仕事を辞めました|ぷよぷよプロゲーマーlive(リベ)のコラム

 コラム 
  公開日時 

 著者:live(リベ) 

プロゲーマーであるliveは、仕事を辞めました。

仕事を辞めました|ぷよぷよプロゲーマーlive(リベ)のコラム

と書くと、

ああ、退職エントリか」

と感じる方も多いでしょう。
今の日本は、愚痴、恨み、怒り、嫉み、もやもや、何かしらのネガティブな感情をネット上で発散し、それに共感してバズる…というような慣例的な仕組みが出来上がっています。

おそらくは、それ相応に自身の現状を嘆く人が多いか、もしくは他人の不幸を啜って悦に浸りたいのか。いずれにしても、前向きな感情のもとに拡散されているとはあまり思えません。

何かを攻撃したい、自分が正しいと思いたい、という深層的な欲求を満たして自らの精神の安寧を保っている人は少なくないでしょう。

自己紹介が遅れました。JeSU公認のプロライセンスを所持しており、SEGAのタイトルである『ぷよぷよ』シリーズのプロゲーマーをやっている、live(りべ)と言います。この度、5年半ほど勤めた前職を辞め、プロゲーマーとしての道を主軸とすることにいたしました。

影響力を持つ発信側は簡単にいともレッテル張りを受けます。人間は物事を既に知っている知識で解釈しようとします。例えば先述の仕事を辞めたという文のみでは、「何か職場環境が劣悪だったからなのかな?」という曲解や、「見ろ!やっぱりプロゲーマーは社会不適合者だ!」という誇大解釈を受けやすいでしょう。

僕はそれが100%間違いだとは思いませんが、元々見えている物事には多面的な要素があるということや、それを加味せずに白か黒かきっぱり断じてしまうのは非常に危険であるということを伝えるためにこの文を書いています。

以下、実際にどういう背景があったのかを綴っていきます。

何故仕事を辞めたのか

僕の場合少なくとも、前職の環境や待遇は特に悪いものではありませんでした。ただ、一時期人間関係で悩んでいたこともあったり、自身のプロゲーマーとしての活動を洗いざらい話せるような信頼を職場と築けていたかというと、決してそうではありませんでした。

でも、安穏と定職で給与をもらい、人並みに家庭を持ったりすることは、僕にとって非常に楽なルートでした。周囲に合わせるだけでいい。思考しなくてもいい。だからそのレールの上に乗っかって、豊かではなくとも生きられるならそれで構わないと考えていました。しかしその反面、職場に対して心を開いていなかった僕は、日常の中でどんどん無感情になっていきました。

そんな折に出会ったのが、SEGAからの「ぷよぷよのプロライセンスを発行するので受けないか」という提案。

仕事を辞めました|ぷよぷよプロゲーマーlive(リベ)のコラム

それから1年を通してプロゲーマーとしての活動をする中で、今まで鬱屈していた感情は再度芽吹きました。自身が極めてきたものによって脚光を浴びる世界。そんな真新しい環境で、鈍色の心は様々な色の灯りに照らされ、感化されていきました。「生きるということは感情が動くことなのだ」と改めて思わされたのです。

そうやって徐々に自分の知名度が上がる中、今までの生き方は僕の足を引っ張りました。自身の考え方が変わったことを無理に説くよりも、退職する方がスムーズだと感じたのです。何よりも僕が人間らしく生きるために、必要だから環境を変えようと思ったのです。

結果だけ見ると、交際していた関係も切り、定職も捨て、まるで狂人のようの思われるかもしれません。ですが、上記のように筋は通しています。

ポジティブな感情を集めるために外に出た

僕のそんな前向きでポジティブな感情の欠片が、正しくぷよぷよのコミュニティやプロ達に伝播していたかというと、思った以上に実情は難航していました。冒頭にも実例を挙げた通り、ネガティブな感情を集めることが癖になっているゲーマーは多いのです。僕も、何の希望もなく日々をただ生きていた頃は、人やモノの粗探しに躍起になっていました。

後ろ暗い空気を背負いながら前向きに活動するのは非常に難しいことです。幾度となくネガティブな意見を耳にして折れそうになることがあります。そんな中でも確固とした意志を持ち活動を続けるには、人の関わりを一部断絶するか、人の関わりを膨大に広げるかの二択しかないことに気づきました。

仕事を辞めました|ぷよぷよプロゲーマーlive(リベ)のコラム

eスポーツという新興産業には、前向きに動いている人間が必ずいるはずです。ぷよぷよというコミュニティに属する中、断片的な情報を得ていた僕は、外側の世界を見に行くことにしました。いくら僕個人が変わったところで、その空気が周囲に伝播しなければ意味がない。だからコミュニティとの接点を持ったまま、希望を彼らに伝える役割をしたい。そう思ったのです。

関わりの中で、たくさんの人々の理想を追う姿に感銘を受けました。僕が仕事を辞めよう、環境を変えようと決心したのも、彼らの影響が強かったように思います。ぷよぷよのコミュニティの中だけでは決して得られなかった経験を、僕が身をもって周囲に伝えることが現状を打破する一石となるのだと信じています。

今後の指針としては、スポンサーとなっていただけそうな企業巡りと、自身のプロ活動を理解していただきながら生活基盤を支える就職先探しの2軸で活動中です。ぷよぷよというゲームの文化に寄り添って生きる道がある、という前例を作って示すことが、まだ見ぬ未来のスター選手発掘にも繋がるはずです。

最後に、僕が外の文化に触れたことで学んだ3つのことを提示しておきます。

よく知らないことを本能だけで拒否しないこと。多くの批判は知らないことが原因で起こっています。

机上の知識だけで知った気分にならないこと。頭でっかちで諦めやすく行動できない人間になります。

多くの人々と実際に話してみること。自分が解釈している知識はそもそも間違えている可能性もあります。

僕は成功者はまだ到底言えない身分ですが、これを意識するだけで視野が大きく変わってきました。実際に、以前よりは満足した生活ができています。

自分が信ずる何かに注力できる、そんな前向きな人生を歩める方が一人でも多く現れることを願っています。

仕事を辞めました|ぷよぷよプロゲーマーlive(リベ)のコラム

何より僕がこの道に進もうと思えたのは、プロゲーマーを筆頭としたeスポーツに関わる先人達が今まで歩んできた道のりを知ったからです。だから、自分のプロゲーマーとしての足跡を残すことが、後に続く者への勇気になると思っています。こちらでは引き続きプロゲーマーとしての活動を連載していく予定ですので、皆様引き続きよろしくお願いいたします。

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著者:live(りべ)
ぷよぷよJeSU公認プロライセンス保持者。「覇王」の異名で親しまれる。 EVO2018・2019(ラスベガス)のぷよぷよ大会で連覇。 実況解説も手掛ける他、ゲームや選手の魅力やプレイヤー視点でのeスポーツ業界への意見を綴るブログ「清濁のるつぼ」を運用。 上野Buzz esportsにて開催される「飛車ぷよ!」の広報及び、平日ぷよぷよ対戦会(上野BPT)の主催を行う。
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