OGL Gate3@フィンランド・オウル市 学生によるゲームのピッチイベント
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
フィンランド中部に位置する都市、オウル市。
ここには次代を担うゲームクリエイター達が学び、またオウル市のゲーム企業が集う「Game Campus」という場所があります。
筆者は幸いにも12月8日にオウル市のGame Campusで開催された「OGL Gate3」というゲームの発表会にメディアとして参加することができました。
http://www.dreamnews.jp/press/0000143689/
この記事では「OGL Gate3」についてご紹介しながら、オウル市のゲーム産業支援の取り組みについてご紹介します。
オーロラの下でゲーム開発!オウル市とは?
ゲーム産業が盛んな国といえば、日本、アメリカ、韓国などがあげられますが、フンランドも非常にゲーム産業が盛んな国です。
「アングリーバード」や「クラッシュオブクラン」というゲームタイトルを聞いたことがある方も多いでしょう。共に世界的なスマートフォンのアプリゲームですが、2つともフィンランドの企業が開発しリリースしています。
そんなゲーム産業が盛んなフィンランドの中部に位置する人口約25万人の都市がオウル市です。
中部に位置するといっても国全体が北方にあるフィンランド。
オウル市の冬は雪景色に包まれます。
そしてオウル市では運が良ければオーロラを見ることも可能。
筆者は幸運にも(本当に幸運にも!)偶然オーロラを見ることができました。
冬にオウル市を訪れる際はぜひオーロラ予報サイトをご覧ください。
http://www.aurora-service.eu/aurora-forecast/
オーロラも見ることができるオウル市ですが、フィンランドでは5番目の都市、中部以北では最大の都市であり、ゲーム産業も盛んで、ヒルクライムレースで有名なフィンガーソフト社も実はオウル市の企業。
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市としてもゲーム産業を重要産業の一つと位置付けており、様々に支援策を実施しています。
「OGL(Oulu Game Lab)」とは
オウル市の一区画を丸々占拠しているGame Campus、その中にはゲーム関連企業や、「OGL(Oulu Game Lab/以下OGL )」で学ぶ学生のためのオフィスが入居しています。
OGLは2012年に開始されたオウル応用科学大学が提供するゲーム教育プログラム。
学生はここでビジネスに即したゲーム作成を学ぶことができ、プログラムの進行度に応じて単位を取得することが可能です。
※OGL代表(Lab Master)のAnna Salomaa氏(右)。この日はクリスマスパーティーのためドレス姿でした。
OGLにはフィンガーソフト社をはじめとする地元ゲーム企業が協力をしており、また市の関連機関であるBusinessOuluも協力しています。
今回の筆者のメディアとしての訪問も、BusinessOuluのTakako Uchida氏の仲介により実現しました。
まさに理想的な産学官連携といえるオウル市のゲーム産業に対する取り組みは非常に先進的と言えます。
※オウル市のゲーム産業に対する取り組みについて詳しく聞きたい方は、BusinessOuluのTakako Uchida(内田貴子)氏までご連絡ください。(takako.uchida@businessoulu.com)
「街の産業を発展させるためには、教育(人材育成)が何よりも必要です。
OGL(Oulu Game Lab)は4か月ほどの教育プログラムですが、グローバルな観点から人を大きく成長させます。
今回のSQOOL社のGate3への参加をきっかけに、この教育プログラムの価値を多くの日本人に知っていただき、そして体感しに来てもらえたら嬉しいです。
ご興味のある方は是非ご連絡ください。」
オウル市Game campus内にはまだ空き部屋あり。ゲーム関連であれば日本のスタートアップの入居も可能、かもしれない。
こんな景色を眺めながらゲーム開発なんていかがでしょうか。
港町でもあるオウル市のサーモンスープは絶品!
さて、それではGate3に様子をご紹介しましょう。
Gate3は本気のビジネス発表会
Gate3はオウル応用科学大学が提供するゲーム教育プログラム、OGLのカリキュラムの一部である、ゲームの発表会。
発表会はGate1に始まり、Gate2、Gate3と3段階あります。つまりGate3は最終発表会。
※前日ギリギリまで作業するオウル市の学生。切迫感のある雰囲気。
学生が作成したゲームの発表会と聞くと、ふんわりとした雰囲気のイベント的なものを思い浮かべる方も多いと思いますが、Gate3は全く違います。
Gate3を通過すれば製品化に向けての開発が継続できますが、ここを通過できなければ数か月かけたプロジェクトもここで終了。
ビジネスに即した「ゲーム事業教育」
OGLは「実践的なゲームビジネス」を学ばせることが一つのコンセプト。発表する側も本気なら審査側も本気。
審査員はゲーム関連企業の経営層や有識者ですが、学生相手とは思えない厳しいコメントが飛び交います。
「見たことのあるようなゲームで強みが見えない」
「ビジネスとしての戦略が無いならタイムスケジュールは全て無意味だ」
「なぜプレイヤーはそのゲームをするのか」
「その進行システムだとステージが進むごとにユーザーが減るのではないか」
「ムービーを作るなら1つのポイントに集中しないと、我々はそんなに時間を使わないよ」
等々。筆者がこれを言われたら多分心が折れる。
※プロジェクトの行方を決める投票箱。優れたゲームプロジェクト1~3つが選ばれ次へ進める。
OGL代表(Lab Master)のAnna Salomaa氏は次のように語ります。
『ビジネスとしてゲーム開発を学ぶには、時としてギブアップを経験することも大切。
実際のビジネスにも時間の制限があり競争があり、その中で勝っていかなければならない。』
日本でのスタートアップ系のイベントやハッカソンにおいては、数日間の努力を全員で称えて優勝チームを決めてパーティーをして終わり、というようなものも多いように感じますが、OGL Gate3はそれとは真逆。
「良いものだけどビジネスにはならない」というプロジェクトは捨てるべき、「頑張った」という過程はビジネスの評価と関係が無い、そういったビジネスにおいて必要な感覚を先輩達が本気で教える場として存在しています。この辺りに、小国でありながら世界的なプロダクトを複数持つフィンランドの強さを感じます。
審査員の厳しいコメントは、参加した学生にとって貴重な経験になったことでしょう。