今後はインディーゲームに力を入れる?2024年のChinaJoyと中国ゲーム市場について考える
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
今年も春になり、「ChinaJoy(チャイナジョイ)」からメディアパートナーの招待が届きました。
ChoinaJoyとは中国最大級のゲームの展示会で、毎年8月末頃に上海で開催されます。
私は毎年ChinaJoyに参加していますが、昨年は少し盛り上がりに欠けたかな?と考えています。
それは、コロナ禍の間リアルイベントが控えられたことにより世界的にリアルイベントが縮小傾向にあることも大きな原因の一つだと思いますが、ChinaJoyの場合、中国のゲーム市場の変化も原因として考えられます。
近年の中国のゲーム市場の拡大は目覚ましく、今や日本を超え、アメリカに次ぐ大きさになっています。ゲームの開発面でも原神に代表される大型で高品質なゲームが中国がから多くリリースされ世界中でファンを増やしています。中国ゲームは市場としても産業としても飛躍的に成長したのです。
ChinaJoyは中国ゲーム市場がまだまだ小さかった20年前から開催されており、その成長への貢献は大きく、むしろ牽引したと言っても良いでしょう。
しかし、市場が成長し成熟したことでその立ち位置は徐々に変化を求められつつあります。
例えば若いゲームファンにとっては、BiliBiliやTikTokが主催するイベントが人気で、相対的にChinaJoyへの興味は薄れてきています。
出展する方のゲーム業界側としても、今やイベントに出展しなくても、オンラインのプラットフォームを通して直接市場にアクセスできるようになりましたので、やはりChinaJoyの魅力は薄れてきたと言えます。
20年前と今とでは、市場の大きさも、情報の流通のあり方も、市場へのアクセスの仕方も、ゲーム産業にまつわるほぼ全てが大きく変化しました。
ほぼ全ての世界中の大型イベントがその変化にさらされる中、ChinaJoyも新たな在り方が求められています。
その中で、今年からChinaJoyはインディーゲームに力を入れるという情報があります。インディーゲームとは個人や小規模な事業者によって開発されたゲームのことで、確かにChinaJoyではあまり重視されていなかったように思います。
昨年のChinaJoyにもインディーゲームのコーナーがありましたが、なぜかBtoBの会場に設置されていたため、あまり人が集まっておらず、閑散としていたイメージがあります。
中国最大級のゲームの展示会であるChinaJoyは、その規模の大きさゆえにどうしても大企業向けのイベントになりがちで、中国の社会風土を考えても仕方がないのかな、と考えていましたが、今後そこに手を入れていくということになるのでしょうか。
中国にはWePlayという人気のインディーゲームイベントがありますが、ここ最近は商業的な要素が強くなり、以前のような闊達な場ではなくなってきているという評判を耳にしています。
ChinaJoyがインディーゲームに目を向けることで、自由な創作の場としての中国インディーゲーム界隈が再び盛り上がるかもしれません。
これは例えば日本に前例があり、東京ゲームショウには「Selected Indie 80」というインディーゲームが無料で出展できる先行枠がありますが、これがインディーゲムをある程度下支えしてきたと思いますが、ChinaJoyも同じような立ち位置を今後担うかもしれません。
中国はここ数年の景気の低迷と、政府によるインターネットコンテンツに対する規制により、大手企業もゲーム事業を縮小したり撤退したりということが相次いでいるようです。中小規模のゲームスタジオはかなりの数が廃業しており、その苦戦が伝えられます。
このような状況において中国ゲーム産業が活路を見出すのは日本を含む海外展開ですが、国際的なゲームイベントであるChinaJoyに求められる役割は小さくありません。
今までがそうで合ったように、今後もChinaJoyが中国市場と国際市場との重要なチャンネルであり続けるか、あるいはオンラインでの各プラットフォームが完全にその役割を代替するのか、はこの数年で決まるのではと思います。
ChinaJoyは筆者から見て、非常に真摯な姿勢で運営されており、日本の小さなメディアであるSQOOLに対しても丁寧に対応してくれています。個人的には今後も頑張って盛り上がっていってほしいと願っています。
10年後、ChinaJoyがどのようになっているかを楽しみに、今年の夏も上海を訪れたいと思います。