取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

 ゲームレビュー 
  公開日時 

 著者:シェループ 

様々なPCゲームが販売中のプラットフォーム「Steam」には、「早期アクセス」(Early Access)と呼ばれるタイトルが存在する。ものすごく端的に言うと、完成途上のゲームである。

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早期アクセスのゲームは、プレイヤーからの幅広い意見を得て、よりよい状態にして完成版を出すことを目的のひとつにしている。プレイヤー視点でも、完成前のゲームを早々と遊べるに限らず、意見を送るという間接的な形で開発に協力できる魅力がある。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

この記事では、早期アクセス中のゲームから、完成版の登場が期待される1本を選び、その特徴と見所を紹介していく。今回は2021年12月16日より発売中の「逆転都市(Inverse Evolver)」をピックアップする。

アイテム次第でプレイスタイルが激変するローグライク・アクションゲーム

「逆転都市」は、ローグライク要素を取り入れた横スクロールのアクションシューティングゲーム。西暦20XX年の近未来、突如として多くの人間たちを捕らえ、彼らを怪物へと改造し始めた科学者Dr.Xの野望を阻止するため、彼の拠点である逆転都市の攻略を目指す部隊のひとりになり、戦いを繰り広げていくという内容だ。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

なお、念のため言っておきたい。

Dr.Xは某フリーランスの女性外科医とは無関係の別人である。

脱線はさておき。早期アクセス期間は約1年間。完成版は2022年の発売を予定しているようだが、開発チームは納得のいく完成度に達するまで作り込むとの旨を表明しているため、長引く可能性もあり得る。

また、価格は税込720円だが、早期アクセス終了後には値上げが行われるとのことだ。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」現時点では、8+αのメインステージ、200種類以上のアイテム、数十種類以上のモンスターとボス、9人のプレイヤーキャラクターが実装され、オープニングムービーやエンディングもそれぞれ備わっている。ほとんど完成しているに等しい状態だが、今後もさらなるマップ、モンスター、ボス、エンディングの追加などが検討されているようだ。

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具体的なゲームの流れとしては、「レベル」と呼ばれる8+αのステージを攻略していく形となる。各レベルは複数のフロアで構成されていて、いずれも足を踏み入れると同時に隣のフロアへと繋がる扉が閉ざされ、敵との戦闘が発生。基本攻撃のショットを駆使して、迎え撃っていくことになる。最終的に敵を全滅させられれば閉ざされた入口が解禁され、他のフロアへと移動可能になる。

これを繰り返しながら、レベルのどこかにあるボスのフロアを目指し、ボス戦を攻略できればレベルクリアとなって、次のレベルへと移行するという仕組みだ。このような流れを基本に本編は進んでいくようになっている。

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ちなみに用意されているフロアは戦闘だけではない。プレイヤーのステータスを向上させる武器、アイテムが配置された宝箱、手に入れたお金で購入できるお店が置かれたフロアも存在する。

また、途中で体力を全部失い倒れてしまうとゲームオーバーとなり、最初のレベル1からやり直しになる。たとえ後半レベルまで進んだとしても、問答無用でやり直しだ。この辺はローグライク要素を持つゲームらしいシビアさといったところである。

もちろん、レベルごとのフロア構成、敵の配置、手に入るアイテムや武器もプレイし直す度にランダムで変化する。取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

その中でとりわけ特徴的なのがアイテム、武器の効果である。いずれも取得すれば攻撃力が上がるなど、ステータス強化を図れるのだが、中には360度自在に飛び回れるようになったり、便利な特殊効果が備わったり、プレイヤーの基本性能を一変させてしまうものが存在するのだ。

しかも、これらのアイテムは一度取得すると後から外すことができない。そのため、種類によってはかえって動かしにくくなるなど、難易度が上がる罠としての一面も持つ。このようなアイテムが200種類以上あるため、取った時に何が起きるのか読めない怖さがある。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

ローグライクはいつ、何が起こるか分からないのが醍醐味のひとつだ。本作はそれをプレイヤーの成長に仕込む工夫を凝らしており、そこから先の読めない面白さを演出している。ステータス強化で不意打ちさせるという罠に仕立て上げているのもユニークな部分だ。

古きよき時代のゲームを思わせる遊びやすさと良心的な難易度

時と場合によっては、プレイヤー側を不利にする要素を特徴とする本作。

意外にも……と言っていいのか、ローグライク系のゲームとしては遊びやすく、取っつきやすい作りになっている。

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具体的には難易度が易しすぎず、難しすぎずの丁度いい具合に調整されている。ローグライク要素を持ったアクションゲームといえば、序盤は緩やかで、中盤以降に激しくなっていく難易度曲線が一種の定番のようになっている。

激しくなる一例を挙げるならば、序盤は少なかった敵の数が大幅に増えて対処しにくくなる、回避しやすかった攻撃が画面全体を覆う弾幕レベルになる、といった具合だ。そのような苛烈を極める展開にどう立ち向かうか考えつつプレイするのもローグライクの醍醐味であり、プレイヤーを飽きさせないための工夫のひとつとなっている。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」逆を言えば、理不尽さを最も感じやすい要素でもある。本作はそのような後半の苛烈化を抑える調整を施していて、多少アドリブが必要とされる場面はあれど、敵の攻撃パターンと対処法が分かっていれば、最小限の被害で乗り越えられるようになっている。また、敵の総数、画面を覆う攻撃が大幅に増えるようなこともない。一部、配置が意地悪になったり、トラップの量が増えるが、適度なバランスに収まるように調整されている。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」レベルの最後に対決するボスとの戦闘も、適度なバランスに調整されている。後半になっても、動きをよく観察し、慎重に対処すればノーダメージ撃破を狙えるバランスになっている。戦闘中にこちらの行動をかき乱す雑魚敵が現れるようになったり、攻撃の物量が増えたりするようなこともない。ラスボスですら、このバランスを厳守している。

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こうした調整が徹底されているのもあり、本作は優れた遊びやすさ、取っつきやすさを持ったローグライク・アクションゲームに仕上がっている。それもあって、この手のゲームを全く遊んだことがないプレイヤーにも優しいだろう。また、後半のバランス苛烈化がどうにも肌に合わないというプレイヤーとの親和性も高い。ランダム要素はあっても、どんどん過激になっていくのは勘弁願いたい……という欲求をお持ちであれば、まさに本作は打ってつけとも言える内容なのである。

また、操作の単純明快さも遊びやすさを際立たせている。基本的に移動、ショット、ジャンプの3種だけ。敵が放った弾幕を無傷で潜り抜ける無敵ダッシュ、ゲームパッドの右スティックで照準を動かして狙いを付ける、みたいな操作もなく、直感のまま楽しめる作りに徹している。

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悪く言えば、できることが少ない。しかし、それがかえって1980年代の古き良きゲームを思い起こさせる。移動とジャンプさえ普通にできれば、あとは己の直感だけが頼りという潔さには、直撃世代ほどノスタルジーを喚起させられるかもしれない。グラフィック、音楽もその頃のゲームを踏まえたドット絵、8ビット調の楽曲で統一されているのもそれを際立たせている。
とは言え、グラフィックに関しては色数多めで、光の表現も採り入れた現代仕様だったりするが。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

また、いずれの見所も、ローグライク定番の苛烈さを求めるプレイヤーにとっては不満を抱きやすいところでもある。その辺りの不満をフォローする高難易度のモードがあれば多少、話は変わってくるが、現時点では未実装となっている。

唯一、苛烈さが出ているところとしたら、ゲームオーバー後のリトライは完全にリセットされる仕様で、一部のパワーアップが継続する類のシステムがないことだろうか。昨今はゲームオーバーになっても、一部の解禁した能力などが継承される救済措置を備えたローグライク系のタイトルが目立つ傾向にあるが、本作にはそのようなものは一切ない。強いて言うなら、プレイヤーキャラクターの解禁とアイテム図鑑の記録が引き継がれるだけだ。

ただ、本編の難易度が抑えられている点ではバランスを取る措置になっている所もあるので、一長一短と言ったところである。筆者個人の感想としては、この作りで適切という認識である。しかし、高難易度のモードは別途、あってもいいように思える。

現時点でも結構遊べる出来。演出面のさらなる強化に期待

また、2022年1月のアップデートで追加された日本語だが、台詞の改行がおかしかったり、メニューアイコンの表示が若干崩れていたりといった不備が見られる。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

翻訳も機械的だったり、日本語として奇妙な表現があったりするのが目につく。ただ、本編ではあまりテキストを読むこともなければ、ストーリーはオープニングのムービーで語られるぐらいで、支障はほぼない。

とはいえ、できれば今後の再調整と改善に期待したいところではある。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」他に、もう少し改善されるといいように感じるのが演出全般だ。特に効果音が全体的に地味で、敵にショット攻撃を当てた際のヒット感に乏しい。倒した際の爆発も物足りなさがあり、爽快感に欠けているのは補強の必要を感じる。遠距離攻撃で戦うアクションゲームは、命中させた際の手応えと倒した時の見返り次第で、気持ちよさに決定的な違いが出てくる。本作は光の表現を採り入れている関係で絵的な美しさもあるので、ここをさらに際立たせるためにもアップデートでの強化を望みたい限りだ。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

あとは、ローグライク系のアクションゲームとしてシステム的な個性が弱いところがあったり、フロアのバリエーションが物足りない、キャラクターの解禁条件が異様に難しい、チュートリアルを再プレイできない、なども今後の改善を願いたい部分である。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

予定している早期アクセスの期間から、何事もなければ製品版は2022年12月にも登場するのかもしれない。既にラスボス、エンディング共に実装済みで、ローグライク系アクションゲームとしての基礎も整っている。それもあって、現段階でも十分に遊べる仕上がりである。

これが今後、アップデート実施で大きく強化されるのか、あるいはこのまま製品版の発売に至ってしまうのか。何にせよ、磨けばさらに光る部分が存在するので、多少予定からズレる展開になったとしても、完成度を高めて製品版に漕ぎづけて欲しい限りだ。

開発チームとしてもプレイヤーからのフィードバックは積極的に募集しているとのことなので、この記事を通して少しでも興味を抱いた方は実際に遊んでみて、気になる部分などの意見を送ってみよう。

取っつきやすくてやさしいローグライク・アクションゲーム「逆転都市(Inverse Evolver)」

また、繰り返しになるがローグライク系のアクションゲームとしては極めて遊びやすい部類に入る。その手のジャンルにデビューしてみたいけど、いきなり厳しいものは……という方はぜひ、本作をその1本目にしてみることをお薦めしたい。ここで色々慣れてから、他のローグライク系アクションゲームに触れてみるのもいいし、やり込んでみるのも一興だ。

アイテム取得次第でプレイスタイルが変わるという少し変わった面白さもあるので、既に幾つか似たようなゲームを遊んだことのある人にもお薦めだ。

著者:シェループ
新旧様々なゲームに手を伸ばしては、積みゲーを増やし続けるひよっこライター。アクションゲーム全般(特にロックマンシリーズとメトロイドシリーズ)と戦略シミュレーションが大好物。
Twitter:@shelloop