名作アクションゲーム「ロックマンDASH」シリーズは復活できるのか

 コラム 
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 著者:シェループ 

カプコンの看板タイトルであるロックマンは、2018年10月4日に発売された約8年ぶりの新作「ロックマン11 運命の歯車!!」で、本格的に再始動。2019年11月7日には、世界累計販売本数が100万本を突破したこともカプコンより発表された。名作アクションゲーム「ロックマンDASH」シリーズは復活できるのか

ロックマンは1987年にファミコンで産声をあげた後、派生作も誕生するなどしてシリーズを広げていった。その経緯から、新作の発売とシリーズの再始動を見て、他の派生作の新作発売への期待の声は高まってきている。

最も注目されるのは、新作と同じ昨年に「アニバーサリーコレクション」を発売した「ロックマンX(エックス)」シリーズ。

同時期に出たサウンドトラックのライナーノーツに新作の存在を示唆する記述(「エックスの闘いの物語はまだ終わらない」)があったことから、期待できそうなところがある。

その一端で、日本での展開は未定ながら、CAPCOM TAIWANより「ロックマンX DiVE」なるiOS/Androidプラットフォーム向けアプリが2019年7月下旬に発表されている。

また、「ロックマンX」からの派生である「ロックマンゼロ」と「ロックマンゼクス」は、それぞれのシリーズ全作を1本にまとめ、新モードを追加した「ダブルヒーローコレクション」を発表。2020年1月23日の発売が予定されており、久しぶりの展開に大きな注目が集まっている。

そのほかの「ロックマンエグゼ」、「流星のロックマン」には動きはないものの、2000年代の代表作たるゼロとゼクスに動きがあったことから、いずれも新展開の機運が高まりつつある。

反面、動きが読めないのが「ロックマンDASH(ダッシュ)」だ。

同作は2011年に開発中止が告げられた「ロックマンDASH3」の件もあって、シリーズの中でも取り分け難しい位置に立たされてしまっている。

2010年から2011年にかけて起きた、「ロックマンDASH3」を巡る騒動

「ロックマンDASH3」は2010年9月29日、「任天堂カンファレンス2010」でニンテンドー3DS用ソフトとして電撃発表。シリーズ10年ぶりの新作ということで、国内外から大きな話題を呼んだ。さらにプレイヤーが制作スタッフとして参加できる意欲的な試みも実施され、専用のコミュニティサイトを開設。1997年の第一作目以降、シリーズを追い続けているファンを始め、多くのプレイヤーが来たる新作発売に向けて参加し、意見を出し合いながら動向を見守った。

だが発表の一ヶ月後、発起人で過去のシリーズの総責任者を務めていた人物がカプコンを退社。さらに年が明けた2011年2月16日、

も公式サイドから明かされ、急激に雲行きが怪しくなった。

幸い、発覚6日後に実施された承認会議で「試作期間の延長」が決定され、制作途上ではあったが、2011年3月末開催のイベントにプレイアブル出展される流れとなった。しかし、3月11日の東日本大震災発生の影響でイベントは中止となり、貴重な体験の機会は幻に消えてしまった。ただ、制作は続き、4月には「ニンテンドーeショップ」にてプロローグ版の販売を告知。それから間もなくして、スタッフと直接意見のやり取りをするミーティングの開催も告げられた。

ところが5月、ミーティング、プロローグ版配信の延期が発表。その後、公式からの情報も長らく途絶え、迎えた7月19日、開発中止が公表された。制作発表と同時に開設されたプロモーションサイト、コミュニティサイトは共に閉鎖。このタイトルに関するあらゆる情報が閲覧できなくなった。

かくして、10年ぶりの新作は幻に。さらに他に予定されていたロックマンシリーズの新作も開発中止が発表され、シリーズは急速に勢いを落とした。

無論、それだけでなく、2006年以降に展開されていた新たな派生作が芳しい成果を出せてなかったのも何かしら影響したのだろう。全てが不調だった訳ではなく、2009年の「ロックマン9 野望の復活!!」のようなヒットもあったが。

既に20年近く動きがない重大な現実と赤字を記録した過去

そのような背景があったことから、「ロックマンDASH」は再始動させるのが難しい派生作と言わざるを得ない。

事実、「ロックマン11」の発売が明らかにされた際、制作プロデューサーが寄せたコメントでこのタイトルの発売中止は、カプコン社内にロックマンの新作を作りたくても声を挙げられない空気を蔓延させたことを明かしているからだ。会社としても、正式な手続きを踏まずに公表されたタイトルとして、扱いにくい存在になったのは確かだろう。

それでも、経緯が経緯だけに「ロックマンDASH3」の復活、開発再開を望む声は絶えない。しかし、今更制作を再開するのは無謀が過ぎる。

考えてみて欲しい。

最後に前作(ロックマンDASH2)が出たのはいつだ?

2000年の……単純計算で19年も前である。
それからシリーズは展開が止まっているのだ。
厳密にはPlayStation Portableで移植版が発売されているほか、携帯電話アプリの「5つの島の大冒険!」を含めれば少し縮むが、それでも10年以上が経過してしまった。
「ロックマンDASH」って、そもそも何?……という世代も少なくはないだろう。

キャラクターに関しては「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」に「スピリット」という形で登場してはいるものの、Nintendo Switchで同シリーズを遊ぶことはできない。ゲームの詳細に関しても、知らない世代が多いだろう。

そして、PlayStation Portableも、続くPlayStation Vitaも生産を終了。移植のダウンロード版はまだ販売中とは言え、今後、気軽に遊べなくなっていく。ますます、その頃の世代しか知らないゲームになるだろう。

また、DASHシリーズは他のロックマン派生作に比べ、シリーズ展開が僅かで終わった作品でもある。そこにも重大な背景がある。

営業成績で赤字を出したロックマンであるからだ。

これはエンターブレイン社より2003年に刊行された「ロックマンメガミックス 2巻 -復活の死神-」の220ページに掲載された、シリーズ総責任者とメガミックス作者の対談で明らかにされている。

「ダッシュ」は営業成績としては赤字だったんです(笑)。僕はほとんど赤字のタイトルを持っていないんですよ。なのに「ダッシュ」シリーズ3つだけが。決して少なくない数は売れてますけど、開発費もろもろで考えると赤字になると……。
(※「ロックマンメガミックス 2巻 -復活の死神-」220ページより一部引用)

10年以上経ってもシリーズの新作が出なかったのは、その実績が影を落としていたのだと思われる。なので、件の対談を通して赤字のことを把握していた筆者は、2010年のDASH3発表時、驚きと同時に「何故、赤字と言われたロックマンの新作が作られることに?」との疑問が湧いた。

その理由は先の通り、承認許可が降りてない状況で付き走った結果だったのだが。(そのため、開発中止へ至ったことに関し、筆者は至極当然の結果であり、なるべくして迎えた結末であると認識している。)

もし、復活が計画されているのなら、出直しを最優先に

とは言え、「ロックマンDASH」の人気は根強い。

ゲームもフル3Dで描写されたアクションRPGと、3Dのアクションゲームが一般的になってない当時としては異彩を放っている。ジブリ作品への影響を感じさせるストーリー、個性的なキャラクター達、ロックマンシリーズ全体の醍醐味たる、装備を整えて敵に強烈な一撃を与える(答えを見つける)楽しさなどの魅力も多い。移植版が発売されたり、他社のゲームに特殊な形でゲスト出演するのも納得だし、3作目発売が決定した時の盛り上がりもよく分かる。

だが、繰り返しになるが、(オリジナルの前作から換算すれば)シリーズは19年も展開がない。初代込みなら20年以上も前だ。幾らゲスト出演の経歴があるにせよ、ロックマンと言えば初代、エックス(兼ゼロ)、そして2000年代にシリーズをけん引したエグゼのイメージが強く、どんなゲームか知らない世代は確実に多い。

そもそも、オリジナル発売当時もシリーズとしては僅かな展開に終わったのだ。

本当に「ロックマンDASH3」を出すなら、まずは「ロックマンDASHとはどんなゲームか」を伝えることが最優先課題だろう。20年近くもシリーズの展開がない、止まっているのなら、それは避けて通れない。いきなり3作目から発売でもすれば、それこそファンしか買わないゲームになる。幾ら過去作未経験で楽しめるようにしても、3作目ゆえのハードルの高さは拭い去れない。

ゆえにもし、再始動するのなら”出直し”を最優先に考えて欲しいと筆者は願う。

名作アクションゲーム「ロックマンDASH」シリーズは復活できるのか

現に「ロックマンX」も2005年の「イレギュラーハンターX」(※PlayStation Portableで発売)から13年近く動きがなかった。いきなり新作は作らず、過去の8作を現行機で遊べるようアニバーサリーコレクションを出したのだ。「ロックマン11」も、発売される前に「ロックマンクラシックスコレクション」で過去の10作を現行機で今の世代に遊べるようにしている。「ロックマンゼロ」と「ロックマンゼクス」もそうしようとしている。

まずはそれらと同じように「ロックマンDASH」というタイトルを遊べるようにし、周知すること。もし、再建の計画が発したのなら、それを優先して欲しいと思う。

正直な所、「ロックマンDASH」は当時こそ振るわなかったが、他のロックマンシリーズに増して難易度、ゲームシステム、世界観共に親しみやすい魅力に秀でている。後のエグゼと流星が確立した、「誰もが遊べるロックマン」の始祖でもあるのだ。まずは、その魅力の再周知を。そこから、見果てぬ夢に終わった3作目に繋げてくれれば。

20年近く動きがないことは非常に深刻なことだ。その重大な現実を今もシリーズを応援し、3作目の復活を願うファンも認識して、出直し優先の機運が高まってくれればと願ってやまない。

筆者としては、過去の派生作だけでなく、これからの派生作……いわゆる新しいロックマンの誕生を最も待ち焦がれているのだが、それについて語ると脱線も甚だしいので、ここまでにしておこう。

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著者:シェループ
新旧様々なゲームに手を伸ばしては、積みゲーを増やし続けるひよっこライター。アクションゲーム全般(特にロックマンシリーズとメトロイドシリーズ)と戦略シミュレーションが大好物。
Twitter:@shelloop