「脱出ゲーム」のこれからはどうなる?デベロッパーのAppleの4.3リジェクトへの対応の現状について
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
今年の夏ごろから頻繁に聞くようになった「4.3リジェクト」。特に脱出ゲームアプリは4.3リジェクトの対象になることが多く、多くの脱出ゲームデベロッパーを悩ませています。
【参考】
iOS App Storeの4.3リジェクトとは?シリーズものゲームの続編はもう出せない!?脱出ゲームで相次ぐリジェクト
4.3リジェクトとは「App Store審査ガイドライン4条3項」に抵触してアプリのリリースをAppleに拒否されてしまうもので、平たく言うと
似たようなアプリを出さないでくださいね
ということ。
ストア内に似たようなアプリがあふれてしまうと、
「なんか同じようなアプリばっかりだな」
「もうダウンロードしたアプリしかないな」
ということになり、ストアの価値自体が落ちてしまう懸念があります。ストアを管理するAppleにしてみれば、その対策を行うのは当然といえます。
しかし脱出ゲームは、「謎を解いてどこかから脱出する」という基本的なゲーム性が根底にあるだけに、コンセプトやデザインがどうしても似てしまいがち。そのため似たよなアプリを乱造する意思がなくても、4.3リジェクトの対象になりやすいというのが現状です。
GooglePlayやウェブなど脱出ゲームの提供先はiOSアプリ以外にもあるとはいえ、脱出ゲーム市場の約半分を占めるiOSのAppStoreは脱出ゲームデベロッパーにとって非常に重要。そこでリリースできないかもしれないという事態は、事業の継続を考えると致命的な課題と思われます。
では実際に脱出ゲームデベロッパーは4.3リジェクトについてどう考えているか、脱出ゲームデベロッパーを対象にアンケートを実施しましたのでその結果をご紹介します。
※脱出ゲームデベロッパー8事業者様にご協力いただきました。ありがとうございました。
まず4.3リジェクトを受けたことがあるか否かという質問に対しては、8事業者中2事業者が「ある」と回答しました。
その2事業者のうち、4.3リジェクトを経て脱出ゲームをリリースできたのは1事業者でした。
つまり8事業者中1事業者は、4.3リジェクトにより脱出ゲームがリリースできなかったということになります。
サンプル数が十分に多くないこともあり、この数字が割合として大きいかどうかは考え方によるかもしれませんが、「場合によっては脱出ゲームをリリースできないかもしれない」というリスクは脱出ゲームデベロッパーに大きなショックを与えました。
「4.3リジェクトは今でも開発上の懸念点か」という質問に対しては8事業者のうち5事業者が「懸念点である」と回答。
また1事業者は今後iOSでは脱出ゲームアプリを開発しないと回答しており、iPhoneユーザーの脱出ゲームファンにとっては非常に残念な流れになっています。
脱出ゲームデベロッパーが実施している4.3リジェクトへの対策としては、
「キャラクターなどのデザイン変更」
「新たなボタンの設置などによりUIの変更」
など見た目の変更によるものが多く、デザイン以外のところでは1事業者が「コンテナアプリ化」を上げました。
※コンテナアプリとは、同種のアプリを1つにまとめたアプリのこと。脱出ゲームの場合は複数の脱出ゲームを内包したメニュー的なアプリを指す。
一方で半数の4事業者が「4.3リジェクトへの対策は特に行っていない」と回答するなど、4.3リジェクトへの不安を抱えつつも有効な対策を見いだせていない現状が伺えます。
脱出ゲームデベロッパーからはAppleに対して、
『ユーザーによりよいコンテンツを提供するため、といった子供だましの表向きの説明はいらないので、なぜそのような対応を行っているのか、誠実な説明を求めたい』
『同じアプリでもレビュアーによって審査通過の是非が変わってくるのは大きな混乱を生む』
という意見が出されました。
また、
『Apple社がストアの正常化を目指した4.3リジェクトを行うことについては賛成。質を問わず脱出ゲームがこれだけ溢れかえっている状態では、プラットフォーマーとし対策をせざるを得ないと思う』
など、Appleの姿勢に理解を示す意見も出されました。
4.3リジェクト問題とは別に、今年9月に実施されたiOS11のバージョンアップ以降
『"トレンド検索"に「脱出ゲーム」という単語をまだ見たことがない』
という意見もあり、AppStoreの仕様変更も脱出ゲームデベロッパーにとっては良くない影響を与えている可能性が伺えました。上記の意見を提出した事業者は「現段階では影響は限定的」としながらも、「今後少しずつ影響が拡大するかもしれない」と懸念を示しました。
ソーシャルゲームと同じようにスマートフォンの急速な普及に支えられて伸びてきたスマホアプリの脱出ゲームですが、ここにきてAppleの運用方針により大きなブレーキがかかったといえます。
脱出ゲームは多くの固定ファンをもつジャンルでありながら、開発事業者は中小が多いという特長があります。そのため資金的な面から大掛かりな運用の変更が難しいこともあり、現状への対応に苦慮する事業者が多く見受けられます。
さしあたってはデザイン変更などによる「見た目の変更」で急場をしのいでいる脱出ゲームデベロッパーが多いように見受けられますが、都度都度デザインを変える負荷や、その内にネタが切れてしまうこと等を考えると、対策としては限定的なものに思われます。
根本的な解決法の1つは、Appleも推奨している「コンテナアプリ化」です。しかし過去の実例があまりないために脱出ゲーム界隈にはまだそのノウハウが少なく、デベロッパーへの負担や、コンテナアプリの収益性などについてはこれから探っていく段階といえます。
1社が先んじて脱出ゲームのコンテナアプリ化を実行していますので、SQOOLではこのコンテナアプリの今後に注目したいと思います。
【参考】
【ゲーム開発者インタビュー】脱出ゲームのコンテナアプリ「Escape Rooms」をリリースしたナカユビ・コーポレーションの真意とは?
事業者サイドの問題とは別に、コンテナアプリのユーザーの使い勝手の良さも重要です。
今までは単体でダウンロードできて、終了したら削除してきた、ある意味手離れの良かった脱出ゲーム。ユーザーもそれに慣れていた方が多く、ストアに「今まで通り単体でダウンロードしたい」というコメントも見られます。
この辺りのユーザーに使ってもらえるコンテナアプリとは?という点は大きな課題といえます。
ストアの価値を高く保ちたいAppleと、それにより今までの運用を大きく変更せざるを得なくなった脱出ゲームデベロッパー。うまい落としどころがどこにあるのか、SQOOLでは引き続き脱出ゲームの4.3リジェクト問題とその解決策について調査していきたいと思います。
【参考】
4.3リジェクト対策を考える【脱出ゲーム開発者向け】コンテナアプリのメリットと、脱出ゲームの種類について
アンケートにご協力いただいた脱出ゲーム開発者様(順不同)
cat muzzle様
株式会社ナカユビ・コーポレーション様
Owl Soft様
シズ様
青井健三郎様
TRISTORE様
カラメルカラム様
スタジオわさび様
上記開発者様の脱出ゲーム
是非ダウンロードして遊んでみてください!
謎解きにゃんこシリーズ
Escape Rooms
iOS:https://goo.gl/pXRrfi
Android:https://goo.gl/a9nk3j
悪夢の国のアリス
脱出ゲーム 女湯からの脱出
メアリーの3D一本道RPG
Android:https://goo.gl/CV8qSc
脱出ゲーム Momiji Cafe
THE 残業 - 脱出ゲーム