【黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ】第2回:飲んでも飲まれるな 黒川文雄的お酒との付き合い

 黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 
  公開日時 

著者:黒川文雄
SQOOL.NETの読者の皆様の中には、まだお酒を飲んだことがない方も多いと思いますし、お酒を嗜んでいる方もいらっしゃるでしょう。今回はその「お酒」について。
1990〜2000年代はゲーム業界でも派手な酒宴が多く催されていたそうです。元々あまりお酒が得意ではない黒川氏は色々と苦労もあった様子。
子を持つ親としての立場、また長い間若いゲームファンを見続けてきたゲーム業界人の立場で、黒川氏的お酒との付き合いについて語っていただきました。

人生を棒に振るようなコト ある芸能人の失態

【黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ】第2回:飲んでも飲まれるな 黒川文雄的お酒との付き合いご存じのことと思いますが、日本でアルコール類の飲酒が認められる年齢は満20歳以上です。(未成年者飲酒禁止法第1条第1項)

2月某日、著名な芸能人がお酒を飲んで、未成年者の高校生を自宅マンションに呼び出し、無理やりキスをしたとして、警視庁に強制わいせつ容疑で書類送検されました。(起訴猶予処分)

【黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ】第2回:飲んでも飲まれるな 黒川文雄的お酒との付き合い

被害に遭われた未成年の女性のことを思うと、私も子供を持つ親として居た堪れない気持ちになります。男女問わず弱者への配慮は、人としての常識と良識を問われるものだ・・・という気持ちを私たちは改めて持たなければいけません。

最終的にはこの芸能人は所属するグループのメンバーに辞表を託し、5月のゴールデンウィーク明けに契約解除となりました。この措置に至るまで約23年間、同じグループのメンバーとして活動してきた仲間にとっては忸怩たる想いを新たにしたことでしょうし、事務所としても長年かけて育ててきた才能やそれを活用した収益源を失うことは大きな痛手でしょう。

もちろん本人も10代の頃から「この道ひとすじ」だったことでしょうから、これからの人生設計などを考えなければなりません。

しかしすべては自身が招いたことで、誰を責められるものではありません。「酒を飲んでのうえ」とか「酒の席のこと…」では済まされないものがあるのです。

酒との出会いは浪人生時代の池袋

冒頭に記したように、日本で飲酒ができるのは「ハタチ」を過ぎてからです。タバコも同様です。このような嗜好品の類は、大人の分別をもって対応を処すべしということなのでしょう。

しかし成人の定義を「18歳に引き下げよう」という動きがあるなかで、「オトナの定義」自体もずいぶんと曖昧なものであることもよく考えなければいけません。

さて少し話が脱線をしましたが、私が初めてお酒を口にしたのは、高校を卒業した友人たちと池袋の某蔵元居酒屋池袋本店でした。

その日は高校の同級生が私を含めて6人ほどが集まり、お酒を飲んでみようということになりました。

当時私は池袋の予備校に通う「浪人生」で、条例にひっかかる年齢でしたが、「まあ、いいんじゃない」、「オトナの階段を登る儀式」程度に思っていました。もちろん飲酒自体はこの時が初めてでした。

飲んで思った「飲めないものは飲めないで良い」

友人たちの中には既に飲酒、喫煙を高校在学中から嗜んでいた者もおり、私を含めた4人が初めて飲酒を経験しました。

(編集部注:未成年者の飲酒喫煙は法律で禁止されています。本記事は著者のエピソードを紹介することを目的としており、未成年者の飲酒喫煙を推奨するものではありません)

「とりあえずビール」

しかし、生まれて初めて飲む「ビール」のなんと不味かったこと・・・実は今でもこの感覚は変わっていません。

「なんて味だっ!」「なんて不味いんだ」「なんて苦いんだ」

友人曰くは「これがいいじゃん」って言っていたのをよく覚えています。

ビールと喫煙のセットメニューのようなものにクラクラしました。私も友人たちの前で無理して粋がって飲んでみようと思ったのですが、ビールをコップ1杯飲めませんでした。

その後の記憶があまりはっきりしていないのですが、私の場合は、「赤くなって」「白くなって」「嘔吐して」「寝る」というのがアルコール類を飲んだ時のデフォルトです。これはその後40年間変わっていません。寝て起きた頃には「お勘定」の時間になっていました。この頃からアルコール類は自分にはあまり合わないと感じていました。

大学から社会人へ、そして徒労に終わった「飲む訓練」

大学では音楽系サークルに入部しました。もちろん「新人歓迎コンパ」なるもので、上級生が新入生をサカナにしてお酒を浴びるほど飲むイベントにも遭遇しました。

千葉の内房の旅館に一泊して飲みまくるというものでした。

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私もいわゆる「一気飲み」をさせられましたが、本当に気持ち悪くてビール1杯で酒宴の早々に沈没してしまい、同期の友人たちが洗面器などで一気飲みをしている姿を見て、クラクラとした意識の中でみんな凄いなあと思う反面、誰か死んだら困るなぁ・・・と思っていました。

むろん大学時代に飲む訓練にも励んでみたものの、それは一向に克服されるものではありませんでした。
それは社会に出てからも同じでした。

飲む機会は増えました。今のような下戸への理解なんて全くない時代ですから、中には、

「俺の酒が飲めんのか」
…飲めねえよバカヤロー、シネ!

「まあ、一杯くらいは」
…はぁ?お前の一杯が、他のやつの一杯にもつながるんだよ

「オトコだろ?」
…こんな場面で男女とか関係ねーだろう

このようなシーンにはたくさん遭遇しました。

大手のゲーム会社からの転職のオファーを、経営幹部の「酒の飲み方が嫌だから」という理由で断ったこともあります。

【黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ】第2回:飲んでも飲まれるな 黒川文雄的お酒との付き合い

1990〜2000年代のゲーム業界的飲み会

人生の中でゲーム関連の仕事がほぼ中心になってしまいましたが、私自身の感覚では、1990年代の中ごろから2000年ヒトケタ代までは、ゲーム業界でもハデな夜会と酒宴がずいぶんと開催されていました。

例えば90年代は、出版社が企画したゲーム攻略本や解説書がよく売れた時代でした。ヒットしたコンテンツの持った会社の宣伝担当者はそれ相応の接待にあったと思います。

また出版社や異業種とのコラボ共同展開も、そのような夜の席で決まったものが多くありました。中にはゲーム会社同士の大きな合併話や経営人事がそのような場で決まったこともあります。

2010年くらいからはIT系、スマホ系のコンテンツ・パブリッシャーなどが六本木や霞(かすみ)町、麻布十番あたりの会員制クラブなどでの豪遊ぶりをひけらかすような話も聞いたことがあります。

しかし、私はそのような会員制クラブで延々と朝まで「チッチがチ」とか「山手線ゲーム」を性懲りもなく続ける連中は嫌いでした。でもそうは言っても、飲まなくても朝までその酒宴に付き合うことも仕事だと割り切り、早朝5時の六本木でカラスがゴミ袋を啄むのを横目で見ながらタクシーを拾ったこともあります。
それはそれで楽しい思い出でしたし、飲めなくても「飲む場所」にいたことで知見が拡がり、人間関係が拡がったと思うことはあります。私の人的なつながりは基本的にはアルコール抜きの対人関係です。

酒が飲めないで良かった…と改めて思ったのは、私の場合はアルコールの分解酵素が体内には少ないため元々アルコール類を受け付けない体質だったことが後年に明らかになります。

無理して飲んでいたら、あの日、あの時に急性アル中で死んでいたかもしれません。

酒で本性が現れるのではなく、元々そういう人たちだと思えば良い

さて、ちょっと具体的にタメになる話をしましょう。今から4年ほど前のことです。

たまたまゲームの仕事の相談をしていた知人と深夜にメッセンジャーでやり取りをしていたときのことです。当初、思っていたことと違う方向に仕事が進んでいたので「改善をして欲しい」というメッセージのやり取りをしていたときのことでした。

途中からメッセージのトーンが変わってきました…

「なんで、そんなことを自分がやらなければいけないのか」
(私の心の声…だってキミに頼んだじゃん…)

「そもそもアナタ(黒川)ことは嫌いだった」
(私の心の声…早く言ってよ)

「一緒に働いていた時代から面倒くさいし、関わり合いたくなかった」
(私の心の声…よく今まで長い間黙っていたねぇ)

というメッセージが矢継ぎ早に着信しました。

すべてを悟り、「わかりました。もう結構です」という内容を送信して深夜のメッセンジャーを閉じて忘れようと思いました。まあ、他人に頼るとロクなことはないという良い事例として記憶に留めておこうと思いました。

すると翌日携帯に着信があり、応対をしてみるとその知人でした。

「すべてをお詫びします」という謝罪の連絡で、酒に酔った上での暴言で、申し訳ありませんでしたということでした。

ああ、そうだったんのか…お酒に酔っていたんだ・・・ということは理解しましたが、逆に深夜のそれがすべて本音だったということも私は理解しました。

まあ、私の若き日の不徳の致すところでしょう。彼にしてみれば、あの頃は言えなかったけど、酒を飲んだら今は言えるってことでしょう。

いつの時代も何か事件が起こると何かが悪者にされます。

一時は「ゲームが諸悪の根源」とか言う連中もいました。

包丁を使って人を殺傷しても、包丁自身が人を殺めることありません。銃砲も日本は法律で所有も禁止されていますが、銃が勝手に銃弾を発射し殺人を犯すようなマシンでもありませんよね。

すべては人が介在します。お酒は悪いものではありません。自身の責任の範疇において、他人に迷惑を掛けない程度に嗜むのは良いことだと思います。

お酒も迷惑していると思います。だって、何も悪いことしてないのに、いつだって「お酒の席のことで」とか「お酒の飲みすぎてしまって」という言い訳をする輩がいます。

でも、思うんです。

それってお酒じゃなくて、本人が正常時には抑えている本性みたいなものが、酒という潤滑油や精神を麻痺させるような刺激物や嗜好品が作用することで現れるのです。

お酒に飲まれるな…的な説教くさいことを言うつもりはありません。

僕が大好きな映画「バットマン・ビギンズ」のなかでブルース・ウェインはいいます。

"It's not who I am underneath, but what I do that defines me."

「人の心はわからない。でも、本性は行動に出る」

人の心を見透かす力は我々にはありません。すべては行動で示すということを、我々は今回の酒にまつわる騒動を見るたびに意識を新たにしなければならないと思いました。

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黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ

音楽、映画、ゲーム、エンタテインメントのグランドスラム達成者、株式会社ジェミニエンタテインメント代表取締役であり、黒川塾主宰・黒川文雄。人生の大半をエンタテインメントというカテゴリーにささげた男が送るエンタテインメントな人生訓。そして、そのフィルターを通して産業を俯瞰するエンタテインメント・コラム。あらゆるエンタテインメントを様々な角度から考察し、考えるヒント、生きるヒントをお届けします。
著者:黒川文雄
1960年・東京都出身
音楽や映画映像ビジネスの後に、セガ、コナミDE、ブシロード、NHNJapan(現在のNHNPlayart+LINE)などゲーム関連企業でゲームビジネスに携わるエンタメ界の「グラン ドスラム達成者」。
現在はジェミニエンタテインメント代表取締役と黒川メディアコンテンツ研究所・所長を務め、メディアアコンテンツ研究家としてジャーナリスティックな活動も、さらにエンタテインメント系勉強会の黒川塾を主宰。
プロデュース作品に「ANA747 FOREVER」「ATARI GAME OVER」(映像)「アルテイル」(オンラインゲーム),大手パブリッシャーとの協業コンテンツ等多数。オンラインサロン黒川塾も開設。