延期された台北ゲームショウ、開催されるはずだった会場に行ってみた
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
「こんな状況の中来てくださって感謝します」
「いろいろな海外の事業者と打ち合わせ予定でしたが、あなた以外は誰も来ません」
1月中旬から急速に拡大する中国武漢コロナウイルスの影響はゲーム業界でも深刻な問題になっている。
2月6日から開催予定だった台湾最大のゲームの展示会「台北ゲームショウ2020」の中止が発表されたのは1月31日(金)だった。春節の休み明け数日での決断は、この日を逃すと延期が難しくなるギリギリのタイミングだった。運営の苦悩は想像を絶するものだっただろう。筆者はその英断に拍手を送りたい。
中華圏が春節休暇に入る中、徐々に拡大するコロナウイルスのニュースを受け欧米圏のゲーム企業が相次いで台北ゲームショウへの参加を辞退、日本からも会社の指示で参加を取りやめる関係者が相次いでいた。
台湾全体をあげてコロナウイルスの封じ込めを行い、それがある程度有効に機能している中、世界的には大陸中国と同じように見られることへの苦悩が台湾にはある。それが冒頭の発言に繋がったのかもしれない。
台湾はSARSへの対応の遅れで84人もの死者を出し、世界で最後まで汚染地域に指定されていた苦い過去がある。だからこそ、今回のコロナウイルスへの対応は迅速で徹底的だ。台北市内ではマスクをしていない人は珍しい。
「最近は握手じゃなくてこうするんです」
と、手にかけられるのはアルコールスプレー。
台湾ではコロナウイルスの影響は5月から6月頃まで残るだろうと、かなり悲観的に予測している。だから台北ゲームショウ2020は、春ではなく夏に延期となった。
台北ゲームショウが来ると1年が始まるように感じる。毎年の慣例がこのような形で崩れてしまったのは筆者としてはとても残念だが、30万人が参加する台北ゲームショウはコロナウイルスへの対応を完全に行うのは難しい。これは仕方がないことだ。会いたいゲーム開発者がたくさんいたが、残念ながら叶わなかった。
台北ゲームショウの運営は不眠不休の対応中だろう。キャンセルした会場、入金済みの出展企業、呼ぶはずだった様々なゲスト、世界中のメディアパートナー、チケット購入済みのゲームファン。
台北ゲームショウの対応は本当に誠実だ。
史上はじめて夏に開催される台北ゲームショウを応援したい。
2019年1月の台北ゲームショウの様子