コロナはゲーム販売店にとどめを刺すのか?実店舗の価値とこれから
著者:シェループ
新型コロナウイルスの世界的蔓延。
そのような状況下において不要不急の外出自粛が声高に叫ばれている。
筆者も自宅にこもる日々が続いている。
もう、2ヶ月近く経つのだろうか。気が付けば、近所のスーパー、コンビニ以外へは全く足を運ばなくなり、行動範囲が大幅に狭まってしまった。
趣味に関する品、特にゲームの購入も新旧限らずネットの通販サイト購入で済ませている。元々新型コロナウイルスの流行前から実店舗で購入する機会は減少傾向にあった。昨年買った新作も多くは通販サイト経由。ただ、外出の用件と重なった日に発売された新作、旧作全般は実店舗で購入していたため、1本も実店舗で購入していない訳ではなかった。
だが2020年は実店舗で購入したものが(執筆時点で)1本も存在しない。
手元にある新作、旧作、全部がネット通販経由だ。
それも当然である。
実店舗でのゲームの購入は、不要不急の外出行為にあたるからだ。
このようにネット経由の購入が続く状況を見て思う。
今回の新型コロナ騒動は、実店舗のゲーム販売にトドメを刺すのでは。
実店舗で購入する層は稀少化するのではないのか、と。
苦境に立たされる店舗営業
ゲームに限らないが、店舗営業は新型コロナウイルス蔓延による甚大な影響が取り沙汰されている。特に飲食店はいわゆる3密の条件が揃いやすい。そのため、長期休業をする判断をしたり、テイクアウトサービスの開始などの方針転換を迫られている。今まで通り営業しても、外出自粛による客足減少が重くのしかかる。閉店に追い込まれた店舗も続出しており、先日は150年以上の歴史を持つ老舗の弁当屋の廃業が報じられ、注目を集めた。
参考:152年の歴史に幕 歌舞伎座前の弁当屋「木挽町辨松」が廃業へ : 東京商工リサーチ
ゲームが販売される家電量販店、玩具屋なども営業時間短縮や店舗休業が実施されている。客足も外出自粛の影響で著しく減り、閑散としている様子がニュース番組で映し出されている。
反面、ゲーム自体の売上は減少どころか、需要の高まりで勢いづいている。中でも3月21日、Nintendo Switchで発売された「あつまれ どうぶつの森」が日本国外を問わず、大ヒットを達成したのは記憶に新しい。他の新作、旧作も売上が極端に減少した様子はあまり見受けられず、安定した水準を保っている。
だが実店舗で購入されたゲームの本数は例年以上に低下している可能性が高い。
実際に博報堂生活総合研究所の「第1回 新型コロナウイルスに関する生活者調査」で、インターネット通販や出前を利用するようにしている人は38.9%、14.2%増加したことが報告されている。第2回の調査では59.5%、前回の20%以上である。そこにゲームが含まれているかまでは不明だが、利用している人が多いのは容易に想像できる。
ネット通販なら自宅にネットが開通していれば、その場で買える。不要不急の外出を防ぐ手としてこれ以上有用な選択肢はない。発売日当日にネットで購入した場合だと、宅配で家に届くまでの日数の関係で買えればその日に遊び始められる実店舗に軍配が上がるが、昨今は宅配の必要がないダウンロード版も存在する。
ダウンロード版なら自宅で買ってすぐゲームを始められる。データのインストールなどの待ち時間こそ生じるが、不要不急の外出をする必要はない。事前ダウンロードを済ませていれば、実店舗での購入以上に速やかに遊び始めることができる。
パッケージという目に見える物がない点に賛否が分かれるが、いち早く新作を遊びたい思いに応えてくれる選択肢としてダウンロード版は申し分ない。近年はパッケージ版とダウンロード版の同時販売も当たり前になった。どちらで買うかはプレイヤーの嗜好で簡単に、しかも自宅で決断できる時代になっているのだ。
このような購入の選択肢が増えたことで、実店舗でゲームを買う意義は大きく薄れ、新型コロナの件より前からゲーム店舗の衰退が叫ばれつつあった。それでも、実店舗での購入にこだわる人は少数ながらいたと思われ、衰退防止のため、店舗によっては独自の購入特典を用意する施策を打つことも行われていた。だが昨今はネット通販での予約でも特典が付くのが当たり前になり、独自性は薄れつつある。
そんな状況下に、この外出自粛を叫ぶ新型コロナの騒動である。
どう考えても、これは泣きっ面に蜂の一撃だ。
新型コロナが終息したとしても、回復する可能性は限りなく低いだろう。
なぜなら店舗に足を運ぶことは苦であるから。
人はそれよりも楽を望むのであるから。
ネットの有難味を感じやすい今
外出自粛の今は、その楽を最も痛感しやすい環境になっているようにも思う。
実際外に出なくてもゲームは買える。
ダウンロード版の選択肢を取れば、実店舗で買うよりも早くゲームを遊べるのだ。
さらに今回のように感染症が蔓延している情勢では、動かないことが自らの身を守り、人を救うことに繋がる。楽して世のためになるのである。その高い利便性を認識し、今後もそうしていきたいという人は少なくないだろう。
今は実店舗に足を運び、ゲームを買うことの無駄に気付きやすくなっている。店が自宅の近所にある場合だとそうとは言いがたくもあるが、大抵は距離があって、そこまでに体力を要する。自動車ならガソリンが消費される。そして何よりも時間が無駄になる。これが最も大きいだろう。
欲しいゲームの在庫の有無を確認するのに手間がかかるのも、実店舗購入における象徴的な苦だ。基本、電話して店員に確認してもらう。
そして、そのためだけに5分、長ければ10分もの時間を要することになる。さらに在庫があったとしても、商品を取り置きしてもらえない(※してもらえる事もある)。ゆえに店舗への移動中、別の人に買われてしまう懸念も残る。そんな悪い未来を想像しながら店に着き、在庫が無くなっていて徒労に終わった時の脱力感たるや…。筆舌に尽くしがたい。
それがネットなら確認は一瞬だし、注文してしまえばこっちのもの。もちろん、メーカーの在庫が品薄の場合など、注文したとしても買えない例もある。
だがやはり自宅で体力を使わずに済む、徒労を防げるのは大きい。
心底思う。なんと素晴らしい時代になったのだろう、と。
筆者も過去、欲しくてたまらない新作ゲームがあり、在庫があるのを確認して意気揚々と実店舗へ向かいながら、移動中に先行した誰かが買ってしまい、その後、複数の店舗を巡る大変な事態に陥ったことがあった。
在庫確認せずに向かいそんな事態に見舞われたこともある。あの時は結果的に丸1日かけ、親同伴で隣町から隣の県まで動き回ってしまった。たった1つの新作ゲームのためにである。それが今では最小限の行動で済ませられるのだ。
これを素晴らしい時代になったと言わずとして何と言おう。近年もその恩恵を噛みしめていたが、今は特にそれを感じ、終息後もこのままで行こうとの気持ちにさせている。楽に毒されてしまっているのである。
しかし、上手い話に裏あり。楽に毒せば相応の反動も返ってくる。
分かりやすいのは体重増加だ。外で歩く機会が減ってしまったがゆえ、運動の頻度が著しく下がってしまった。結果、そちらの衰えと体格アップに歯止めがかからない。
また、実店舗だからこその体験がある。
それは、今まで興味も示さなかったゲームとの出会いだ。
ふと興味を持ったゲームが名作だったりする”偶然の出会い”
ネットではどうしても購入目的のゲーム以外に目を向けにくい。そもそも、検索機能を使えば買いたい品が率先して現れるのだ。それ以外のものも関連商品の一部として出てくるが、そういう時は決まって目的の品に目が向いている。
反面、店舗だと目標のゲームの周りに別のゲームが並んでいることがあるため、それを機に知らなかったゲームに興味を抱く例がある。
店舗ではパッケージを直接手に取って裏面を確かめられ、どんなゲームなのかを手軽に知ることができるようになっている。一昔前ならガラスケースの中に保管・陳列されていることが多く、身体を曲げ、股から覗き込んだりしないとゲーム画面などを見れなかったりしたが(※経験者)、今はそんなこともない。簡単にゲームへと手を伸ばせるのだ。
いざ気になって買ってみたら、凄く面白いゲームだった。
そんな偶然の出会いが起きやすいのが実店舗購入で最も面白い所だ。
他にも「ワゴンセール」と称された、在庫処理の安価なゲームに出会えることも魅力だ。筆者もここで安くなったゲームを買うのを頻繁にやっていて、それを機に出会った隠れた名作が沢山ある。
外出自粛の風潮で、そんなセール漁りがやりたくてもできないのには、大きなフラストレーションを感じている。一応ネット上でもセール漁りはできなくはないのだが、ごく稀にその手のゲームを注文した際、状態の悪いものが送られてくる例があるので油断ならない。なるべく良い状態のものを買いたいと思う気持ちがあるので、可能な限り実物を見て判断したいのだ。
そのことを踏まえると、実店舗販売はまだ残り続けて欲しい思いはある。
それでも厳しさは増していく
だが情勢は一層厳しさを増していくだろう。終息までの時間が長引けば余計に。
ましてや、ネットを介した購入の楽を痛感しやすい情勢。
果たして新型コロナの終息後、この状況は如何なる結果をもたらすのか。
家電量販店でゲームの販売スペース縮小が進んだり、完全撤去が行われてしまうのか。もしくはギリギリ持ち応えるのか。
少なくとも大手の家電量販店は全滅こそ免れるだろうと思う。
だが只でさえネット通販の有難味が増している。
販売スペースの縮小などが推進されるようになるのでは、と考えてしまう。
厳しい状況に立たされているゲーム販売店には生き延びて欲しいと願う。
そしてまた安売りのゲームを探し出しては、新たな出会いを体験したい。
1日も早く、安心してそれが楽しめる世の中に戻るのを願って。
◇Fit Boxing(フィットボクシング):(C) Imagineer Co., Ltd.