【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

 ゲームレビュー 
  公開日時 

 著者:ちゃんたく 

現在Steamで早期アクセス版が配信されている「違う冬のぼくら」というタイトルをご存知でしょうか。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

「違う冬のぼくら」は、「ひとりぼっち惑星」などで知られるインディーゲームクリエイター、ところにょり氏の最新作で、講談社ゲームクリエイターズラボの支援を受けて開発されています。

本作は2人プレイ専用のゲームとなっており、2人が異なる端末でプレイしながらコミュニケーションを取り、協力してパズルを解いていきます。
そのためこのゲームをプレイする際は、お互いの声が聞こえることが重要です。離れた場所で協力プレイをする場合は、何らかの音声通話ツールを使うことをお勧めします。

この記事では、筆者の視点を中心にプレイレポートをお届けします。

同じ場所でも景色は違う。認識のズレを共有し、協力し合うパズルアドベンチャー

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

本作の主人公は、家出をした2人の少年。プレイヤーはどちらかの少年を選択して操作することになります。

少年たちはとある目的のために山の頂上を目指しますが、その道中で鹿の死体を見つけ、途端に意識を失います。
2人が目を覚ますと、片方の少年は全てが「動物」に見える世界に、もう片方の少年は全てが「機械」に見える世界になっていたのです。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

ゲームシステムは横スクロール形式で、操作方法は移動やジャンプ、物を掴むといったシンプルな操作のみで、直感的に遊ぶことができます。

足場を作ったり、一人が橋の上を支えてもう一人が渡ったりと、クリアには2人での協力プレイが不可欠です。しかし「プレイヤーが見ている世界はそれぞれ違う」という状況が、2人の前に立ちはだかります。

例えば、片方のプレイヤーから見ると普通の道なのに、もう片方のプレイヤーから見ると深い池で先に進めないといった具合に、認識のズレから予想外の出来事が起こってしまうのです。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

もう一人のプレイヤーが池を渡れるように足場を作る必要がありますが、筆者の視点では何の変哲もない普通の道です。どこに池があって、どこに足場を作ってあげればいいか分かりません。

そこで必要になるのが、お互いのコミュニケーションです。「ここが池になってる」「この先のブロックを足場にできそう」といった具合に、自分が見えているものをもう1人のプレイヤーと共有することが大事になります。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

他にも、自分にはジャンプ台に見えていても相手にはそう見えていなかったり、自分には便利な機械に見えていても相手には自分を襲う犬に見えたり、この認識のズレは常にプレイヤーの頭を悩ませるでしょう。

ゲームを進めていくと、片方のプレイヤーしか操作できない難解なギミックも登場します。絶えずコミュニケーションを取りながらクリアを目指しましょう。

異なる情報を持った状態で、2人で”1つ”の答えを決める。プレイヤーたちの価値観を問う重要な決断

ここまでは本作のパズル部分について触れてきましたが、2人の少年が体験する物語も本作の魅力の一つです。

ゲームを進めていくと、2人の少年が分かれて行動する場面がいくつか出てきます。この時、プレイヤーは自分が操作する少年の物語だけを見ることになります。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

それぞれの視点で別の物語が展開すると、再び少年たちが合流し、プレイヤーにとある「重大な決断」が迫られます。
この「重大な決断」の面白いところは、2人のプレイヤーが意見を合わせて必ずどちらかを選ばなければならない点です。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

自分は「A」を選びたい、でももう一人のプレイヤーは「B」を選びたい、という状況も出てくるでしょう。なぜなら、互いに見えている世界が違えば、互いに持っている情報も違うからです。
そしてこの選択肢は、正しい答えがないものばかりです。どちらが正解でどちらが不正解かという問題ではないのです。それでも両者で意見を合わせて、難しい判断をしなければなりません。

つまり、ここでも相方とのコミュニケーションが必要となるのです。自分の視点で見た物語を共有したり、自分の価値観や感じた事を話し合い、2人で納得できる選択肢を選びましょう。

あなたは誰とこのゲームを遊びたいか。2人で少年たちの旅の結末を見届けよう

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

パズルパートにおける認識のズレ、ストーリーパートにおける重大な決断からも分かる通り、本作は相方とのコミュニケーションが必要不可欠です。
それもただ会話するだけでなく、互いに寄り添いつつ、時に深く踏み込まなければ円満には進まないように設計されています。

【レビュー】同じ世界のはずなのに、見える景色は何もかも違う。2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲーム「違う冬のぼくら」

本作で得られる体験はプレイヤー同士のコミュニケーションが根幹にあり、遊ぶプレイヤーによって千差万別なものになるでしょう。だからこそ、本作は「誰と遊ぶか」が非常に重要になります。

自分が見ているものや気持ちを相手に伝えるのがいかに難しい事か、このゲームを通して痛感するでしょう。そして、言葉とはなんとも不自由で、それでいて頼りになるかも実感させてくれます。

親友、恋人、家族。もしくは、今は疎遠になった昔の友達。このゲームを誰と遊びたいかを考えるところから、「違う冬のぼくら」は始まっているのです。誰と遊ぶかが決まったら、ぜひ本作をプレイして唯一無二の体験を2人で共有してみてください。

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著者:ちゃんたく
eスポーツシーンを追い続けるゲームライターで、今は「ストリートファイター」界隈に夢中。生粋のラブライバーで、推しは星空凛、津島善子。
著者のTwitter著者のPIXIV