台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

 コラム 
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 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

台北ゲームショウ2023は4日間で30万人以上が来場し大成功!
公式に発表された来場者数は、コロナ禍前とほぼ同じ水準だった。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

体感よりも若干数字が大きくも感じられたが、それは会場が新たに台北南港展覧館に移ったからかもしれない。台北が大好きな筆者にとっては嬉しいニュースで、ここからまた台湾の各ゲームイベントが復興するのが本当に楽しみだ。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

さて、盛況だったイベント会場とは裏腹に、台北ゲームショウでは台湾ゲーム業界の苦労も同時に感じられた。
この記事では敢えてその部分を少しご紹介したい。

まず台湾のゲーム関係者が一斉に口にするのは、台湾大手ゲーム会社の苦境だ。
曰く、台湾の大手ゲーム会社は強い自社ゲームをほとんど持っておらず、中国や韓国のゲーム会社の下請けとして稼働している、というもの。
確かに台湾のゲームといえば少し前まではMMORPGなどの大規模タイトルがあったが、ここ数年は目立ったリリースが見られない。
市場の規模や会社の数を考えると、中国や韓国、日本ほどに多くのタイトルを出すのは難しいと思うが、ほぼ見られないと言うのは寂しい限りだ。

「もともとその傾向にあったが、コロナ禍でそれが進んでしまった」

とは台湾ゲームメディアの担当者の言。
もともとその傾向にあったのは筆者も同意で、しかしその中でも例えばGamaniaなどの大手ゲーム会社が台湾のインディーを支援するなど、委託開発から得た利益をうまく台湾のゲーム産業の育成に回していたように思われる。今はその仕組みも以前ほど動いていないとのことだ。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

では台湾で全くオリジナルのゲームが作られていないのかといえばそうではない。

「最近はアダルトゲームが多い、特にAndroidでGooglePlayを介さないものが人気」

こう聞くと日本人としては少し驚いてしまう。
台湾はアダルトゲームへの規制が日本よりも弱く、通常のゲームよりも高い収益性があると言う。男性だけではなく、女性向けのアダルトゲームも多くのユーザーを獲得しているという。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

そして声優は日本人だというからまた驚いてしまう。
「日本の女性ユーザーも多いはずですよ」
というから、ひょっとしてこれは筆者が知らなかっただけなのか。

ともあれ、そのような新規市場の開拓と、海外からの開発の委託によって台湾の大手ゲーム会社は糊口を凌いでいるようだ。
これは儲かっていないという話ではなく、あくまで、オリジナルのゲームが成功していないという意味だ。またアダルトゲームを批判するものでもないので、念の為記しておく。ゲームを含めたアダルトコンテンツは立派な文化でありその地域の方に則っている限り批判されない。ただゲームファンとしてはアダルト以外のゲームも期待しているということだ。

さて、そのような台湾のゲーム業界の状況の中、インディーゲームクリエイターも苦労していた。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力台湾市場はインディーから見れば小さくはない。しかしそれでも日本や中国と比べれば小さい。台湾のインディーゲームクリエイターは、ゲームを国際展開することがある程度前提になるが、コロナ禍もありパブリッシャーと繋がるのが難しくなってしまった。

「日本でもリリースしたいがパブリッシャーが見つからない」

ということを、台北ゲームショウの会期中に何度も聞いた。
足元に大きな市場を持たない台湾インディーゲームクリエイターにとって、コロナ禍は本当に大きな危機だろう。
しかし一方で光明もある。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

パブリッシャーが見つからないということは、新しいタイトルがあるということだ。実際にインディーゲームクリエイターに話を聞くと、リリースしたばかりの新作や、開発中のタイトルを見せてくれた。
徐々に国際的な行き来ができるようになってきている状況を考えると、台湾のインディーゲームはコロナ禍の前のような勢いを取り戻すのではないか。

記憶に新しいところで「返校」というタイトルがあるが、それと同じような問題作で「台北大空襲」というタイトルもリリース間近だ。
日本人としてコメントするのが難しい問題作だが、政治的な問題も積極的に取り扱う台湾のインディーゲーム界隈にはある種の尊敬を覚える。

台北ゲームショウに見た台湾ゲームの苦労とインディーゲームクリエイターの底力

もちろん問題作ばかりではない。台湾のインディーゲームのレベルはもともと低くない。
ここ数年触れられていなかったが、改めてそのレベルの高さを再認識した。発想が常に新しく、何かの理念をゲームに込めようとするのが台湾インディーの特徴と筆者は考えている。その独創性は非常に面白く、ゲームファンとして楽しみなタイトルも多い。

筆者は勝手に台湾のことを「オタクの国」と呼んでいるが、日本よりも台北は秋葉原的に感じる。台湾が好きすぎてちょっと変なフィルターがかかっているかもしれないが、ともあれ、台湾の大手も、台湾のインディーも、これからまた復活して欲しいと願うばかりだ。

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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