ゲームの操作方法、成功と失敗の歴史、「変わった操作」のこれからはどうなる?
著者:シェループ
2020年7月3日に発売された「マーベルアイアンマンVR」は野心的な作品だ。
360度縦横無尽に動ける箱庭空間もさることながら、PlayStation Moveモーションコントローラ2本を用いた操作がとてもユニークだ。手の平を後ろに向け、その推進力で飛び回る紛うことなき「アイアンマンごっこ」を楽しむことができる。
他にも多くのアイアンマンの特徴、魅力を活かしたシステムがあり、アイアンマンをテーマにVRゲームを作り、特徴ある操作方法を採用した意味を突き付けてくる見事な仕上がりになっている。
筆者個人としては、特にMove2本を活用した操作に感銘を受けた。従来のコントローラでは味わえない動かす面白さがあったからだ。
すっかり定着したユニーク系の操作
思い返せば2004年のニンテンドーDS、2006年のWiiの大ヒット以降、現在のゲーム機のコントローラ及び本体には何らかの特殊な機能が備わるようになった。ジャイロセンサー、感圧&静電式のタッチスクリーン、タッチパッドなどなど。かつてはファミリーコンピュータにあったマイクも復活するに至っている。
特にニンテンドーDSとWiiの初期は、それらの機能を活用し新たな操作を実現したゲームが相次いで発売された。Wiiのヒットに触発される形で誕生したと思われるPlayStation 3用の新たなコントローラ「PlayStation Move モーションコントローラ」もまた、発売当時数多くの専用タイトルが登場した。以降のニンテンドー3DS、WiiU、PlayStation 4、PlayStation Vitaでもやはり、本体にもコントローラ側にも何かしらの機能が備わり、それを活かした操作を特色とするゲームが続出した。
そのような特殊な操作で遊ぶゲームの魅力は何か?
それは従来のコントローラでは決して味わえない「動かす面白さ」「手触り」だと筆者は考える。これまで困難だった題材のゲーム化実現もそのひとつだろう。
前述のアイアンマンVRは、まさにその象徴と言える。
過去に遡ってみれば、ニンテンドーDSでアトラスより発売された「カドゥケウス」シリーズも特徴的なタイトルだ。このゲームは外科手術を題材にしたアクションゲームで、メスを始めとする医療器具を用いて患者を蝕む病魔を倒すことに挑む内容だ。
ニンテンドーDSのタッチスクリーン、タッチペンがあってこそ実現し得たゲームで、特に海外で大好評を博し、シリーズ化を遂げた。
後にWiiのリモコン、ヌンチャクコントローラを用いた新作も発売されており、現時点での最新作、と言っても10年前のものなのだが、「HOSPITAL. 6人の医師」は、まさにその操作でできること全てを注ぎ込んだ野心作と言って良い。
特殊な操作のその他の魅力としては、高い快適性が上げられる。
一例を挙げると、PlayStation 4の標準コントローラ「DUAL SHOCK4」の「タッチパッド」を指定の方向になぞると、武器を瞬時に変えられるというもの。
ユービーアイソフトから発売された「ファークライ4」がこの操作を採用しており、装備中の銃火器を表示、選択するホイールメニュー画面を表示せず、武器を持ち替えられるようになっている。主に複数の敵を相手にする銃撃戦時には大変便利。メニューを表示するボタンを押さずとも切り替えられるため、非常に快適な作りになっている。
また、これと同様の操作で次の目的を瞬時に教えてくれる機能もある。
2020年7月17日に発売されて間もない「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」がこれを採用しており、なぞると同時に風が吹いてその流れる方向で教えてくれる個性溢れるものになっている。それなら常に目的地の方向にマーカーを表示したままが便利では、と物申したくなる点もあるが、画面内に表示される情報が少ないおかげで、舞台となる対馬の自然を思う存分に眺め、満喫することができる。「風が導くがまま進む」という独特で、世界観にもマッチした遊び心地を表現している点でも大変個性的だ。
そして、ジャイロセンサーによる直感的な照準操作の実現。
FPSやTPSなどのシューター系のゲームにおいてはプレイスタイルを激変させるほど影響のあるもので、特に任天堂の「スプラトゥーン」はその快適さを知らしめる立役者となった。現在では「フォートナイト」もNintendo Switch版がジャイロ操作をサポートしていて、他機種版とは異なる強みになっている。
このような「ユニーク系」とも言える操作方法は、今まで経験したことのない面白さを提供し、時に不便に感じていた問題を解消してくれる。十字キー、ボタンの枠組みの中で様々なゲームが作られてきた過去を思うと、現在は本当にバリエーション豊かな「動かし方」が追求され、実現するようになったと感じる次第だ。
ユニークだからこそ、使い方を誤れば怪我する
しかしその新しい操作方法の使い方を間違えたゲームも少なくない。
「従来のコントローラ操作の方が良い」「採用した意味がない」と断言できる例も目立つのが実情だ。
筆者もその種のゲームに何度か遭遇しては、「これ使う必要ある?」と物申したくなった事がある。新しい操作方法を採用したあまり、余計なストレスが生じてしまっているものへは殊更である。
思い起こされるのがPSVita初期に発売された「初音ミク -Project DIVA f-」。シリーズ第4作目である本作では、新たに「スクラッチ」なる星形のリズムノーツが追加されていた。PSVita本体のタッチスクリーン、背面タッチパッドをなぞるようにこすれば、まるでギターの弦を引くかのような手触りでリズムゲームを楽しめる……とのことだった。
だがボタン操作メインで遊ぶ内容との相性は悪く、こすったのにこすってないと判定される問題もあり、操作感は良いものではなかった。一応背面タッチパッドをこする操作に設定すれば安定し、売りにしている通り、ギターの弦を弾くかのような今までのシリーズにはなかった手触りを堪能できた。
しかし、パーフェクトクリアなどのやり込みをする際にはこの点が障害になるなど、やはり残念さは拭えなかった。普通にクリアするだけならまだしも、プレイヤーに余計な負担を与える操作方法になっていたため、新要素としての新しい操作方法は空回り感が否めないものになってしまっていた。
PSVita版の後PlayStation 3版が発売されたが、そちらでは件のスクラッチがスティックをはじく操作に変更された。続編「初音ミク -Project DIVA- F2」では、PSVita版にもそれがタッチスクリーンと選択可能になった。当然ながら、スティック操作時に誤判定はほぼ生じない。採用した意味のなさが証明される格好になった。
2010年にWiiで発売された「ドンキーコング リターンズ」も新しい操作が残念な例のひとつ。制作陣を一新した「スーパードンキーコング」シリーズ最新作で、Wiiリモコン、もしくはWiiリモコン+ヌンチャクのスタイルで遊ぶ操作方法を採用していた。
だが主人公ドンキーコングの主要アクションで、攻撃から移動まで多用される「ローリングアタック」が、Wiiリモコン、もしくはヌンチャクを振るというびっくりな仕様になってしまっていた。
旧シリーズではボタンだったのだが、なぜかユニーク系の操作にされていたのだ。その結果、使い勝手が旧シリーズよりも悪化。特に同じくリモコンとヌンチャクを振って行う「ハンドスラップ」を出すつもりが暴発し、場所が悪いと穴に落ちてミスを招くなど、あり得ない事態が起きるようになってしまった。
慣れれば自然に使えるようになるほか、ヌンチャクだと比較的スムーズに出せるという突破口もある。だが元々ボタン操作だったアクションをあえてこのような操作方法した意義は薄く、暴発の問題から、デメリットが勝るものになってしまっていた。同じ操作の「ハンドスラップ」は自然な操作感、むしろ楽しいものになっているだけに、殊更である。
案の定、次作「ドンキーコング トロピカルフリーズ」ではボタン操作へ回帰。これより前にニンテンドー3DSへ移植された「ドンキーコング リターンズ3D」でもボタン操作が採用され、使い勝手が改善している。
筆者個人の思いを書き殴れば、「ドンキーコング リターンズ」はシリーズきっての傑作との認識が今なお強いのだが、この点だけが心底残念で、プレイ当時は「ボタン操作なら……!」とのもどかしさが爆発しっぱなしだった。
最終的には慣れたが、受け入れたのかと言われば否だ。
これらの例以外にも、ボスにトドメを刺すたび、タッチペンで「魔封陣」と呼ばれる魔法陣を描くことを強いられる「悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架」、本体を縦に持って傾けてキャラクターを操縦する、不安定な操作を強制されるボス戦が用意された「マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー」などがある。
また、深刻なネタバレになるためタイトル名は伏せるが、マイクを通して歌うことを強制される3DSのゲームもあった。しかもこのゲームは基本、スライドパッドとボタンで操作するのだ。それが最後の最後に突然、歌えだ。おまけにボス戦なので、歌わなければ敗北確定。愕然としたのは言うまでもない。(ついでに筆者はカラオケが大の苦手である!)
このような操作を体験した時たるや、本当にため息しか出ない。同時に従来コントローラでの面白さ、快適性が確立されている既存のゲームジャンルに採用する危なさを考えさせられる。振り返ってみれば、どの例も既存のゲームジャンルだ。「ドンキーコング リターンズ」に至っては、元々ボタンだった操作をあえてそうしている。なぜ、ボタン操作での面白さ、安定性が実証されているゲームでそんなことをしてしまったのか。
背景には恐らく、件の機能をアピールしたい、使いたいという思いがあるのだろう。また、既に面白さが確立されているからこそ、新たな操作を用いて可能性を広げたい。今までにない動かす楽しさを示したい。その新しさを求める純粋な気持ちが採用に繋がったのかもしれない。しかし「ユニーク系」とも称せる操作。変わっているからこそ、使い方を間違えれば致命傷になるほどの怪我を招く。
一連の例はこれを実証していたとも言える。
もちろん、採用したおかげで独特な操作感が実現し、良くも悪くも印象に残るものになっている。しかし結局のところ、ゲームは面白い、楽しい、気持ちよく動かせる、ということが肝心要だろう。攻略ややり込みの足かせになったり、動かし方に負担をかける可能性が少しでも考えられるなら、採用しない方がよいのではないだろうか?
例に挙げたゲームはどうも新しさを優先しすぎたのではないのかと思う。結果、快適性がボタン操作に劣り、続編で撤廃させるに至っている。
まさに「それなら使わないで」の一言だ。
けど、適材適所な使い方は増えてきた
常々思うことだが、ユニーク系の操作は適材適所を考えていただきたい。その操作を使えば今までにない題材のゲームが作れるかどうか、従来型コントローラ以上の快適性と動かす楽しさが実現すると見込めるかどうか、ということだ。
「スプラトゥーン」のジャイロ操作はまさにその成功例と言って良いだろう。
この「スプラトゥーン」が示したジャイロ機能による射撃のコントロールは、既存ジャンルの可能性も広げている。
スティックによる微妙な調節が試される照準操作を、直感的に定められるようにしているのだ。その快適さたるや、想像するに難くない。慣れてしまえば従来型コントローラに戻れなくなるほどである。このような新しい可能性を打ち立て、面白く、楽しいものを実現してこそユニーク系操作は光る。
アイアンマンVR、カドゥケウスシリーズが象徴する、ユニークな操作があることによってゲーム化を実現できた例も象徴的だ。
DSで爆発的なヒットを飛ばした「脳を鍛える大人のDSトレーニング」もそのひとつ。直近ではNintendo Switch向けに新作が発売されているが、相変わらずこの操作方法以外に考えられない面白さがある。新たな「モーションIRカメラ」の使い方も全く違和感がなく、この操作方法と機能があることで実現した魅力に満ち溢れている。
今の時代、ゲームはコントローラに備わった十字キーとボタンだけで遊ぶものばかりではなくなっている。スマートフォンではタップとスワイプ操作が基本だし、VRゲームもアイアンマンに限らず、コントローラを直接振ったり、ここ最近では手で直接操作する「ハンドトラッキング」スタイルも出てきている。
もはや、切っても切れない存在として定着したと言ってもいい。
ユニークだけに、前述のような採用を誤ったり、固執する例も見受けられる。しかし、年月の経過と共に、段々とそのようなゲームは少なくなりつつあるように思われる。
一例としてNintendo SwitchはJoy-conなる斬新なコントローラが採用されているが、その機能にこだわらず、従来と同じ操作方法で遊ぶ選択肢が用意されたゲームは結構多い。Joy-con推奨ではあるが、PROコントローラでの操作でも遊べる「スーパーマリオオデッセイ」がそのひとつだ。「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ / Let's Go! イーブイ」のような、ユニークな操作方法で遊ぶゲームにも採用の意図、それによって実現する面白さが示されたものが目立っている。長年の経験の蓄積もあり、次第に「この操作はここで使えば光る」との指標が明確になってきたのかもしれない。
これから、この手のユニーク系操作はどんな形に落ち着くのか。仮に従来型の操作との共存する形でも、特化した形でも望むことはただひとつ、「ゲームを面白くするために使ってほしい」。苦しさを与えるような使い方は避け、適材適所を考えて欲しい。
https://www.youtube.com/watch?v=HVp-Y61185U
年末に発売予定のPlayStation 5でも、コントローラには様々な機能が備わることが判明している。また最初はそれらを活かしたゲームが続出するのだろうが、面白さ・楽しさ重視を大事にして欲しいと思う。
既にお披露目されている新作の数々には、その姿勢が露わになっているものも多いので、さらに理想的な形へ落ち着く未来の到来を心待ちにしている。
SQOOLのYouTubeチャンネル
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
© 2014 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Far Cry, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries. Based on Crytek’s original Far Cry directed by Cevat Yerli. Powered by Crytek’s technology “CryEngine.”
©2020 Sony Interactive Entertainment LLC.
©2017 Nintendo
© SEGA / © Crypton Future Media, Inc. www.piapro.net
©2014-2018 Nintendo
©Sony Interactive Entertainment Inc. ©2019 ForwardWorks Corporation.