インディーゲームがスマホからSteamに移行していっているのはなぜ?Steamはインディーにとっての理想郷なのか?

 コラム 
  公開日時 

 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

かつて、5〜6年前まではインディーゲームといえばスマートフォンのアプリゲームが主流でした。
それが現在ではかなりの程度Steamに移行してきました。インディーゲームがスマホからSteamに移行していっているのはなぜ?Steamはインディーにとっての理想郷なのか?

この記事では、インディーゲームがスマホからSteamに移行している理由の考察と、Steamでのインディーゲームタイトルの状況について、筆者の視点から述べたいと思います。

さて、この流れは日本だけではありません。世界中様々な国のインディーゲーム開発者に聞いてみたところ、かなりの数のインディーゲーム開発者がスマホからSteamにゲーム開発の場を移しています。

最も大きな理由は、スマートフォンのアプリゲーム市場の成熟、だと思います。成熟とは、市場のルールが固まってきたということです。
スマホのゲーム市場は、広告出稿による集客と相性が良く、広告にかかる経費と、ゲームのダウンロードから得られる収益を計算して、黒字になるように広告展開とゲームの更新やリリースを継続していく、というのが常套になっています。

もちろん広告費を使わなくても利益を上げることは不可能ではありませんが、以前と比べてその可能性は低くなりました。
広告費を大手ほど出せない中小のゲーム開発者は最初から不利な条件で市場に挑まなければなりません。
もちろんパブリッシャーと組むという選択肢はありますが、パブリッシャーが全てのゲームをサポートするわけではなく、当然自己パブリッシュをせざるを得ないタイトルの方が多いのです。

また開発者によっては自己パブリッシングにこだわりを持っている方も多くいます。
自分の思いを込めたゲームを自分のスタイルでファンに届けたい、そのためにインディーゲーム開発者として独立している、という方にとって、広告出稿がメインの集客手段であるというスマートフォンゲームの現在の市場は戦いにくいものでしょう。

そこにきて順調に成長しているPCゲームプラットフォームのSteamは、インディーゲーム開発者にとって魅力的な市場としてその存在感を高めてきたのです。
2023年は実に14,000本以上のゲームがSteamでリリースされています。


2013年が約400本であったことを考えるとこれは本当に急速な成長です。
どれだけ多くのゲーム開発者、パブリッシャーがSteamでゲームをリリースするようになったかがわかるでしょう。

少し考えると、スマートフォンのゲームとPCで遊ぶSteamのゲームとでは、スマートフォンのゲームの方がユーザーは多いはずです。

理由の一つは前日した、広告出稿です。
スマホゲームはユーザー獲得には広告出稿が必須と言っても良い環境ですが、SteamはSteam内での評価が最も重要な仕組みになっており、加えてSteam内のセールなどでうまく露出していくことが求められます。
つまりSteamで集客するには広告出稿よりもSteamの仕組みへの理解が重要というわけです。これは予算の少ないインディーゲーム開発者にもチャンスがあることを意味します。

二つ目の理由として、ゲーム内に広告や課金要素を入れなくて良い、ということもあります。
スマホのゲームは無料でダウンロードして遊んでもらい、ゲームの中でユーザー広告を見たり、アイテムを購入したりすることで売り上げが上がります。つまりゲーム開発者はゲームの中に広告や課金要素をうまく入れる必要がありますが、これは面倒なことでもあり、ユーザーがプレイをやめてしまう原因にもなります。インディーゲームがスマホからSteamに移行していっているのはなぜ?Steamはインディーにとっての理想郷なのか?

買い切りゲームが主体のSteamのゲームであれば、そのようなことを考えずに、純粋に品質の高いゲームの開発に注力することができ、これは多くのインディーゲーム開発者のスタイルを阻害しないものです。

また、Steamのゲームの方が単純に画面が大きく表現力が高いとか、SteamのゲームはSwitchとかPlayStationへの移植が比較的容易であるなども、インディーゲーム開発者が魅力を感じている点だと思います。インディーゲームがスマホからSteamに移行していっているのはなぜ?Steamはインディーにとっての理想郷なのか?

しかし、私は全てのインディーゲーム開発者にとってSteamが最高のプラットフォームだとは思いません。スマートフォンアプリゲームの方が良い点も今なお存在します。
実際に、私の知り合いのインディーゲーム開発者の中には、Steamからスマートフォンアプリゲームの開発に戻ってきた人たちもいます。

Steamは良いプラットフォームですが、インディーゲーム開発者にとって難しい点もあります。
例えば、原則有料買い切りであるSteamのゲームに求められる品質は低くありません。たとえ100円であっても無料ゲームでない以上お金を払う価値を求められます。
スマートフォンのゲームが低品質で良いというわけではありませんが、Steamにはコアゲーマーがスマホよりも多く、画面が大きくリッチな表現ができる分、中身の濃いゲームが求められがちです。

Steamはライバルのタイトルも強力です。スクエアエニックス、カプコンといった世界的なゲームパブリッシャーの過去の名作がストアに並んでいて、タイトルによっては驚くほど安く買うことができます。
それらの名作に加えて、世界中から様々なタイトルが集まってきます。そこはスマホと同じですが、しかし、お金を払ってゲームを買うときに、名作や人気作を押しのけて買ってもらうのは本当に大変です。インディーゲームがスマホからSteamに移行していっているのはなぜ?Steamはインディーにとっての理想郷なのか?

Steamで広告出稿が有効な手段でないことはデメリットでもあります。スマホであれば、少額でも広告を出してユーザーを集めることができますが、Steamはそれが難しい構造です。場合によっては全く集客できず、数本しか売れない、ということが起こります。知名度が低くSteamにまだ数本しかゲームを出していない場合は、大きく売るチャンスを逃してしまう、ということもありえます。

一度Steamに挑戦してみてスマホゲームの開発に戻ってきたインディーゲーム開発者は、これらのデメリットを感じ自分のスタイルはやはりスマホの方が向いている、と判断したということでしょう。

というように、Steamが必ずしもインディーゲーム開発者にとって最高の環境とはいえませんが、スマホに加えて選択肢が増えたことは喜ばしいと思います。Steamこそ合っている、というインディーゲーム開発者も多くいるでしょう。
スマホでは実現できなかったゲームプロジェクトをどんどん完成させている人もいます。

Steamのような存在があってこそスマホのプラットフォームとしてもあり方も発展するでしょう。

今後Steamから面白いインディーゲームが数多く出てくることに期待したいですね。

SQOOLのYouTubeチャンネル

著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
著者Twitter