーツ連合」が誕生し、いよいよ日本でもeスポーツの活動が本格化してくるようになりました。
「ソシャゲ」はeスポーツに不要か
ですが、このeスポーツ連合が「プロライセンス」を発行する先駆けとして選出した6つのタイトルに大きな波紋が広がりました。対象の6タイトルの中には「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」という記載があり、つまり6作品中2作品が“ソーシャルゲーム”からの選出だったのです。
世界的に人気な「LoL」などチーム対戦型の戦略ゲーム(MOBA)が選ばれず、2作品もソシャゲから選出された事が話題となり、案の定大きな批判を生んでしまいました。「eスポーツにソシャゲは適しているのか?」と、多くの人が違和感を覚えたのではないかと思います。
ではなぜ「パズドラ」「モンスト」がeスポーツのタイトルに選出された事にここまで批判的な意見が生まれたのでしょうか。
ソシャゲ特有の「ガチャ」をどう扱うか?「Pay to win」に関する問題
eスポーツの視点で観ると、ソシャゲには様々な問題が存在します。中でも一番の問題は元々のタイトルが持つ「課金=ガチャ」です。
パズドラにもモンストにも「ガチャ」が存在します。
元々のタイトルの特徴を生かす場合、プレイヤーが全員同じ資金を投入しても使えるキャラクターに差が生まれ、同条件で戦えない
という問題が生じてしまいます。
今回の闘会議では、パズドラは「パズドラレーダーのバトルで勝敗を決める」とし、「選手自身のゲームデータにあるチームを使用する」というルールを採用。
一部の有用なキャラクターを手に入れるにはガチャが必要で、「資金力がある方が圧倒的有利」となってしまい、求められる「競技性」の大きな足枷となるのは間違いありません。
例えば「格闘ゲームで使用するキャラは、お金をかければかけるほど強くできる」というシステムが実装されていたなら、格闘ゲームはここまでeスポーツで人気を博するジャンルになっていたでしょうか。
この点はeスポーツとして致命的であり、批判される主な理由となっています。この根本的な問題を上手く解決しない限り、他の競技タイトルと同じような評価をもらえることはないでしょう。
一方モンストは「モンストスタジアム」を使用して対戦を実施。これによりプレイヤーが使えるキャラクターに差はなく、順番にキャラクターを選ぶ「ピック」により編成の駆け引きが発生する仕様となっていました。
この方式は世界的に有力なeスポーツタイトルであるLoLでも採用されていますが、モンストに関してはピックシステムによる先行後攻の有利不利の差が大きいのではないかとの声もあり、ガチャを前提に作られたオリジナルタイトルからeスポーツへの転身の難しさを思わせます。
元々のタイトルが「ガチャへの大量課金」を前提としたものであるだけに、その他のeスポーツタイトルと比べるとどうしても問題が多くなる、というのが実情です。
それでもプレイヤー達は“魅せて”くれた
しかしだからといって、プレイヤーまでも否定するのは少し待っていただきたいと思います。
パズドラ、モンストの闘会議2018での戦いはプレイヤー達がハイレベルな戦いを繰り広げ、高い技術が介入する素晴らしい内容となっていました。
厳しい意見が飛び交う中で、プレイヤー達が素晴らしいプレイを魅せれば現場にいる観客からは大きな歓声が上がり、ネット配信の視聴者からもプレイヤーを称えるコメントが流れます。
全員がそう感じたわけではないにしろ、最初は懐疑的な空気で観ていた人たちの中にも「思ったより面白かった」という人がいたのではないでしょうか。
自分に出来る最高のパフォーマンスを発揮するプレイヤー達と、彼らの戦いで盛り上がる観客達が体験したその「熱さ」こそ、eスポーツの面白さだったと思います。
「ソシャゲ」のeスポーツへの役割
一部のゲームファン以外の方にはまだまだ「プロゲーマー」の認知度は低く、eスポーツという言葉自体が広まっていないのが現状です。「ゲーマーな人」と「ゲーマーではない人」の間には、大きな壁があります。
しかし、ソシャゲというジャンルはどのゲームジャンルよりもプレイ人口が多く、空いた時間に手軽に遊べることから「ゲーマーではない人」にも広く普及しています。
中でも広い世代で遊ばれている「パズドラ」や「モンスト」がタイトルに含まれていたからこそ、賛否両論はあれど一般層にも広く伝わる大きな話題となり、この団体の存在やeスポーツの認知を広めているのは事実です。
「ゲーマーではない人でもeスポーツの魅力を体験してもらう、興味を持ってもらう」という点こそが、ソシャゲだからこそ出来るeスポーツへの役割であり、求められていることではないでしょうか。
競技人口が増えなければそこに発展はありません。本来ならeスポーツに触れることはなかった人たちが、パズドラやモンストからeスポーツの面白さを体感し、そこから他の競技タイトルに興味を持ち、「初めて見たけどこのゲーム面白い!」「この戦い熱かった!」と繋がっていけば、パズドラやモンストなどのソシャゲも「eスポーツ」へ十分貢献できるのではないでしょうか。
ゲームの社会的地位が低い日本で、ソシャゲは一般人にも広く普及したゲームジャンルであり、eスポーツにとっては新規層を取り込む大きなチャンスです。この力は既に成熟している格闘ゲームやシューティングゲームにはない新しい力です。
ソシャゲがeスポーツに参入することはまだまだ批判的な意見が圧倒的に多く、実際その批判は的を得ており、問題は山積みです。
今後ソシャゲがeスポーツとして認められるためには、多くの人が疑問に思っている点をしっかり改善することが必須です。
プロゲーマーとしてのライセンスを発行すると決定した以上は、そのライセンスが形骸化しないよう、団体や運営には責任を持って取り組んでいただきたいです。
最後に、この制度で一番得をする、一番報われるのが、ライセンスを発行されるプロゲーマーであってほしいと切に願います。