不思議な少女と過ごすひと夏を描くノベルゲーム「探しものは、夏ですか」
著者:ちゃんたく
今回ご紹介するゲームは、短編ノベルゲーム「探しものは、夏ですか」です。
「探しものは、夏ですか」は、不思議な少女とのひと夏を描いたノベルゲームです。
物語の季節は夏。主人公である「空木恭平」が、数年ぶりに実家に帰省するところから始まります。
幼い頃に通っていた駄菓子屋のお婆さんが亡くなったと聞き、駄菓子屋へと足を運ぶ恭平。誰もいないはずの駄菓子屋にいたのは、正体不明の不思議な少女「織原真琴」でした。
お婆さんとは「知り合いだった」という真琴。不可抗力ながら真琴の着替えを覗いてしまった主人公は、通報しない代わりに真琴のお願いを聞くことになります。
そのお願いとは、無くしてしまった「ビー玉」を探すことでした。
彼女は一体何者なのか。彼女はなぜ、ビー玉を探しているのか。様々な謎を残したまま、主人公と真琴のビー玉探しが始まります。
ビー玉探しを行う中、この町で「小さな女の子が失踪する事件が発生した」という不穏な噂話を耳にします。
突然消えた少女は神隠しにあったのではないか。そんな突拍子もない声が聞こえてくる中、主人公は子供のころに一緒に遊んだ女の子のことを思い出します。
かすかに甦る記憶は、女の子とお祭りを一緒に回っていた風景。主人公が放った何らかの一言が彼女を怒らせてしまい、喧嘩別れのような形で主人公の目の前から駆け出していきます。
そして、そのまま二度と会うことはありませんでした。
記憶の中に眠る女の子がどうしても気になる主人公は、ビー玉探しと並行して、女の子の行方を辿ることを決意します。
ビー玉探しの意味。少女失踪事件の真相。記憶の少女の行方。そして、「織原真琴」の正体とは。
過去と未来が交錯する謎。やがて主人公は、不思議な体験と衝撃的な物語の真相へとたどり着きます。
これ以上は重大なネタバレとなってしまうので、ストーリーについてはここまでの紹介となります。
物語を進めるといくつかの選択肢が提示され、エンディングが分岐します。分岐する3つのEDを全てクリアすると、物語の最後を彩る真EDが解放されます。
選択肢を選ぶ前には、必ずセーブをしておきましょう。エンディングを迎えた後にすぐ新しいルートを探すことが出来ます。
このゲームは、物語を読み進めて、いくつかの選択肢を選ぶ純粋なノベルゲームとなっています。アクション等の操作はないので、そういったゲーム性を求めている方には合わないかもしれません。
ですが、スマホで手軽に「面白い物語を堪能したい」という方には、本当にオススメしたい作品となっています。
プレイを終えてまず驚いたのは、ストーリーのクオリティの高さでした。展開やセリフ等に無駄がなく、とても心地よいテンポで進んでいきます。
構成もしっかりと練られており、序盤で散りばめられた様々な謎が回収されていく後半の盛り上がりが素晴らしかったです。過去と未来が交錯した骨太なストーリーに素直に驚かされました。無料で遊べるクオリティを超えています。
主人公とヒロインにも好感が持てるので、ストレスなく読み進めることが出来ます。ノベルゲームとしてとても重要な部分です。
そして、このゲームでぜひ感じて欲しいのは「夏」です。
ゲーム内の優しい絵柄が「子供の頃に感じた夏」を見事に表現しており、とてもノスタルジックな気持ちになります。「こんな出会い、こんな夏を体験したかった!」と思わずにいられません。BGMやセミの鳴き声も夏を彷彿とさせ、世界観に没頭することが出来ます。
甘酸っぱくもほろ苦い、ひと夏の不思議な物語。気になる方はぜひプレイしてみてください。