動画リワード広告とカジュアルゲーム・おすすめの実装方法など『ゲームライターコミュニティ勉強会#16』レポート
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
SQOOLが後援する「ゲームライターコミュニティ勉強会 第16回」が、5月17日、「アプリゲームと動画リワード広告」をテーマに開催されました。
今回の勉強会では、フルスクリーン広告やネイティブ広告をはじめ動画アドネットワーク「maio」を手掛ける「株式会社アイモバイル」と、「ようとん場」などの人気アプリゲームを展開する「株式会社ジェーオーイー」から、それぞれ担当者様をお招きし、スマートフォンアプリの広告マネタイズの最新トレンドとその実例について講演していただきました。
動画リワード広告とは?
動画リワード広告とはどういうものかご存知ですか?
最近ゲームアプリ内で、動画を見るとアイテムがもらえる、というような広告を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
このスクリーンショットは人気のスマートフォンアプリゲーム「LINE怪盗にゃんこ」のものですが、動画リワード広告を見ることでゲーム内アイテムの「鍵」をもらうことができるようになっています。
このようなアプリゲーム内の動画リワード広告が最近急速に増えてきています。ではその動画リワード広告が増加しているのは何故でしょうか。ゲームファン、ゲーム開発者の双方にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では「ゲームライターコミュニティ勉強会 第16回」のレポートを通して、新しい広告フォーマット「動画リワード広告」について考えていきたいと思います。
アプリ内広告のトレンドの変遷
▲アイモバイルADNW事業部メディアグループの村田氏
まずアイモバイルの村田氏より、アプリ広告の変遷とカジュアルゲームの変遷について説明していただきました。
約3年前の2014年4月を例にとると、アプリ内の広告は「スマートフォンバナー広告」「インタースティシャル広告」「アイコン広告」「ウォール型広告」の4種類が定番でした。
▲今でもよく見る画面下部に表示される横長の「スマートフォンバナー広告」
▲四角い大型の広告を前面に出す「インタースティシャル広告」
▲アプリアイコンがそのまま出てくるような「アイコン広告」
▲リスト型で広告が表示される「ウォール型広告」
しかし2015年の5月、Apple社がiOSアプリへの「アイコン広告」「ウォール型広告」の掲載を禁止。業界全体を巻き込んだ大騒動になりました。もちろんアイモバイルも大きな影響を受け日々対応に追われたそうです。
▲当日司会進行を務めていただいたアイモバイルの早瀬氏
村田氏:アプリのデベロッパーさんから電話で「どうすればいいんですか」という問い合わせがたくさん来ました。毎日ミーティングしてましたね。相当きつかったですよね。
早瀬氏:いやこれ本当にきつくて。時差の関係もあり、いつ電話がかかってくるか予想ができなくて。。。
「アイコン広告」はAppStoreアイコンと区別がつきにくいこと、「ウォール型広告」はAppStoreのランキングページに似ていることが掲載禁止の理由だろうとアイモバイル社は判断、これを機に同社は「アイコン広告」「ウォール型広告」を廃止。
当時大きな売り上げを保っていた広告フォーマットから新しい広告フォーマットへの切り替えに着手していきました。
この流れはアイモバイルだけではなく、他のネットワークも同様。業界としての大きな動きとなりました。
その結果、約2年経った2017年現在は、アプリ内の画面デザインになじむ「ネイティヴ広告」や、インタースティシャル広告の進化版である「フルスクリーン広告」等がアプリ内広告のトレンドになってきました。
加えて今回の勉強会のテーマである動画リワード広告も急速に実装例が増加。動画リワード広告の収益がアプリ収益の4割~5割を占めることも多くなってきているそうです。
Appleの事件以外にもアプリゲームユーザーのニーズの変化も広告のあり方に影響を及ぼしました。
村田氏:昔と異なり今はユーザーが凝ったゲームを求めるというニーズの変化もあります。カジュアルゲームにも課金システムが導入されたり、より自然な広告としてネイティブや動画リワードが実装され、結果、1ダウンロードあたりの収益性が上がってきています。
今後も色々な広告フォーマットを提供して、デベロッパーさん、ユーザーさんにとって良いものを提供していければ、と村田氏は語ってくれました。
動画リワード広告とは?maioの動画リワード広告の特徴
▲アイモバイル maio事業部メディアグループの藤田氏
動画広告には様々な種類がありますが、ゲームアプリ内の動画リワード広告に関してはユーザーが動画を視聴するかどうかを選択できるのが1つの特徴。動画広告を見るという選択をしたユーザーに対してテレビCMと同じく約30秒の動画広告を流し、ゲーム内のライフやアイテムなどのインセンティブ(報酬)が付与されるのが一般的な形態です。
ゲーム内のインセンティブ(報酬)を与える動画広告のことを特に「動画リワード広告」と呼びます。
「アイコン広告」や「ウォール型広告」が無くなり、ゲームデベロッパーの収益源が不足していた時に出てきたのが、このような「動画リワード広告」、と藤田氏。
動画リワード広告は収益性が非常に高く、海外の例では「クロッシーロード」というアプリゲームが動画リワードだけで10億円以上を売り上げています。
海外から火がついた動画リワード広告ですが、その流れは確実に日本のアプリ市場にもやって来ています。
▲最近の日本のアプリの例/広告収益の内訳の例 赤い部分が動画リワード収益
maioの動画リワード広告の特徴
藤田氏:動画リワード広告は日本市場においても外資が先行していまして、maioのような日本の企業はかなり少ないのが現状です。
そのような状況の中、maioは日本のアドネットワークとして独自の収益システムを提供。
外資系をはじめ多くの動画リワード広告が「CPI※」等、深い収益発生ポイントを持つシステムになっているのに対し、
maioは「CPCV※」での収益発生になっているため、アプリデベロッパーにとっては収益発生ポイントが浅く、それ故に安定して高収益を保てる点に特徴がある、と藤田氏。
※CPIとは動画広告を見た後に実際に対象のアプリをインストールすると収益が発生するシステム
※CPCVとは動画広告を視聴完了した段階で収益が発生するシステム
実際に動画リワード広告はどれくらい儲かるのか!?
若干数字が小さくて見にくいと思いますが、詳細は是非maioさんにお問い合わせください!
カジュアルゲームの広告マネタイズノウハウ
▲ジェーオーイー 代表取締役 石川氏
最後に、実際にアプリゲームを開発し動画リワード広告をゲーム内に実装している、株式会社ジェーオーイーの石川氏に、アプリゲーム内広告のトレンドと設置のノウハウについて講演していただきました。
石川氏:まずパズドラの話をすると分かりやすいと思うんですけど、2013年7月のパズドラ以前、パズドラ後、でかなり変わりまして、パズドラ後はアプリゲームのクオリティが全体的にすごく上がりました。
多くのゲーム会社がアプリゲーム市場に参入するようになり、ユーザーも高いクオリティを求めるようになったことから、アプリゲームの開発負荷も大きくなった、と石川氏。
ただきちんと作り込めば長く遊んでもらえるようになり、またアプリ内広告のフォーマットの進化したことから、1ダウンロードあたりの収益性も高くなってきた、とのこと。
カジュアルゲームの広告収益の変遷
▲2013年リリースの「ようとん場」はバナー広告が売り上げの75%を占める
▲昨年2016年にリリースした「借金あるからギャンブルしてくる」は約4割が動画リワード/バナーはわずか8%
この資料を作るために収益を計算してみて、こんなに変わっていたことに改めて驚いた、と石川氏。
2013年の「ようとん場」が課金とバナー広告の2種類で占められているのに対し、2016年の「借金あるからギャンブルしてくる」は、「動画リワード」「全画面」「ネイティブ」という3つの新しい広告フォーマットが収益の8割以上を占めています。
動画リワードの効果的な実装のノウハウ
動画リワード広告はユーザーが自発的に見ないといけない為、収益化にはハードルがあります。
そこで必要なポイントは「必ずみてもらう導線を作ること」、と石川氏は語ります。
「借金あるからギャンブルしてくる」ではゲーム内のスロットを回す前に動画広告を見ることで「フィーバーモード」が発生、ゲーム内のお金をより多く稼げるようにすることで、動画広告が見られる確率は何と「ほぼ100%」とのこと。
動画リワード広告を見るとユーザーにメリットがある、という状態をうまく設置するとこで、収益の柱にすることができるのです。
その他の広告の実装ノウハウ
収益性と正しい広告の在り方
聴講者からは登壇者に対し、「アイコン広告」や「ウォール型広告」の例を踏まえて、アプリ内広告の健全性に関する質問が相次ぎました。
基本無料でアプリゲームを提供しているゲームデベロッパーにとっては、大多数を占める無課金ユーザーからも収益を得るために、ゲーム内への広告の設置はほとんど必須の収益手法といえます。
しかしそれが行き過ぎてしまい、「紛らわしいアイコン広告を配置し誤タップさせる」というようなアプリの品質そのものを低下させる手法が蔓延してしまうと、Appleのようなプラットフォーマーに設置を禁止されるという事態がまた発生しないとも限りません。
広告はどうしてもユーザーにとってはストレスになるものですが、例えばゲーム内アイテムがもらえる「動画リワード広告」は、ゲームデベロッパーにとっては収益性が高く、ユーザーにとってはゲームを有利に進められるという、双方にメリットのある1つの解になっていると感じます。
急速に進むアプリ内広告の進化は、ゲームデベロッパーはもちろん、ゲームユーザーにとっても影響が大きい関心事の1つ。
現在注目を集める動画リワード広告をはじめ、これからもより良い広告フォーマットの普及に期待したいですね。