ゲームの面白さとは何かを分解して考えてみる
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
ゲームはなぜ面白いのでしょうか。
この分野についてはすでに様々な研究がされており論文なども出ていますが、この記事では学術的な側面ではなく、ゲーム開発者やプレイヤーにとってどういう解釈がわかりやすいか、という視点で少し書いてみたいと思います。
ルールと目的
まず最初に、ゲームにはルールがあって目的がある、という点について述べたいと思います。
これは一般的によく言われることで、ゲームにはルールという規制があり、その中で工夫して目的を達成することで、達成感を得られる、というものです。
これはデジタルゲーム、アナログゲームを問わずに言えることで、ゲームの仕組みそのものでもあります。ルールと目的がなければ、プレイヤーは何をして良いか分からずそもそもゲームとして成り立ちません。
デジタルゲームの開発においては、このルールと目的をいかに調整するかということは、面白さに関わる重要事項でもあります。
例えば、スーパーマリオのように左から右に進むアクションゲームの場合、「敵に横から触れてはいけない」「穴に落ちてはいけない」「プレイヤーはダッシュやジャンプができる」「ゴールを示す旗に触れれば目的達成」というような感じです。
RPGなどでも同様で、「敵を倒すと経験値とお金がもらえる」「経験値が貯まるとレベルが上がり強くなる」「お金を使って装備を買うことができる」「最後のボスを倒すと目的達成」という具合にルールや目的を定めます。
この例はかなり簡略化して書いていますので実際にはもっと精密なルールが必要です。開発者としてはそのルールがプレイヤーに明確に伝わるように工夫する必要があります。
ルールと目的を正しく設定することで、プレイヤーは目的に向かってルールの中で工夫をして攻略を試みることができるようになります。目的は1つのゲームの中でも細かく設定されている場合が多く、例えば、ステージが細かく区切られているとか、最終目標の手前までにたくさんのミッションがあるなどです。
小さな目標を定期的に達成する経験を得ることで、そのゲームを継続して遊ぶことが楽しくなるわけです。
価値の増大
もう1つ重要な要素として筆者は「価値の増大」があると考えています。
ゲームをプレイすることでゲームの中のなんらかの要素に対して価値が増大することで、その経験に楽しさを覚えるというものです。
具体的にいうと、例えばRPGで主人公のレベルが上がったりより強い武器を装備できたりすると、今まで倒せなかった敵が倒せるようになったり、遠くの街に行けるようになったりします。これは主人公の強さという価値がゲームをプレイする中で増大していることを意味します。
または街を作るシミュレーションゲームの場合、最初は小さな村だったのが街になり、そして都市になっていく、というようにその価値が増大していきます。
アクションゲームや格闘ゲームなどは、プレイすることによってプレイヤーのスキルが向上し、クリアできなかったステージがクリアできるようになったり、倒せなかった対戦相手に勝てたりします。
対戦、という意味では囲碁や将棋にも同じ面白さがあり、そのゲームを深く知り理解することで自分自身が強くなっていくという経験を得ることができます。
ゲームの中で価値が増大するというのは、現実での価値増大とも要素として似ていますが、ゲームでは現実よりもその価値壮大を比較的簡単に体験することができます。
徐々に強くなっていく、街が育っていく、お金が増えていく、できることが増えていく、などの経験を得ることで、楽しいと感じることができます。
この楽しさの体験は、擬似的な努力体験、成功体験ということもでき、うまく活用すれば現実世界でのモチベーションにもつながるのではないかと思います。
実際にシリアスゲームという枠組みでそのような取り組みがなされていますが、例えば学習に対する行動変容の促進にゲームを使おう、というような感じです。
ゲームの面白さには他にも色々な要素があり、例えば画像の綺麗さとか、エフェクトの気持ちよさ、操作感の良さな、ストーリー、なども関係してきますが、ゲームがなぜ面白いのか、をよく考えることは、より面白いゲームを作り出すことはもちろん、ゲーム以外への応用についても可能性を見出すことができるのではないでしょうか。