フィンランド発の大型スタートアップフェス「Slush Tokyo2019」で新たなゲームを発見!
著者:篭谷千穂
2月22日(金)~23日(土)の二日間、フィンランド発の大型スタートアップフェスティバル「Slush Tokyo2019」が東京ビッグサイト西ホールにて開催されました。
このイベントは、2008年にフィンランド・ヘルシンキにて初開催された「Slush」の日本”ご当地版”といったイベント。
「Slush」はスタート直後こそフィンランドの小さなコミュティでしたが、回を重ねるごとに世界中からテクノロジー系のスタートアップや投資家、メディア、果ては各国の要人が集まる国際的な大型イベントへと成長し、現在では東京、シンガポール、上海でも”ご当地版”が開催されています(Slush Tokyoは今回で5回目の開催)。
本家フィンランドにせよ東京にせよ、「Slush」の大きな特徴はビジネス系イベントとは思えないくらいスタイリッシュでクールであること。イベントは全て英語で運営され、会場内は現代アート作品のような個性的なオブジェや照明でド派手に装飾され、まるで大規模なクラブかロックフェス会場のよう。登壇者やブース出展も国際色豊かで、日本にいながらにして海外のイベントに参加したかのような感覚を味わえます。
日本ではちょっとあり得ないようなカンファレンスのメインステージ(の客席)。客席の後ろにまでこの演出!
なお、基本的に同イベントは「起業家」をフィーチャーしたイベントで、登壇者や出展ブースに業種の縛りは特にないのですが、開催国やその年ごとに何かしらトレンドのようなものがあります。ちなみにSlush Tokyoは他の国のSlushに比べてガジェットの出展が多めで、昨年はブロックチェーン/フィンテックのセッションや出展が多かったです。
なお、ゲーム産業が盛んなフィンランド発祥ということで、2015年頃まではゲーム系のスタートアップも多く参加していましたが、残念ながらここ数年はゲーム系はすっかり下火になってしまいました。
そんな中、奇跡的にフィンランド・ヘルシンキ市の「Business Helsinki」ブースにて新しいゲームタイトルを紹介してもらうことができました。やっぱり流石フィンランド!
ボードゲーム+街づくりシミュレーション+AR
こちらはフィンランドの石油会社のnesteが提供している、紙製のコマとマップを使ったボードゲームとシムシティ的な街づくりシミュレーションゲーム、ARを組み合わせた子供向けの教育ゲーム「Educycle」。主に小学校の社会科の授業に活用されています。
遊び方は、マップの上に様々な施設のコマを置いて自分の街を作っていくというもの。ただし、どの施設も良い面と悪い面があり、そのバランスと他の施設の組み合わせを子供たちに考えさせるのがこのゲームの狙いです。
特長は、施設のコマそれぞれに異なるデザインの模様が描かれており、これをあらかじめ専用アプリをインストールしたスマートフォンやタブレットのカメラで認識すると、画面上に各施設の3DCGモデルと概要が表示されるというもの。
施設の3DCGにはアニメーションもついており、どこに何を置くか、隣にどんな施設を置くかによって見た目にも楽しい街ができていくほか、プレイヤーはマップ上にコマを置くことによって、その施設ごとの役割や使用の際のメリット・デメリットを知ることができます。
例えば、街の人口を手っ取り早く増やしたい場合は家やマンションをたくさん建てればいいし、住民の満足度を高めたければ文化施設やスポーツ施設を建設すればいいのですが、そうすると維持のため電気の使用量が増え、それをまかなうための発電所が必要になります。しかし、風力発電はクリーンだけれども風任せでコストの割には電力の安定供給ができず、火力発電は安定供給できるけれども石炭が必要で二酸化炭素を排出し…と、実際にプレイしてみるとなかなか上手くいきません。
こうしたゲームを石油会社が教育のために提供しているというのは、化石燃料という限りある資源を扱っているからこそ、持続可能な社会の形成に貢献しようという理念の現れなのかもしれません。
インフルエンザの感染経路をゲームで学習
こちらは昨年末に設立されたばかりの本当に”スタートアップ”なゲームディベロッパーのTWISTED ARKが現在開発中のスマートフォン向けアクションゲーム「Flu Season」。所謂「エンドレスラン」と呼ばれる、コース上をどこまでも走り続けるアクションゲームですが、モチーフはなんとインフルエンザ(Fluは英語でインフルエンザの略語)。
プレイヤーは、くしゃみから飛び出したインフルエンザ(というかどう見ても鼻水…)となり、障害物を避けながら人々の間を駆け巡ります。
本作の特徴は、ただコース上を延々と走り続けるのではなく、その途中でできるだけたくさんの人間に接触し、インフルエンザの感染を拡大させることを目指すというルールです。
つまりインフルエンザの立場になれるシミュレーションゲームでもあり、同社ではインフルエンザの危険性を伝える教育ゲーム的な側面も狙っているとのことで、今年中のリリースを目指しているそうです。
気候変動をVRイラストレーションで表現
最後に、こちらはゲームではありませんでしたが、XR系ディベロッパーのTOUCHDOWN CREATIONSに所属するJuho Kastemaaさんが、ご自身のVR作品「World in Fusion」を試遊出展していました。
作品の内容は、気候変動で海面が上昇した世界にドードーなどの絶滅動物が蘇ったら…という、”近未来のif”を描いたもの。ここSlush TokyoのBusiness Helsinkiブースだけでなく、同時に福岡県糸島市のギャラリー「Studio Kura Gallery」でも個展を開催していたそうで、それにちなみ糸島市の風景もVR化して作品内に登場させたとのこと。
それにしてもフィンランドのVRアーティストが日本で、それも地方で個展を開催するとは、これまたグローバルな事例です。そういえば、今年は日本とフィンランドが国交を樹立してからちょうど100周年の節目の年。こうした個人間の交流もより活発になるといいですね。
Juho Kastemaaさんのポートフォリオサイトはこちら