ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

 イベント取材 
  公開日時 

 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

ChinaJoyは主に大手ゲーム関連企業のための展示会と言っても良いでしょう。

ChinaJoyは中国最大規模のゲームの展示会であり、その役割の一つは中国内外の大手ゲーム事業者を集め、中国ゲーム市場の国際的な地位を向上させることにあるからです。20周年を迎えたChinaJoyは実際にその役割を果たしてきました。

ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

ではChinaJoyには中小の、いわゆるインディーといわれるゲーム事業者は出展していないのでしょうか。
実は今年のChonaJoy2023には、BtoB会場の一部にインディーゲームが展示されていました。

ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

この記事では、中国ゲーム市場におけるインディーゲームの開発者たちの状況について、過去の経緯も踏まえつつ少し掘り下げて説明したいと思います。

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かつては中国でも日本と同じようにインディーゲームに注目が集まり、多くのインディーゲーム開発者が生まれていました。これは大体2015年頃から目立つようになり、コロナ禍の少し前、2018年ごろまで続きました。

この時期はインディーゲーム事業者への出資が活発で、大手ゲーム企業のみならず他業種の企業もインディーゲーム開発事業者に積極的な出資を行っていました。

出資対象は中国の事業者だけではなく日本の開発者も対象で、「日本の優秀なインディーゲーム開発事業者を紹介してほしい」とよく言われていました。日本のスマートフォンカジュアルゲームが中国で多く展開されていたのもこの頃で、その開発会社を中国に誘致したい、という動きもありました。

ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

数々のインディーゲームが中国ゲーム市場で成功を収め、小規模で高品質なインディーゲームには価値がある、その認識が中国のゲーム市場で浸透し、中国国内のスマートフォンゲーム市場の成長に比例してインディーゲームへの注目も高まっていました。

しかし徐々に逆風が吹き始めます。2019年頃からけんちょくなってきた中国政府によるインターネット利用に対する規制の強化などにより雰囲気が変わっていきます。

その時期はちょうど世界的に広告におけるプライバシー保護の機運が高まっており、スマートフォンアプリ内の広告の収益性が下がり始めていた時期でもありました。広告のあり方についても中国は独自の体系を持っていましたが、それでも影響は免れずスマートフォンの無料アプリゲームの収益性は低下して行きました。

そこにきてコロナ禍が始まり、世界的には巣篭もり需要でゲームの需要が高まり、スマートフォンの広告の収益性も一時的に回復していましたが、中国では上昇トレンドは限定的で、多くの小規模なインディーゲーム事業者は開発を終了し解散するに至ったと聞いていました。

さて、コロナ禍を経て4年ぶりの中国、インディーゲム開発者たちはどうしているのか。と思っていたところでのChinaJoy2023のインディーコーナーでした。

ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

残念ながら言語の問題があり、その場でのコミュニケーションは限定的でしたが、一定の数の開発者はコロナ禍中も相変わらずゲーム開発を継続していたということがわかりました。

ただ日本やその他の国と同じように、スマートフォンアプリゲームを諦め、パソコンゲームのプラットフォーム「Steam」のゲームを開発している方がほとんどでした。Steamは中国ではVPNを通じてアクセススリ必要がありますが、中国ゲーマーにとって非常に人気のプラットフォームであり、そこへの移行は非常に自然な流れでしょう、

個人的に気になったのは、ChinaJoyのインディーゲームコーナーがBtoCではなくBtoBにあったことです。

BtoBの会場には一般のユーザーはほとんどおらず、必然的に試遊する人数がかなり限られます。パブリッシャーを探す、という意味があったのかもしれませんが、できればBtoC会場にコーナーを作った方が良いのではないか、と感じました。

ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

ChinaJoyのBtoC会場は基本的に大手企業向けであることなども影響したのかもしれません。

しかしインディーゲームが無視されておらず、コーナー設けられていたという事実は非常に良いものと感じました。このコーナーを設置するには運営側の苦労があったと予想されます。

筆者が非常に嬉しく感じたのは、中国のインディーゲーム関係者や、ゲームファンが、日本のインディゲームシーンにもかなりの興味を持っていることでした。知人に誘ってもらって参加したアフターパーティーでは、日本のインディーゲームの事情や、主要な収益源などについて多く質問されました。またBitSummitはもちろん、東京ゲームダンジョンのような最近できた新しい日本のインディーゲームイベントについても皆よく知っているようでした。

ChinaJoy2023で見た中国インディーゲームクリエイターの今

日本では中国のインディゲームイベントの情報はほとんど流通していませんが、中国側は日本のことをよく調べていて、その情報収集能力の高さに非常に驚きました。

中国ではゲームやインターネット利用に関する規制や規則が多く、小さなインディゲーム事業者には非常に厳しい状況です。にもかかわらずあい変わらず活発に活動している姿を見ることができたのは非常に嬉しい限りです。

中国のインディーゲーム開発者の課題として、日本と同じく、海外市場に出て行きたいがその資金力とノウハウがないということが挙げられます。

コロナ禍でようやく中国国内と海外のゲーム事業者との交流が再開されつつあります。国際展開の可能性も増えるでしょう。中国インディーゲーム事業者にとってこの流れが浮上のチャンスになることを願って止みません。

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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