ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

 コラム 
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 著者:シェループ 

「ロックマンゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション」
「ポケモン不思議のダンジョン 救助隊DX」
「ユグドラ・ユニオン」

最近発売されたこれらの新作タイトル。
全て元はゲームボーイアドバンスで発売されたタイトルだ。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

Nintendo SwitchとPC、PlayStaiton 4で発売された「One Step From Eden」も、ゲームボーイアドバンス時代に大ヒットした「ロックマンエグゼ」シリーズにインスパイアされたゲームシステムで注目を集めるなど、ゲームボーイアドバンスの名作はその後のゲームシーンに大きな影響を与えたと言える。

これら、復刻したゲームボーイアドバンスのタイトル達を見て思う。
今、ゲームボーイアドバンス時代のゲームたちが賑わい始めたのかもしれない、と。

前世代機の究極進化系として誕生した、略してGBAは、2001年3月21日に発売された、任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」の上位機種。厳密には1998年から2001年にかけ展開された「ゲームボーイカラー」の後継機である。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

その最大の特徴は、高い処理能力と豪華になったグラフィック表現だ。それまで白黒だったゲームボーイだったが、ゲームボーイカラーにてついにフルカラー化を実現した。ただ当時の液晶の同時発色数は、32000色中の最大56色。

それに対しGBAの同時発色数は32000色。単純計算で約570倍になり、CPUの処理速度も32ビットの4倍となって、より豪華なグラフィック表現が可能になった。また16ビットマシンであるスーパーファミコンのゲームがほぼそのまま遊べる性能ということもあり、スーパーファミコンで生まれたタイトルの移植も積極的に行われた。

もちろん新作も数多く発売されている。数ある新作の中でも特に有名なタイトルと言えばカプコンの「逆転裁判」だろう。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

その後このシリーズは絶大な人気を獲得することになるが、そのすべての始まりはゲームボーイアドバンスだった。以降、ニンテンドーDS、Wii、ニンテンドー3DS、さらにはスマートフォン・タブレット、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PCにまでシリーズがリリースされるに至っている。

カプコンからは他に「ロックマン」も「ロックマンゼロ」、「ロックマンエグゼ」の新シリーズを展開した。任天堂からもNINTENDO64で新作が作られなかった「ファイアーエムブレム」が、「封印の剣」を皮切りに新作を連続発売。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

また9年もシリーズ展開が止まっていた「メトロイド」も「メトロイドフュージョン」で再始動した。同じ探索型アクションの代名詞として名を馳せるKONAMIの「悪魔城ドラキュラ」も、GBA発売と同時に新作「Circle of the Moon」を発売し、続けて2本の新作が登場している。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

一風変わった新作も相次いだ。近年は「DEATH STRANDING」で注目を集めた小島秀夫監督の新作で、太陽光を充電して遊ぶアクションRPG「ボクらの太陽」。一つの家族の行く末を見守る「千年家族」。そして、可愛い見た目とは裏腹に硬派な作りをしたシミュレーションRPG「ユグドラ・ユニオン」。これらのタイトルのシステムは一言で説明が難しく「一風変わった」としか表現できないが、とにかくこのような尖ったタイトルが多くあった。他にも思わず興味を惹くタイトルが多く存在する。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

改めて振り返るだけでも、粒よりな時代だったことが浮かぶ。

しかし2004年12月「ニンテンドーDS」が発売され爆発的なヒットを記録し、ゲームボーイアドバンスは次第に現役コースから外れ、約5年ほどで引退に至った。

当初DSはゲームボーイアドバンス後継機という位置付けではなく、後継機は別に進めていると任天堂は強調していた。だが、結果的にDSが後継機の座につくことになる。ある意味、ゲームボーイアドバンスは時代の波に飲まれたゲーム機と言えるかもしれない。

節目を目前に流れが変わり始めた?

そんなゲームボーイアドバンス時代に生まれたタイトルの中で、他機種への移植を活発に展開していたのが人気シリーズの「逆転裁判」だ。先も触れたが逆転裁判はゲーム機に留まらず、携帯電話にスマートフォン・タブレットにもシリーズを移植。漫画、小説、舞台、映画、ついにはアニメにもなり、際立って目立っていた。

他のゲームボーイアドバンス生まれのゲームも後継機へ移植された例は少なくない。

昨今は元々のタイトルを現行機向けに作り直して移植、もしくはリメイク版を発売するケースが出始めている。「One Step From Eden」のような、オマージュを捧げた新作の出現もまた然りだ。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

何故ここに来てそんな兆候が出始めたのか。

考えられるのは、ゲームボーイアドバンスのタイトルを遊べる環境が実質的に無くなったことにあると思われる。

2020年現在もWiiUではバーチャルコンソールのサービスが継続中で、ゲームボーイアドバンスタイトルのダウンロード版を購入できる。だが、当のWiiU本体は2017年に生産を終了。ゲームボーイアドバンスのタイトルを遊ぶハードルは上がってしまっている。そういった情勢を踏まえ、移植や復刻が増え始めたというのが最も考え得る可能性だ。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

例えば「ロックマンゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション」のロックマンゼロ1~4、「ポケモン不思議のダンジョン 救助隊DX」の元である「赤の救助隊」は、今もWiiUバーチャルコンソールでオリジナル版が販売中ではあるが、Switchなど現行のゲーム機へのリリースは行われていない。唯一移植及びバージョン別で販売されたDSも今や過去のゲーム機だ。遊べる環境が消滅し、存在が忘れられる懸念から復刻を判断したとすれば、状況を見れば納得がいく。

ゲームボーイアドバンスの復刻が相次ぐ原因のもうひとつの可能性は、2021年にゲームボーイアドバンスが発売から20年の節目を迎えることだ。

今やゲームボーイアドバンスを知らない世代も少なくないだろう。同時にゲームボーイアドバンス時代に育った世代は成人して社会人になっている。中にはゲーム開発の道へ進んだ人もいることだろう。その中にはこんな思いを抱く人も少なくないと考えられる。

「あの時熱中したゲームの新作、続編を作りたい」

と。

そのゲームタイトルが今、シリーズ展開を止めてしまっているとなれば尚更だ。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

「One Step From Eden」の元に当たる「ロックマンエグゼ」はまさにその1本である。ロックマンエグゼはシリーズ第6作「ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ / 電脳獣ファルザー」を最後に完結してしまった。ストーリー的に、同じキャラクターたちによる続きは無理なほど、綺麗に終わってしまったのだ。

その残念な出来事に思いを募らせているファンは相当数に及ぶ。それは一時期、Twitterで流行った「#絶望的だけど続編を待っているゲーム」で堂々トレンド入りを果たしたことが如実に表している。

2019年当時25歳で、ロックマンエグゼシリーズの直撃世代に属する「One Step From Eden」の開発者Thomas Moon Kang氏も、そんな思いを抱いていたことを海外メディアのインタビューで公言している。結局、新作が出ないなら自分で作ってしまえと、同作で思いの丈をぶつけた格好である。

そんな世代がゲーム開発側に加わったことも、ゲームボーイアドバンスタイトルの新作リリース活発化に影響を及ぼしているのは間違いないだろう。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

WiiUのバーチャルコンソールで販売されていないタイトルも多数存在する。「ユグドラ・ユニオン」もそのひとつだ。そういった当時の世代しか知らないようなゲームにも再度チャンスを与えたい、遊べる環境を整えたいとの当時のファンの想いも今の状況に繋がっているのだろう。ユグドラの場合、ゲームボーイアドバンス版の2年後に発売されたPlayStation Portableのリメイク版があったが、それもPlayStation Portableと後継のPlayStation Vitaの生産終了で、遊ぶハードルが高まっているのも影響していると考えられるが。

これまでゲームボーイアドバンスタイトルの復刻といえば逆転裁判シリーズがその筆頭だったと言って良いと思う。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

しかし間もなく20年という大きな節目を迎える。

今後発売予定の新作にも、ゲームボーイアドバンスのシリーズ作を収録した「メダロット クラシックス プラス」が予定されており、この流れは大きなうねりになっていくと思われる。もしかしたら、WiiUバーチャルコンソールに代わる、オリジナル版を現行機で遊べる施策も発表されたりするかもしれない。

20年目を間近に控え、何かが起こる?

もしゲームボーイアドバンスタイトル再リリースのさらなる活発化が現実になったら、どんなタイトルが復刻して欲しいか?筆者個人の想いとしては、まず時代を象徴する人気タイトル、上に出したゲームは全て対象になって欲しいと思う。

個人的な願望を綴るなら、「ユグドラ・ユニオン」に象徴される一風変わったタイトルの復刻も進んでくれればと思う。繰り返しになるが、この時代にはそういったものが妙な存在感を出していた。任天堂とNHKのコラボ作品でもあった「どーもくんの不思議てれび」、衝撃のシナリオ構成が語り草になった「ASTRO BOY 鉄腕アトム アトムハートの秘密」、昆虫採集を題材としながら、やたら難易度が高い探索型アドベンチャーの「GET!ボクのムシつかまえて」など、異彩を放つタイトルがいくつもあったのだ。そういうゲームに何らかのチャンスを、と願ってやまない。どーもくん、アトムの2作は、版権の関係でそう簡単にはいかないのかもしれないが。ゲームボーイアドバンス時代のゲームに再興の兆し、その理由と今後への期待

「One Step From Eden」の発売で話題になっている今だからこそ、オリジナルたるロックマンエグゼも最優先でお願いしたいとも思う。同シリーズは間違いなくゲームボーイアドバンス時代を象徴する人気作だ。そしてロックマンシリーズ全体に新風を吹き込んだ傑作だ。いつまでもグッズ展開を中心にしている場合ではない。ロックマンエグゼシリーズ直撃世代がゲーム開発者になり、その影響を受けた新作を作ってしまう事態に至っているのだ。その原点に再度触れる機会をどうか作って欲しい。これまでの現行機で復刻したロックマン作品と違い、ロックマンエグゼは通信機能があり作りが複雑なため、移植するにも相当な労力が必要という懸念がある。が、なんとか遠くない未来に実現できればと願ってしまう。

思いは尽きないが、あと少しでゲームボーイアドバンス20周年。
今の緩やかな兆候が大きな波へと移り変わる瞬間を心待ちにしたい。

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著者:シェループ
新旧様々なゲームに手を伸ばしては、積みゲーを増やし続けるひよっこライター。アクションゲーム全般(特にロックマンシリーズとメトロイドシリーズ)と戦略シミュレーションが大好物。
Twitter:@shelloop