「Castlevania Advance Collection」発売で待ち望まれるDS三部作の復刻と、その課題となり得るもの
著者:シェループ
9月24日より、「Castlevania Advance Collection」が家庭用ゲーム機、PC向けに発売中だ。「Castlevania Advance Collection」は、2001年発売の携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」(GBA)向けに発売された「悪魔城ドラキュラ(キャッスルヴァニア)」シリーズ3作と、1990年発売の据え置き機「スーパーファミコン」向けに1995年に発売された「悪魔城ドラキュラXX(ダブルエックス)」の計4作を1本にまとめたコレクションタイトルである。
ゲームボーイアドバンス向けに発売された「悪魔城ドラキュラ」シリーズ3作は、PlayStation、セガサターンで発売された「悪魔城ドラキュラ 月下の夜想曲」の系譜に連なる探索主体のアクションゲーム。迷路のように広大な悪魔城内を探索し、アイテムを集めたり、敵と戦いながらストーリーを進めていくというものになっている。
もうひとつの「悪魔城ドラキュラXX」はステージクリア型のアクションゲーム。1993年に「PCエンジン SUPER CD-ROM」向けに発売された「悪魔城ドラキュラX 血の輪廻」のリメイクに当たる。
この4作は、中古市場に出回っている数が非常に少ない影響から価格が高騰していて、容易に手を伸ばせないゲームと化していた。いずれも後年、WiiUの「バーチャルコンソール」向けに復刻されたことはあったが、WiiUは既に生産終了。販売は2021年現在も継続中だが、年々その購入ハードルは上がり続けている状況にある。
そんな中に発売された「Castlevania Advance Collection」は、稀少品と化していた4作を現行のゲーム機で気軽に遊べるようにしたもので、高くて買えないことに悩んでいたシリーズファンからは大いに歓迎された。また同時に、本作の発売及び復刻をきっかけに”あること”への期待が高まりつつある。
それはニンテンドーDS向けに発売された「悪魔城ドラキュラ」3作、通称「DS三部作」とも言われるタイトルの現行機への復刻だ。DS三部作もまた、中古市場にて価格が高騰し、手を伸ばしにくいゲーム。それも現行機でも遊べるようになれば……ということで、期待の声が上がる状況になってきているのである。
だが、それは今回復活した4作よりも難航するのでは、と考える。理由は単純だ。いずれもニンテンドーDS(以下、DS)という、独特の性質を持つゲーム機向けに発売されたタイトルで、それに関連付いた要素を持つためだ。
DSならではの特徴と機能を持ち合わせた三部作
そもそも、DS三部作と称される「悪魔城ドラキュラ」とはどんな作品か。
基本の内容は前述のGBAのドラキュラシリーズと同じだ。迷路のように広大なマップを探索することに焦点を当てたアクションゲームになっている。その特徴などは作品ごとに異なるため、以下、個別に紹介する。
悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架(2005年発売)
「Castlevania Advance Collection」にも収録されている「Castlevania 暁月の円舞曲」(以下、暁月)の1年後を舞台にした直接の続編。
主人公は暁月に引き続き「来須蒼真(くるす そうま)」で、魔王再臨を目論むカルト教団の野望を阻止するために戦うというストーリーが描かれる。システム周りも暁月と同じ、敵の魂を集めて特殊な能力を獲得する「タクティカルソウルシステム」が引き続き採用されている。また、2画面構成が特徴のDSへの移行に伴い、上に舞台となるマップやステータスなどの情報を表示、下にメインのゲーム画面を置くスタイルを起用。他にボスへのトドメを刺す際、下画面のタッチスクリーン上に指定された通りに線を描いて印を作り上げる「魔封陣(まふうじん)」と呼ばれる新要素が追加されている。
悪魔城ドラキュラ ギャラリー・オブ・ラビリンス(2006年発売)
1994年にメガドライブで発売された「バンパイアキラー」の世界観を継承した新作。第二次世界大戦下のヨーロッパ地方に突如、蘇った悪魔城の謎を突き止めるため、教会から派遣されたヴァンパイアハンターのジョナサン・モリス、魔法使いの少女シャーロット・オーリンが戦うというストーリー。
その設定が物語る通りの2人の主人公を操作する作りが最大の特徴。状況に応じて2人を切り替え、探索や戦闘を繰り広げていく。2人を同時に登場させることも可能で、攻撃援護、仕掛けを動かすための静止を命じるといったことも可能。また「クエスト」なるサブイベントが新登場し、達成するたびに報酬としてアイテムなどを得られるようになっている。
悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印(2008年発売)
2021年現在、探索型のドラキュラシリーズの中では最後の作品とされているタイトル。魔王ドラキュラ伯爵を討伐してきた「ベルモンド一族」が消息を絶った19世紀初頭のトランシルバニア地方を舞台に、ドラキュラ対抗組織「エレクシア」に属する女性戦士「シャノア」の戦いを描くというストーリー。「グリフ」と呼ばれる武器、魔法などを発動させる特殊能力主体に戦うプレイスタイルが特徴。
従来にも増して戦闘に焦点を当てていて、難易度も高めに調整されている。また、ゲームの進行が全体マップ上からエリアを選んで探索を行う、ステージクリア型ドラキュラシリーズの要素を取り入れた構成に一新。その関係で本作では、前作「ギャラリー・オブ・ラビリンス」にも存在した悪魔城以外のエリアが多数登場する。
若干、省略した部分もあるが、以上が3部作それぞれの概略と特徴となる。
大よそ分かる通りだが、この3作はいずれもDSという、2つの画面とタッチスクリーンを備えたゲーム機の特徴を踏まえた作りをしている。1つの画面で完結していたGBA時代の3作とは毛色の異なる作品になっているのである。
とりわけその特徴が色濃くに表れているのが「蒼月の十字架」だ。2005年発売という時代背景が匂わす通り、この頃のDSでは2画面とタッチスクリーンを半ば無理矢理使うゲームが多く見られた。十字キーとボタンの操作で完結しそうなのに、どちらか片方をタッチスクリーンを触る操作に割りふったり、それらと並行して使わせるようにするといったものである。
「蒼月の十字架」は後者に該当するもので、前述に名を出した「魔封陣」と称された、ボス戦向けの新要素を使う際にタッチスクリーン上の操作を強制される。さらに追記すると、「蒼月の十字架」ではこの「魔封陣」を成功させなければ絶対にボスを倒すことができない。失敗すれば、0にしたはずのボスの体力が少し回復し、戦闘続行になってしまうのだ。
また、「魔封陣」以外にタッチスクリーン上の操作を要求されるものとして、「クリスタルブロック」なる障害物が存在する。画面を直接タッチしなければ壊せないというものだ。他にも探索や戦闘のお供になってくれるキャラクター「使い魔」にどの敵を攻撃したいか選ぶ際にもタッチスクリーン上の操作が必須で、そのたびに画面を直接触る必要が生じる。とは言え、「魔封陣」と「クリスタルブロック」に比べたらおまけ程度で、それほどゲームの攻略に影響するものにはなっていない。反面、「魔封陣」と「クリスタルブロック」は影響が大きく、ボタン操作で対処することは到底難しい作りだ。
こうしたDSの特徴に依存する要素が存在するため、特に「蒼月の十字架」については現行機への復刻が困難と考えられるのである。なお、後発2作にも同様にタッチスクリーンを使った要素は存在。「ギャラリー・オブ・ラビリンス」ではゲームクリア後に解禁される外伝ストーリー「シスターモード」がタッチ操作をほぼ強要するものになっている。「奪われた刻印」ではタッチ操作自体が完全におまけになり(※クリア後の「アルバスモード」に補助としてある程度)、基本はボタン操作だけで遊べる作りになっている。
そのため「奪われた刻印」の現行機復刻はできなくもないと言えるのだが、残る2作はその解決策を考える必要が生じてしまう。ゆえに復刻の難易度はGBA3作の比ではない。やるにしても困難を極めるのでは、と考えるのだ。
ただし、復刻自体が不可能、絶対に無理だとまでは思えないし、言い切れない。現にDSの特徴に依存する要素を持ったゲームの中には、解決策を施して現行機への復刻を実現させているものも少なからず存在するからだ。
幾つかの復刻作品が見せた解決策の数々
記憶に新しいものでは「ロックマンゼクス」がある。2006年、2007年にDSで2作展開されたロックマンの新シリーズで、こちらも2画面構成とタッチスクリーンを用いるシステムを実装した作りになっていた。
2020年発売の復刻タイトル「ロックマンゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション」では、一連の特徴を大きくアレンジ。
2画面構成は1画面内に収める専用レイアウトの設計によって対応し、タッチスクリーンの操作は右スティックによるカーソル操作で実施するものへと改めた。後者はオリジナルよりも瞬時に対応できなくなってしまったことによる煩わしさも生じているが、ゲームプレイに与える影響は少なく、そん色なく遊べる環境を実現させている。
2009年発売の「極限脱出 9時間9人9の扉」も実現例のひとつだ。
「極限脱出 9時間9人9の扉」は2012年にニコニコ動画にて、期間限定でWEBアプリ版がプレミアム会員を対象に無料公開されたほか、2013年には『9時間9人9の扉 Smart Sound Novel』なるiOSアプリ版、2017年には続編の『極限脱出ADV 善人シボウデス』も収録した「ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック」が発売されている。
それらの中で特に象徴的なものに当たるのは「ダブルパック」。この「ダブルパック」はPlayStation 4、PlayStation Vita、Windows PC(Steam)向けに発売され、それに伴って元々2画面の構成を前提に作られていた各種システムが全て1画面内に収めた作りに一新されている。これにより一部、ストーリー上の演出がオリジナル版と著しく変更。しかし、ゲームの進行における問題点は一切なく、さらにはフローチャートを始めとする便利な機能が追加されたことで、より遊びやすい作りに進歩している。
他にもだいぶマニアックなタイトルになるが、2009年発売の「ロックス・クエスト 新米アーキニアの100日戦争」も2017年にPlayStation 4、Xbox One、Windows PC向けに復刻(※PlayStation 4とXbox Oneは海外専売)。画面構成の刷新や操作スタイルの変更が実施されており、現行のゲーム機でも問題なく遊べる作りへと改めている。
こうした例があることから、悪魔城ドラキュラのDS三部作もまた、現行機への復刻自体は決して無理ではないと言い切れる。
実質ベタ移植そのものだが、WiiUで供給されたDSのバーチャルコンソールの例もある。
あとはどんな方向性で行くか、になる。「蒼月の十字架」のことを思えば、理想は「極限脱出 9時間9人9の扉」の方向性だろう。全ての要素を一画面内に収めてしまう。2画面構成については「ロックマンゼクス」の例もあるほか、2つの画面を見ながらプレイしないと成立しないような作りにはなっていないので、その方法で問題なく対処できると思われる。
しかも、そのような2画面の特性を1画面へと改め、現行機復刻を実現させたもので、ドラキュラシリーズのひとつ「キャッスルヴァニア ロードオブシャドウ 宿命の魔鏡」がある。なので、画面構成の対処については難航はしないだろう。
問題は「魔封陣」、「クリスタルブロック」、そして「ギャラリーオブラビリンス」の「シスターモード」だ。特にプレイヤーキャラクターの操作と並行する形の「クリスタルブロック」は、直接、攻撃で破壊可能な作りにするか、オリジナルの操作スタイルを踏まえて右スティック+何らかの未使用ボタンの操作で対処するかで分かれる。タッチスクリーンを無理矢理使う要素としての印象が強く残ったオリジナル版経験者の視点では、攻撃で直接破壊可能な作りにしてくれればと思う。しかし、本編にそうすると成立しなくなる場面が存在することから、後者の手段が取られる可能性は高いかもしれない。
「魔封陣」も右スティックを用いたものになるのだろう。
その場合、スティックのカーソルを自由に動かせるようにするか、あるいは任意の方向にスティックを倒し、話すと中央に焦点が戻る制限をかけるかで分かれる。理想としては、スティック操作に最適化された後者になるが、元々、オリジナル版の時点で不評だった要素だけに丸ごと削ってしまうのも選択肢としてあるかもしれない。
最終的にどちらが出てくるかは、実物を見てみないと分からないものの、こうして考えるだけでもそれなりに対応策は浮かんでくる。
あとはこの実質、新作を作るに等しい工程の数々を乗り越えるやる気が版権元、開発側にあるかだが、この辺は本当に要望の声がどれだけ集まるかに左右されるのだろう。
その意味でも、本作を復刻を望むなら今以上に大きくする必要があるのかもしれない。
あとは復刻を望む声が高まれば可能性が見える……?
かくいう筆者もDS三部作の復刻を望む人間のひとりだ。
一度、復刻した経緯のあるGBAのシリーズ3作と違い、DSの3作は最初の「蒼月の十字架」が発売されて以降、10年以上が経った今も実現に至っていない。それは前述の通り、DSという特殊なゲーム機で発売されたがゆえの復刻の難しさなどが影響し、今に至っているのかもしれない。しかし、「ロックマンゼクス」や「極限脱出 9時間9人9の扉」のような復活例が出ている中で、ドラキュラも一度、挑戦してみる意義はあると思える。
GBAの3作に比べたら復刻が遥かに手間なのは容易に想像が付く。画面構成を刷新させるのは不可避で、タッチ操作関連も新たな操作でゲームがちゃんと問題なく遊べるか、成立するかを検証する必要もある。ほとんど新作を作るのと同等な作業になるだけに、実現には時間が必要とされるかもしれない。3作共にボリュームも膨大なだけに尚更だ。
そのような心配ごともあれど、そう遠くない未来に現行機で問題なく遊べるDS三部作が出ることは願いたいところだ。
特に2021年現在、探索型のドラキュラシリーズ最後の作品である「奪われた刻印」は、旧来のステージクリア型ドラキュラシリーズの要素を絶妙に融合させた傑作に仕上がっている。未だドラキュラシリーズは昔ながらのステージクリア型が好き、との思いを抱く人にも受け入れやすい、秀逸な遊びやすさと抜群の手応えを両立しているのだ。他の2作も意欲的な試みが成されており、よく話題に上がるRTA動画でしか知らない人も実際に遊んで、その秘めたる魅力を確かめていただきたい傑作になっている。
復刻されない影響で、年単位で購入の難易度が上昇しつつあるDSのドラキュラ3作。課題は様々だが、GBAのシリーズ3作が成し遂げたように、手に取りやすいタイトルへと状況が一変する未来の到来に期待したい。