働きすぎに注意!?西部開拓時代のテーマパークを運営してお客さんをもてなそう!ゲームで海外ドラマ「ウエストワールド」の世界を追体験
著者:篭谷千穂
2週間前に海外ドラマ「ウォーキング・デッド」の公式スマホゲームをご紹介しましたが(こちら)、今回の海外ドラマの公式スマホゲームです。それはマイケル・クライトンの同名小説を原作とした同ドラマ「ウエストワールド」。
タイトル画面でプログラミングのコードが走っていますが、これはバグではなく演出です。アプリの不具合なのか一瞬分からないのが逆に面白いですが、これもちゃんと作品世界を反映した演出だったりします。
「ウエストワールド」とは、西部開拓時代の街をハイテク技術によって再現した体験型テーマパークを舞台としたSFスリラー作品です。1973年に一度映画化されましたが、2016年10月より米HBOにて連続ドラマシリーズとして放送されています(日本ではスターチャンネルにて放送)。
映画版とドラマ版の大きな違いは、映画版がB級娯楽作品だったのに対し、ドラマ版はテーマパークを訪れるお客さん(ゲスト)をもてなす「ホスト」と呼ばれるAI搭載のアンドロイドたちが、日々の接客を通して徐々に自我に目覚め、「自分たちと人間に一体なんの違いがあるのか?」と考え出すという、極めて実存主義的なテーマを扱った作品であることです。
ウエストワールドのゲストは高額な入場料を支払っており、またウエストワールド自体が「なんでもできる場所」という触れ込みなため、ゲストたちはアンドロイドたちに対し文字通り好き放題やりまくります。
アンドロイドたちは日々暴行されたり、時には殺されたりしますが、その度にメンテナンスされると同時に記憶を消去され、再び決められたシナリオに沿って生活を続けます。
それは倫理的に許されることなのか?ホストに無体を働くゲストとホストの一体どちらがより人間らしいと言えるのか?なんてことを視聴者に投げかける非常に”深い”ドラマなんですが…
このスマホゲーム版「ウエストワールド」は、見てのとおり深刻な作風ではなく、むしろカジュアルなかわいい作風の育成シミュレーションゲームです。
プレイヤーは、テーマパークを運営するデロス社の新入社員となってパークのシミュレーション研修を受け、ゲストそれぞれの個性に合ったホストをあてがい、その欲望を満たし、理想のパークを築くことを目指します。
こんな見た目ですが、ストーリーはドラマのクリエイターが手がけ、ゲーム内にはドラマでアンソニー・ホプキンスが演じたことでも話題になったフォード博士やバーナード、メイヴ、ドロレスといったお馴染みのキャラクターも登場します。
パークの構造ですが、地上にゲストをもてなすための施設があり、地下にその管理・運営のための会社の施設があるというもの。その双方を常にチェックしてパーク運営を回していきます。
ゲストは西部劇ごっこやギャンブルごっこ、恋愛ごっこをしたいといった微笑ましいものから、腕っぷしの強いホストと殴り合いをしたい、銀行強盗をしたいといった暴力的なことまで様々な欲望を持って来園します。ドラマには娼館も出てきますが、さすがにAppleの鉄壁の審査がそれを許さなかったのか、スマホゲーム版ではド直球にエロが描かれることはありません。
とりあえずホストの頭数を増やすためにガンガン製造したいところですが、ホストを作るには「ホストコード」というアイテムが必要で、ミッションをクリアしたりゲストをもてなして良い気分にさせたりしないと入手できません。
一番最初に作れるのは星1つのなんてことない地味なホスト。だいたい一体につき一つの役割しかできませんが、いずれ星2つ、3つとレア度が上がっていくと、一体につき様々なシナリオを演じられる有能なホストが出てきます。
基本的に星の数に関わらず、いつどんな種類のホストが作られるかはまったくのランダムで、出てくるまでは分かりません。つまりホスト製造は他のゲームの「ガチャ」に相当するんですね。
ホストを増やすのと同時にウエストワールドを構成するアトラクション(建物)も増やしていきます。ちなみにこの画面、一見2Dに見えますがちゃんとフル3Dでモデリングされています。
一番最初に来たゲストは「いかにもな西部時代のバーでギャンブルごっこ」をご所望のようです。まずは最初に作ったギャンブラーのホスト「カルメン」に接客させることにします。
星1つのカルメンは現時点ではギャンブルしかできません。ホストとゲストには「相性」があり、愛称の良い組み合わせでおもてなしするとゲストの満足祖が高まり、その分たくさんの報酬がもらえます。一方、うっかり愛称の悪い組み合わせでおもてなしすると、ゲストが怒って腹いせにホストを殺してしまうことも…。ただルーティンでゲストにホストをあてがうのではなく、ゲストの希望とタイプをしっかりチェックして接客するホストを選ばなければなりません。
次のゲストはいきなり「銀行強盗ごっこ」をご所望です。銀行強盗も古い西部劇では定番のモチーフですからね…。
ということで、先ほどのギャンブルごっこの報酬として入手した「ホストコード」を使って「銀行で襲われる」役回りのホストを製作し、銀行強盗ごっこを始めます。
ホスト製造→接客を繰り返しているうちに、複数の役割を演じられる高機能なホスト「テディ」をGET!
彼はドラマにも登場するメインキャラの一人なので知っている方もいるかもしれません。初期状態でなんとギャンブルごっこ、恋愛ごっこ、保安官ごっこの3種類に対応!こいつは頼もしい!
早速働き出すテディ。まずはギャンブルごっこをやって…
その傍ら銀行強盗をご所望のゲストも増えてきたので…
引き続き星一つの普通のホストも増やし…
ホストの頭数が増えると管理する手間も増えるので、会社の施設もどんどん増やしていきます。
ホストは殺されると機能停止状態になり、長時間働き過ぎでも不具合を起こして停止してしまいます。殺されるのはアクシデントなので仕方ありませんが、働き過ぎによる故障は日々のチェックである程度防げるので、小まめに「診断」を行いましょう。
ギャンブラーのカルメンが働き過ぎで壊れた!早く修理しないと!
こうしてプレイし続けていると、ふと「アンドロイドを働かせるのも人間を働かせるのも基本的には同じではないか?」という気になってきます。
個々のスキルや個性を把握し、誰がどのお客さんと相性が良いのか考え、働き過ぎていないか気を配り…これって接客業の管理職の仕事と同じですよね?では人間とアンドロイドの違いは一体何なのか?…と、図らずもオリジナルのドラマのテーマと同様のものをこのゲーム版も持っていることに気付かされます。
なお、ドラマ版「ウエストワールド」には、西部開拓時代のパークだけでなく、イギリス領インド帝国のパークや江戸時代の日本のパーク、さらには仮想空間まで登場します。ということはいずれこのゲーム版にもそれらが実装されるのでしょうか?そうなるとゲームのカオスっぷりにも拍車がかかり面白いことになりそうです。
あとこのゲームで一つ「いいな!」と思ったのは、LGBTQフレンドリーな描写です。
ゲストもホストも当然男女どちらもいるのですが、恋愛ごっこで男ゲスト×男ホスト、女ゲスト×女ホストが普通にイチャイチャするんですね。それについて特別「このゲームは人権に配慮したLGBTQフレンドリーなゲームなんですよ!」とアピールすることはないし、逆に同性同士のイチャイチャをネタや笑いとして消費することもなく、本当に普通に、ごく自然に描いているのです。
こういう仕様を見ると、欧州および北米のゲーム業界における現在の「普通」が分かります。早く日本のゲーム業界でもこれが普通になりますように。